インタビュー
[インタビュー]「マビノギモバイル」が日本先行サービスされる,その真意――「どれだけ売れたか」ではなくて「どれだけ愛されたか」を最終的に重視する,ネクソンの長期戦略
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[インタビュー]制作中の新作はおよそ15本。「結局は,楽しいゲームを作って,それをちゃんと提供しなければなりません」―――ネクソンの新代表が語る,ネクソンというゲーム会社のありかた
韓国の大きいゲーム会社というのは,G-STARに持ち回りで出展しているように見えるのだが,今年の話題は,メインスポンサーのネクソンだ。そのネクソンの新社長(“新”といっても数か月前だが)がインタビューの時間をくれるというので,B2Bブースにお伺いしてきた。
昨年の30周年という節目に,既存フランチャイズの“縦”の深化と,新規タイトルなどによる“横”の拡張を打ち出したネクソンだが,その交点となるポイントに日本市場を置くのは,単に売上規模の話……だけではないだろう。
緻密なローカライズを重ねて運営していくことで,分かりやすい「初速の数字」よりも「継続する好意」を積み上げて,それが最終的にブランドの総価値を上げていく。単にお金があるだけではなくて,「時間」さえもある程度自由になるネクソンだからこそ出来る,日本戦略だ。
その象徴となるタイトルが,記事の見出しにもなった,日本先行・日本特化を視野に置いた「マビノギモバイル」(PC / iOS / Android)だ。
昨年聞かせてくれた,翻訳を超えたハイパーローカライズを始め,その国に最適化された運営カレンダーや,コミュニティの成熟度に合わせたイベント設計など,短期的なROIを見ていたら絶対に実行できない。
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この1年でローンチした新作群も,その存在感は大きい。
欧米を中心に初動が想定を超えた「The First Descendant」や,アラド戦記IPの解像度をさらに上げ,プレイヤー評価で支持を得た「The First Berserker: Khazan」は,どちらもチャレンジ要素の強いタイトルだが,だからといってネクソンの実験台というわけではない。
どちらにおいても言えるのは,初期リリースが完成ではなくて「関係の開始点」であることだ。パッケージゲームもオンラインゲームも,それぞれにおいて役割が与えられていて,そしてそれらの成否は単なる売上だけで語るものではないようだ。
結局のところ,メーカーの競争力の核心は“体力”だ。もちろん資本の体力という意味もあるが,どちらかというと「挑戦を続ける組織の体力」という意味合いが大きい。状況の変化の速度が増せば増すほど,その瞬間の完成度そのものよりも,「学習」自体が価値を生むわけで,ネクソンという会社はそれを推し進めている。
未完成で出して,反応を見て,フィードバックして,磨き続ける。数字の善し悪しに一喜一憂する短距離走ではなく,ブランドパワー増大という長距離マラソンを走る者の作法だ。
日本市場を重視するという宣言は,単なる既存の販路の拡張ではなく,日本のクリエイターと,IPと,そしてプレイヤーと,時間を共有するということだ。決して派手ではないそのアクションが語るのは,「どれだけ売れたか」ではなく「どれだけ愛されたか」なのだろう。
冷静に状況を見て判断するイ・ジョンホン氏の,1年ぶりのインタビューをお届けしよう。
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昨年に引き続きインタビューのお時間をいただき,ありがとうございます。しかも今回は日本で。
ネクソン代表取締役社長 イ・ジョンホン氏(Lee Junghun,以下Lee氏):
こちらこそ,再びインタビューの機会をいただきありがとうございます。
4Gamer:
昨年は,割とLeeさん本人や会社そのもののことを聞けたので,今回はちょっと社長相手っぽいインタビューにしようかなと思って来ました。
今回,ネクソンはG-STARに出展しないのでこういう機会を設けてくださったのかな,と思っているんですが,この1年を振り返ってみて,ネクソン全体をLeeさんはどのようにみてますか?
