
インタビュー
[インタビュー]異界の京都,語りかける篭手,鬼の力の二刀流――完全新作「鬼武者 Way of the Sword」が示す“シリーズの新たな始まり”
本作は,実に約20年ぶりの完全新作となる「鬼武者」シリーズ最新作だ。「鬼の篭手」(おにのこて)に宿る超人的な力を操る侍「鬼武者」が,異形の存在「幻魔」(げんま)と戦う姿が描かれる。
今回の主人公は,古今東西の創作物で数多く描かれてきた宮本武蔵だ。そして最新のトレイラーでは,そのライバルとしてさまざまな創作物で描かれている,小次郎こと「佐々木巌流」が登場することが明かされている。
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同作は,SGFの翌日からロサンゼルスで開催された関係者向けイベント「Summer Game Fest 2025: Play Days」にて出展されていた。
現地でプロデューサーの門脇章人氏とディレクターの二瓶 賢氏へのインタビューを実施したので,シアター形式で公開された会場限定のゲームプレイムービーを視聴した感想と共にお届けしよう。
![]() 二瓶 賢氏 鬼武者 Way of the Swordディレクター 今回門脇氏と共にインタビューに応じてくれた |
![]() 門脇章人氏 鬼武者 Way of the Swordプロデューサー 今回二瓶氏と共にインタビューに応じてくれた |
![]() 柴田浩一氏 鬼武者 Way of the Swordプロデューサー シアタープレゼンを担当 |
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まずは会場限定のゲームプレイムービーから解説しよう。映し出されたのは,異界と化した京都。清水寺の周囲には禍々しい風景が広がり,幻魔たちが人々を無惨に殺害していく。そんな中,武蔵は幻魔を斬り伏せながら清水寺の本堂を目指す。
本作では,鬼武者シリーズ伝統のカウンターアクション「一閃」(いっせん)を含む,馴染みあるシステムが踏襲されている。しかし,主人公が武蔵である以上,ただの継承にはとどまらない。軽やかに舞い,ときに剛力を感じさせる動きは,“武蔵らしさ”がしっかりと表現されている。
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雑兵のような姿の幻魔「一ツ目笠」(ひとつめがさ)を相手に,正面から刀を振るい,背後の敵の攻撃には見事なタイミングでガードを決める。矢を剣で弾き返し,火の近くへ敵を誘い込んで燃やすなど,戦術の幅も広い。
畳を盾にして矢を受け止め,それを蹴り返す“畳返し”といった遊び心あるアクションも見どころだ。
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そして,やはり圧巻なのは「鬼の篭手」の力だ。発動時には二刀を構え,まさに“二天一流”ともいえる剣術で敵を圧倒するシーンも。禍々しくも美しいエフェクトが画面を彩る。
映像内では,剣戟以外の不思議な力も垣間見えた。過去の出来事が幻のように現れ,武蔵にはそれが見えるというものだ。
そうして見えた本堂での出来事には,清水の舞台から幻魔ではなく,人が人を突き落とす衝撃的なシーンが映し出されていた。いったいここでなにがあったのだろうか。
また,門に張られた結界を断ち切るため,その原因を“見抜く”力を発動する場面もあった。
気になるのが,鬼の篭手に宿る声だ。これはトレイラーでも描かれていた要素だが,どうやら鬼の篭手には女性が“居る”ようだ。物語上はもちろん,“旅の道連れ”としてゲームシステムのナビ的な役割も担うのかもしれない。
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鬼の篭手が吸収する前に幻魔の魂を奪ってしまう「首灯」(くびあかり),圧倒的な破壊力を持つ「百穢(びゃくえ)」といった,厄介な敵や大柄の強敵との戦いも確認できた。
そして映像のラストには,佐々木小次郎との対峙シーンが描かれていた。なぜ両者とも「鬼の篭手」を持っているのか。その謎にも期待が高まる。
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プロデューサー・門脇章人氏,ディレクター・二瓶 賢氏インタビュー
最後にプロデューサーの門脇章人氏とディレクターの二瓶 賢氏へのインタビューをお届けしよう。
4Gamer:
完全新作が作られるのは約20年ぶりですが,新作の構想はいつからあったのでしょうか。
二瓶 賢氏(以下,二瓶氏):