Lee氏:
前回のインタビューの時にもお話ししたと思いますが,ネクソンとして,グローバル戦略において日本がとても大事な拠点だと思っています。
私も最近,日本の市場にすごく集中しているところでして,今回のインタビューもG-STARへの出展がないから……というよりは,もっと日本でネクソンを積極的に知らせていきたいという気持ちから,こういう場を設けました。
4Gamer:
ということは,日本ではまだまだネクソンの知名度は伸びるはずだ,という?
Lee氏:
はい。それを目指してとても多くのリソースを投入しています。
4Gamer:
いやそうですかね……。
ネクソンジャパンは確か2000年の9月からですけど,4Gamerは2000年の8月なんですよね。だからおこがましいんですが,ほぼ同期みたいな感じで思っていてずっと見てきています。
ですので「ネクソンって業界でそんなに知られてないのかな?」という疑問があるんですけど,Leeさんはどのあたりでそれを感じるんでしょうか。
Lee氏:
そうですね,これは比較としての話だとは思いますが,韓国で「NEXON」というと,ほぼ全国民が知っているような企業になっていますが,それに比べたら日本ではまだ知名度が低いと考えています。
もちろん,いいゲームを作ってサービスしていくことは大事だと思いますが,これからは企業のブランディングといった面にも投資をしていきたいと思っているんです。
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4Gamer:
なるほど,韓国と比較したら確かにそうかもしれません。
Lee氏:
ですので今後ともよろしくお願いします(笑)
……といったところで,ご質問の昨年の振り返りですが,2025年の全般的な成果について触れる前にまず1つ,お話ししておきたいと思います。
4Gamer:
お願いします。
Lee氏:
まずネクソンは,日本のゲーム産業をとても尊重しています。日本のゲーム業界の関係者の方々や開発者,そしてプレイヤーの方々に,ネクソンのビジョンを拡大させていくということの大切さをとても深く認識しています。
日本市場での成長はまだポテンシャルがあり,機会を模索しているところでありまして,日本とのパートナーシップや投資についても関心を持っているということをまずお伝えしたいと思います。
4Gamer:
んん……投資というのは,文字どおりの意味であったり,M&Aまでも含む話なんでしょうか。昨年のときは最後にサラリと「協業したいです」みたいな感じで触れていただけなので,かなり具体的な明言だなと今思いました。
Lee氏:
はい。昨年も申し上げた協業だったり,コラボだったり,もしくは企業への投資だったり。または日本の開発チームと一緒に日本サービス向けのゲームを制作するであったり,そういうことまでも含めての包括的な面での投資となります。
4Gamer:
プロジェクトファイナンスみたいなやつでもOKということですね。かなり広範囲ですね。
Lee氏:
はい。広範囲でもあり,また長期的な計画を色々立てています。詳細はまた時間をかけて説明したいと思います。
それで去年1年間の振り返りという質問でしたが,ネクソンのグローバルIP成長戦略に関しては個人的に満足しています。ご存じだと思いますが,この戦略は注力フランチャイズの新規体験提供を通じての“縦の成長”と,新作からの“横の成長”をバランスよく組み立てています。
そして去年1年間,ハイパーローカライズやパートナーシップを通じてのグローバル市場拡大にも力を入れていました。
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4Gamer:
ええ。まさに1年前の有言実行だなと思ってみてました。
Lee氏:
ありがとうございます(笑)。
「メイプルストーリー」フランチャイズがとても大きな成長を成し遂げましたし,「アラド戦記」もかなりリカバリーできました。そして,「マビノギモバイル」や「The First Berserker: Khazan」,「MapleStory Worlds」など,グローバル市場におけるネクソンの認知度を高める新作のリリースもありました。
4Gamer:
そのあたりはあとでちょっといろいろ聞かせてください。
Lee氏:
はい。しかしお手柔らかにお願いします……。
そして,もうすぐですが10月30日にグローバルリリース予定の「ARC Raiders」(PC / PS5 / Xbox Series X|S)にも特に期待をかけています。このような全般的な状況を鑑みると,「よく頑張った」というのが正直な感想です。
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[プレイレポ]帰還できなければ戦利品は全ロスト!「ARC Raiders」は緊張感が絶妙なエクストラクションシューターだ
ネクソンが2025年のリリースを予定している,エクストラクションシューター「ARC Raiders」のメディア向けプレビューイベントが,4月23〜25日に開催された。緊張感のあるゲームシステムの詳しい内容や,本作ならではの魅力について紹介していこう。
社内的なKhazanの成功基準は「クオリティ」優先だったのです
4Gamer:
あのときちょっと話題にしましたが,Khazanとか,当時まだ出てなかった「The First Descendant」などの結果についても,おおむね満足している?
Lee氏:
そこはシンプルに答えると変に誤解されそうなので,キチンと説明させてください。
まずKhazanですが,成果には全般的に満足しています。アラド戦記フランチャイズをグローバルユーザーに披露する3つのゲームの中で,第一作目として良い出発点だったと評価しています。
4Gamer:
しかし決算説明の資料を見たところ「社内見通しを下回っている」という表現がありましたよね。
Lee氏:
そこはKPIの違いですね。
4Gamer:
決算説明に出るような「数字」は,本当の評価軸ではなかった?
Lee氏:
はい。社内的なKhazanの成功基準は「クオリティ」優先だったのです。
売上や大規模な新規ユーザーの獲得というよりは,プレイした時に,それが少数のユーザーからであっても「このゲーム,すごく出来がいい!」という評価を獲得するということを,一番のプライオリティにして制作しました。
4Gamer:
なるほど。であれば確かにユーザーからは「良い評価」だったように思います。
Lee氏:
ええ,おかげさまで。
前回もお話したかもしれませんが,アラド戦記はアジアでは結構知られているIPですが,欧米では認知がほとんどないに近かったわけです。それで,私たちは欧米のユーザーがKhazanに触れた時,出来がいいゲームで新鮮なIPという印象を与えられるように力を注ぎました。そのような評価を下してもらわないと,続く2タイトルへの期待感を持たせられないと思っていたのです。
4Gamer:
であれば,それは見事に達成されていたように思います。Steamでもメタスコアでも。
Lee氏:
そうなんです。Khazanは,PC基準でメタスコア83点,Steamでの評価が88%,OpenCriticでも90点という高いスコアを記録でき,クオリティ面ではいい評価をいただいたと思っています。
私たちは,2027年までにアラド戦記フランチャイズで「Project OVERKILL」と「Dungeon&Fighter: Arad」という2タイトルを順次グローバルリリースするプランがありますが,この2つのプロジェクトにもKhazanのクオリティがポジティブな影響を与えると思っていますので,Khazanに関しては本当に全般的に満足しています。
また,Tencentとのパートナーシップを通じて中国でのリリースも進めていまして,事前登録も開始しました。
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[プレイレポ]「The First Berserker: Khazan」は手応えのあるボス戦と遊びやすさを両立。強大な敵に立ち向かうのが,楽しいアクションRPGだ
ネクソンが2025年3月28日の発売を予定している「The First Berserker: Khazan」のプレイレポートをお届けする。復讐に燃える男が血みどろになって戦うダークな物語が展開する本作は,激しいアクションとボス戦の試行錯誤が本当に楽しい。
4Gamer:
決算説明会の資料ですので,あれは「数字ベースの話」であって,実際の成果とクオリティにはとても満足している……ということですね。
Lee氏:
おっしゃる通りです。
4Gamer:
あの資料だけを見て書いたのか,割とネガティブな報道もいくつかあったようなんですけれども,おっしゃったように海外での評価も高く,レビューの点数も大変いいですもんね。
では,前回確かおっしゃっていた“戦略的布石タイトル”という意味での役割は十分に果たした雰囲気ですね。
Lee氏:
私はそう判断しています。そして,販売本数だったりユーザー数であったりという「決算説明会的な数字」に関しては,中国での発売も控えているところでありますし,来年にはDLCの発売も予定しています。
ですので好転するでしょうし,今後も継続的にライブサービスをしていく予定なので,そこまで焦らなくてもいいんじゃないかなという考えでもあります。
4Gamer:
ではちょっと質問を変えて,Khazanにおいて期待通りに伸びなかった地域はどこかあります? または逆でもいいですよ。期待よりはるかに伸びたな,とか。
Lee氏:
地域という話ではないんですが,「評判」ですね。
4Gamer:
予想外だったということですか?