具体的に動きだしたのは2020年です。それ以前から,開発陣には鬼武者を作りたいという気持ちが強く,制作するうえでの前向きな考えはずっとありました。
4Gamer:
これまでのシリーズでは,戦国初期から本能寺の変,関ヶ原の前までが描かれてきました。本作は江戸初期が舞台ですが,過去作とのつながりはあるのでしょうか。
二瓶氏:
過去作とのつながりはありません。約20年ぶりの新作ということもあり,そのあいだにシリーズを知らない方も増えました。そういった方々にも楽しんでもらえるように,ゲームシステムや世界設定,登場人物や幻魔のあり方をいちから見直しました。
江戸初期が舞台になったのは時代の順番というより,表現したいキャラクターとして「宮本武蔵」がいたからです。
4Gamer:
なぜ宮本武蔵なのでしょうか。
二瓶氏:
新たな「鬼武者」を立ち上げるとき,“泥に塗れて,血に塗れて”という侍を描きたいと思いました。
そう考えたとき,実戦的な戦い方をするというイメージで武蔵が浮かびました。また,特定の勢力に属する武将ではないところも,新しい物語を描くうえで相性が良かったです。
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4Gamer:
三船敏郎さんをモデルにした理由を教えてください。黒澤作品などで世界的に名が知られていることもその理由にありますか。
二瓶氏:
時代劇のイメージで,荒々しく,泥臭さもあり,それでいて格好良い人物……そうしたキーワードから,最初に思い浮かんだのが三船さんでした。黒澤 明監督の作品に限らず,さまざまな映画で“侍像”を体現してきた方です。
もちろん,世界的に知られているという影響力もある方ですが,それが今回の選択の理由ではありません。まず大前提として,三船さんが持っている“空気感”があってこそです。結果的に,それが世界的にも名を知られている方だった,ということですね。
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門脇章人氏(以下,門脇氏):
宮本武蔵は,あらゆる作品で取り上げられている人物ですよね。だからこそ,ゲームの主人公として選んだからには,ほかとは違う強烈なキャラクターにしなければならない。そうしてキャラクター像を詰めていった結果,三船さんの顔は欠かせないものになりました。
4Gamer:
剣戟アクションが軽やかさもありながら,武蔵のイメージにある力強さも感じました。それを表現するうえで苦労した部分はありましたか。
二瓶氏:
アクションは“武蔵らしさ”を表現するうえでも大事な要素でした。文献や創作物でも,いろいろな兵法や戦い方を使っていたという話がある人物ですから。畳など周囲のものを使ったアクションも,その一環です。
一方で,鬼の篭手をつけているからこその超人的な強さや,人間離れした“鬼武者らしさ”の表現も合わせて考えていきました。
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4Gamer:
20年近くでゲームの表現も大きく進化しましたが,今回はおどろおどろしさや禍々しさ,妖怪っぽさが増している印象を受けました。これは意識的に変えたのでしょうか。
二瓶氏:
おっしゃる通り,単純に“かっこいい”だけではなく,おどろおどろしさや禍々しさを入れたいと考えていました。
印象に残る表現を目指して,“和”の要素はあらためて意識しています。PVにも登場した,一ツ目笠がかぶっている笠などは,和物としても象徴的なビジュアルですよね。
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4Gamer:
舞台が京都,そして清水寺というのも印象的でした。京都というと,やはり平安時代など古くから妖怪や怪異にまつわる伝承が多く残っている土地ですから。
二瓶氏:
京都の名所が物語の舞台になっていきますが,場所としての魅力だけでなく,いろいろな背景がある点も大事でした。
語られている逸話や実際の出来事を元にしたストーリーを盛り込んでいます。たとえば今回の映像にある清水の舞台のシーンも,清水寺の周囲の歴史的背景が鬼武者らしい物語を描くうえでのヒントとなっています。
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4Gamer:
かつての風葬の習慣や,「清水の舞台から飛び降りる」の由来みたいなのも連想できますね。
それでいうと,篭手が喋るシーンが気になりました。あの中に,お姫様のような存在が……というのが何かの御伽話のようで。
二瓶氏:
「鬼武者」の世界を再構築するうえで,「鬼の篭手」自体も新たな考えに基づいて作られています。あの女性が篭手の中に“居る”というのは,これまでにも見せてきましたが,どういう存在なのかはゲームでのお楽しみということで。
門脇氏:
女性の姿をよく見ると,「あれ?」と思うようなヒントもあるので,あらためてトレイラーを見返してもらえたら楽しめると思います。
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4Gamer:
そして,ついに佐々木小次郎が出てきました。あまり多くは語れないと思いますが,可能な範囲で小次郎について聞かせてください。
二瓶氏:
武蔵といえば小次郎ですし,最初から重要なキャラクターにするつもりでした。物語にも深く関わってきますし,さまざまな場面で登場します。
もう一人の“鬼の篭手”を持つ者でもありますが,トレイラーでも見ていただいた通り,狂気的な雰囲気があるキャラです。武蔵とは対極の存在ですね。これ以上は言えませんが,今後を楽しみにしていただければと(笑)。
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4Gamer:
小次郎,操作できたりしないのかな……とつい思ってしまいました。過去作では,主人公以外のキャラクターが操作できる場面もありましたが,今回はいかがでしょうか。
二瓶氏:
本作にもさまざまなキャラクターは登場しますが,キャラクターチェンジのような仕様は考えていません。基本的には「武蔵という一人の侍の物語」をじっくり味わってほしいと考えています。
門脇氏:
「鬼武者」の世界に合った独自の要素を加えつつ,史実に登場する人物をベースにキャラクターを作っている点はこれまでと同様です。そこに関わるオリジナルキャラクターが登場することもですね。ぜひ楽しみにしていてください。
4Gamer:
ここ数年で,国内外を問わず日本の史実をテーマにしたゲームや時代劇やチャンバラなゲーム増えています。そうした流れを意識されたことはありますか。
二瓶氏:
開発期間が長かったので,そのあいだにいろいろなゲームが登場しているのはもちろん知っています。ただ,何か特定の作品に影響されたということはありません。
最初から「こういうアクションを作りたい」というビジョンがあって,それを磨き続けてきた結果が今の形です。
たとえば,リアルな時代劇ものだとエフェクト表現が控えめな傾向もありますが,「鬼武者」はファンタジー要素も大事なので,技の見せ方などは独特のものにしていますし,今もブラッシュアップ中です。
4Gamer:
発表からここまでで,どのような反響がありましたか。
門脇氏:
いろいろな声をいただいています。厳しい意見も届いていて,それらは開発にとって良い刺激になっています。
昔からのファンからすると,20年ぶりということもあって「雰囲気が違うのでは?」という不安に思われているかと思います。具体的には「動きがもっさりしてるのでは?」とか,「いわゆる“死にゲー”なのでは?」といった声をいただいています。
ですが,シリーズの根幹はしっかり踏襲していますので,そこは安心してもらえればと思います。見た目は変わっていますが,その理由も技術の進歩によるものです。今後も情報を出して,理解していただけるようにしていきます。
4Gamer:
では最後に,読者へのメッセージをお願いします。
二瓶氏:
シリーズをずっと応援してくださった方々に新作を発表できたことを,とても嬉しく思っています。期待の声に応えられるよう,最新の技術で新しい「鬼武者」を作っていますので,ぜひ受け入れて楽しんでいただければと思います。
門脇氏:
久しぶりの情報公開でしたが,楽しんでいただけたら嬉しいです。これからも情報を出していきますので,今までのシリーズを知っている方にも,今回初めて知った方にも楽しんでもらえる作品にしたいと思っています。
4Gamer:
ありがとうございました。最後にもうひとつだけ。「鬼武者」は初代と2作目ののリマスターが出ていますが,本作に向けて履修しておくと良いのでしょうか。
二瓶氏:
“履修”というほどではないですが,鬼武者シリーズ自体が面白いゲームなので,これをきっかけに遊んでもらえたら嬉しいですね。
門脇氏:
シリーズ全体で盛り上がっていけたらと思っています。ちなみに,リマスター版を遊ばれた方の中には「今回の新作もカメラ固定なんじゃ?」と不安に感じている方もいるようですが,そこは安心してください(笑)。
「鬼武者 Way of the Sword」公式サイト
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