Lee氏:
口コミがやっぱりこう……発売前に予想していたより評価が高かったんです。
そもそもパッケージゲームをリリースした経験がないチームなので,制作しながらも結構ハラハラしていたみたいですが,プレイしてくださったユーザーの評価が,期待以上に高かったですね。
4Gamer:
そこまでだとは思っていなかったということですね(笑)。
しかしそれであれば,おっしゃるように今のところは売上高とかではなく,アラド戦記のIPを広げるという方向でKPIのようなものが作られていると思うんですが,ではKhazanという「パッケージタイトル」だからこそあえて聞くのですが,Khazanの5年後,10年後を考えた時に,ネクソンの中で,もしくはアラド戦記というIP全体の中で,どういう存在であってほしいとお考えですか。
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「アラド戦記」が今の時代に合ったリッチな3D横スクロールアクションに! 「Project OVERKILL」が初プレイアブル出展[G-STAR 2024]
韓国で2024年11月14日から17日まで開催されているG-STAR 2024にて,Nexonは新作「Project OVERKILL」をプレイアブル出展している。「アラド戦記」IPをベースにした新たな3DアクションRPGは,「今の時代に合わせたリッチなアラド」という印象で,より多くのプレイヤーに届けようとしているようだ。
Lee氏:
とても難しい質問ですね。
うーん……Khazanを手がけていたNEOPLEというところは,ご存じのように元々オンラインゲームを専門としてやっていたスタジオじゃないですか。そこがアラド戦記というIPを,戦略的により広く知らせるために,リーズナブルな価格のパッケージゲームとしてアプローチしたほうが,今後新しいオンラインゲームを発売する時などを考えても,長期的に戦略的な足掛かりになるんじゃないかという判断があったわけです。
そういう戦略で,パッケージゲームを作ったことのなかったチームが初めて挑戦したんです。
4Gamer:
それは,なかなかの大仕事です。
Lee氏:
そうです。
しかしおかげで,今まではいつものオンラインゲームやプラットフォームに囲まれていましたが,今回はパッケージゲームの開発と欧米市場での戦略的な発売という貴重な“経験”を獲得しました。
この経験はチームにとって大きな資産になったし,それはもちろん会社にとっても大きな資産ですし,長期的に見れば,この開発チームが選べる選択肢の幅が広がったと思います。
4Gamer:
研修とかでどうにかなるレベルの話じゃないですから,貴重ですよね。
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RPGに例えるなら「転職」した感じですかね(笑)。
それがすごく大事だと思っていますし,これから5年後,10年後もKhazanをサービスするか,Khazanの2,3を続けて作るかはまだ分かりませんが,チームの経験値が上がったことに重点を置いています。
言い方を変えると,アラド戦記フランチャイズの中でのKhazanの位置付けよりは,開発チームの成長に焦点を当てている,と言えばよいでしょうか。
4Gamer:
なるほど。去年も話した記憶がありますが,韓国はパッケージゲームを作った経験がほぼないわけで,オンラインゲームとパッケージゲームは想像以上に作り方が違うじゃないですか。
なので,最初すごく戸惑ったと思うんですが,作ってる途中で大きな壁とかあったりしたんでしょうか。
Lee氏:
こういう言い方はもしかしたら誤解を招いてしまうかもしれませんけど,オンラインゲームは,ライブサービスをしていく中で,メンテナンスがしやすいという面があります。
ある意味,未完成のプロトタイプをまず市場に投げ込んで,ユーザーの皆さんの反応を見ながらメンテナンスをしていくことで,どんどんゲームを仕上げていくことが出来るというわけです。
4Gamer:
そうですね。昔からそこはある種オンラインゲームのメリットだと思います。
Lee氏:
一方でパッケージゲームを作っていく過程を見てみると,まずビルドを確定させないとなりません。確定したらしたで「本当にこれぐらいの完成度でいいのか?」という疑問が次々と生まれてきます。
完全無欠レベルの完成度でリリースしなくては……という強迫観念のようなものが,オンラインゲーム開発の時よりずっと強かったと思います。
4Gamer:
あとプレイヤーとして見ると,パッケージゲームはストーリーがちゃんと完結するんですよね。でもこれ,慣れてないと開発はたぶん結構戸惑う気がします。
Lee氏:
はい。おっしゃるようにそこでもすごく戸惑って,色々難航していました。
でも逆に言うと,そういう面においても,開発チームはすごくいい経験になったと思いますよ。
4Gamer:
確かに韓国でそのタイプのゲームを作れるチームはそんなにまだ多くないはずで,ネクソンの強みになりえますね。
The First Descendantがグローバルレベルで爆発的にヒットしたのは,本当に予想外のものでした
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では「The First Descendant」はどうですか? パクさん(注:開発元であるNexon GamesのCEO)は,ローンチ前ずっと胃が痛い胃が痛いと言ってましたよ。
Lee氏:
The First Descendantは,ローンチ直後にすごく良かったんですよね。
4Gamer:
あれはすごかったですね。確か,初動26万人でしたっけ。
「The First Descendant」,7月2日の配信から24時間でSteam売上ランキングで1位,最もプレイされたゲームで5位にランクイン
ネクソンは本日,STG「The First Descendant」について,2024年7月2日の配信から24時間でSteam売上ランキングで1位,最もプレイされたゲームで5位にランクインしたと発表した。なお,コンソール機版のプレイ率は全体の50%を占めており,各プラットフォームで世界中のプレイヤーが遊んでいるという。
Lee氏:
そうですね。欧米でもご好評をいただけまして,Steamでもプレイされたトップゲームの5位に入りました。特にコンソールからのユーザーが思ったより多くなってまして,全体ユーザーの中で6割ぐらいがコンソールでプレイされていました。
4Gamer:
あぁ6割もいたんですね。確かにそれは結構多い気がします。
Lee氏:
正直なところ,The First Descendantがグローバルレベルで爆発的にヒットしたのは,本当に予想外のものでした。
4Gamer:
え,また予想外ですか(笑)。
Lee氏:
いやなんと言いますか,今改めて振り返ってみると,中規模の開発チームだったんです。ですので「中規模の結果」を想定していたわけです。なので,このサイズの開発チームでは耐えきれないほどのホットな反応だったと思いますね。
それで結果として,ユーザーが初期コンテンツを予想を上回るスピードで遊んで,そこで空白期間が発生してしまう,初期のリテンションにちょっとネガティブな影響を与えたんだと思っています。
4Gamer:
なるほど。言い方がちょっと難しいですが,良い意味で「こんなはずではなかった」という感じなんですね。
Lee氏:
ですのでリリース直後から,ずっとThe First Descendant専任スタッフを増員しているところです。それでシーズンのアップデートの規模を,初期段階で計画した内容より倍増以上にして投資し続けています。
4Gamer:
1度辞めてしまったゲームに戻ってくるものですか? まぁ自分の体験で言ってるだけなんですが。
Lee氏:
ルーターシュータージャンルの興味深いところは,アップデートがあったら,里帰りする鮭みたいに戻ってくる傾向があるんです。
リリース当初の爆発的な反応で多くのユーザーを獲得しているので,シーズンのアップデートを念入りにすれば,離れていたユーザーがまた戻ってきて遊んでくれるのではないかと思って,長期的な投資を色々とやっているところです。
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「The First Descendant」,新規・復帰プレイヤーがすぐに既存プレイヤーとプレイできる。「ブーストアップイベント」を開催中
NEXONとNEXON Gamesは,オンラインTPS「The First Descendant」で,新規・復帰プレイヤー向けの「ブーストアップイベント」を開催中だ。序盤のストーリーをスキップして,すぐに本編を始められるほか,継承者バニーやアルティメット武器,アイテムを獲得できる。
4Gamer:
そういうジャンル特性があるんですね。
Lee氏:
ええ。そういう意味もあって,今回の東京ゲームショウにThe First Descendantを出展しましたし,長期的かつ継続的に良いクオリティのアップデートを行い,ライブサービスを維持していこうと思います。
4Gamer:
ちなみに先ほど「中規模ぐらいの開発チーム」っておっしゃってましたけど,これ興味本位なんですけど,ネクソンの中での“中規模”って何人ぐらいなんですか。
Lee氏:
100人から200人ぐらいですかね。
4Gamer:
なんとなくイメージと合致してました。その200人くらいのチームが作った作品は,Khazanと同じようにネクソンの中で何か“特別な役割”を与えられていたんでしょうか。
Lee氏:
ルーターシューターというものが,ネクソングループでは初めてリリースするジャンルなんです。なので,ジャンル開拓者的なポジションぐらいに見ていただければと思います。
4Gamer:
売上の75%ぐらいが欧米地域によるものらしいですが,そういう意味でも「ジャンル開拓者」的な役割は果たしているとお考えですか?
Lee氏:
そうですね。欧米市場へのチャレンジというものはネクソンは昔から絶え間なく行ってきたんですが,The First Descendantは,韓国で開発したゲームが欧米でここまで良い好評をいただいて,数字的にも良い結果を見せているという初めてのゲームでして,とても良い評価をしています。
4Gamer:
東京ゲームショウでファンさん(注:MINTROCKETのCEO)と盛り上がったんですよ,「基本的にネクソンはチャレンジばかりしてる会社だよね」という内容で。
お話を聞く限り,KhazanにしてもThe First Descendantにしても,そのチャレンジの一環だということですよね。
[インタビュー]デイヴ・ザ・ダイバーの核は,海と寿司屋をつなぐ「地続き感」――ミントロケットのファン・ジェホCEOが語る,制作哲学と発想の源泉
東京ゲームショウの3日目,一般公開日になって混雑が増し,業界人が会場に足を向けなくなるころ,「デイヴ・ザ・ダイバー」を作ったミントロケットのファンCEOが,ホテルニューオータニの4Gamerインタビュー部屋を訪れた。雑談ぽいインタビューにしようと思っていたのだが,思ったよりも話は重たい方向に……。
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そうですね,チャレンジする会社です。
そのチャレンジの基盤となるものが,メイプルストーリーやアラド戦記,FCなどの,いわゆるキャッシュカウになるタイトルの存在だと思います。これらで体力をつけて,新作ではチャレンジが多くなりますね。
4Gamer:
チャレンジといってもやたらめったら手当たり次第やるわけではないでしょうし,何か重要だと考えているポイントはありますか。
Lee氏:
個人的には,ゲーム会社にとって一番大事なのは「特定ジャンルの職人が集まっている開発チームが複数存在すること」だと思います。
たとえば,「ブルーアーカイブ」というゲームをリリースしたチームは,今は「プロジェクトRX」というサブカルチャージャンルのタイトルを作っています。The First Descendantの場合も,ルーターシューターという初めてのジャンルで経験値が上がったら,第2,第3のルーターシュータータイトルが出るはずです。
会社全体から見ると,特定ジャンルの職人というものが数多く存在してほしいのです。
4Gamer:
しかしファンさんも言ってたんですが,結果としては「選択と集中」をしたほうが利益はきっと大きくなりますよね。
Lee氏:
そうですね。「選択と集中」が大事ではないかとか,その少数のジャンルのみに投資を続けるべきだとか,そういう話をする方も結構多いです。
でも私が思うに,ネクソンはある程度安定的な収益を出している会社なので,長期的な成長のためには新しいジャンルを開拓し,職人精神が宿っているチームに継続的かつ長期的に投資することが大事なんです。
4Gamer:
期待どおりのお答えで嬉しいですが,でも真面目な話,そう言う人はいっぱいいるけど,実際にやる人はほぼいないですよね。やはり昔からすごい会社だなあと素直に思います。
ICONS MATCH―――ゲームで味わったことを現実世界へ持ってきたらとても楽しいのでは?
4Gamer:
いま話に出たような,稼いだキャッシュを使う投資という意味では「ICONS MATCH」※もその一環ですよねきっと。
これこそ本当に素人考えなんですけど,試みとしてはとても面白いなと思いますけど,あれほどのレジェンドを集めて,コストに見合う効果はあるのかな? という疑問がちょっとあります。
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レジェンドサッカー選手を集めただけじゃない。“ストーリー”を生んだから成功した「Nexon Icon Match」の舞台裏[NDC25]
Nexon Developers Conference 25で,講演「ファンタジーからリアリティへ - Nexon Icon Matchの舞台裏」が実施された。歴代サッカー選手のレジェンドを集めたスペシャルマッチ,だけではない。ストーリー作りが成功の秘訣だった。
Lee氏:
大丈夫です(笑)。まずマーケティング費用に換算して考えるとすれば,そこまで負担になる金額ではありません。
これは見方の違いが特に大きいかなと思うんですが,アイコンズマッチのような大きなオフラインイベントを,ROI※観点から見るか,それともほかのところに価値を置くのかによって,全然違う結果になると思います。
※Return Of Investmentの略で,投資収益率を表す用語。このROIの数字が大きければ大きいほど投資効率が良いとされる。世の経営者や投資家の皆さんは,みんなこの数字が大好き
4Gamer:
あぁそれはそうですね。僕のいまのセリフはROI観点のものですし。
Lee氏:
ゲームというものの重要な価値の1つが,自分が夢見ていた何かを仮想世界で体験できるというところだと思います。例えば,ヒーローになって,モンスターから大切な人を守るとか,そういうこともゲームならできるわけです。
このICONS MATCHの開催を決める時,私たちはこの根本的な価値をどこに置くべきかを議論してたんですが,そのさなかに,そのゲームの重要な価値の1つである「仮想世界での体験」を逆にしてみよう,ゲームで味わったことを現実世界へ持ってきたらとても楽しいのでは? という話が上がったんです。
4Gamer:
逆アプローチは結構面白いです。
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なのでまぁROIの計算はいったんさておき,ユーザーのために,ユーザーが夢見ていたことを提供してみよう,という哲学が基にあったと思います。
これは企業のブランディングやマーケティング効果を超越した,ネクソンが目指す企業価値が反映された結果だと見ていただければと思います。
幸いイベントは成功したので,その結果としてROI的側面でも悪くない結果になり,私としては満足しています。
4Gamer:
僕は人間が小さいので,メガイベント効果を狙って,FC MOBILEの売り上げに貢献できたりするのかなと思ってたんですけど,全然そんな理由じゃなかったですね。
Lee氏:
その試合の当日いきなり売上が上がったり,そういうことはありませんでしたね(笑)。
これってとてもゲームみたいな体験じゃないですか? 実際,ほとんどが引退している選手で,今の10代,20代のユーザーにとってのこういうレジェンド選手は,ゲーム内のキャラクターとして持ってるだけで,この選手たちが実際の試合で走るのは見たことがないですからね。
4Gamer:
僕はスポーツをほとんど観ない人ですが,そんな僕でも知ってる名前ばっかりですからね。
Lee氏:
そう,まさにレジェンドです。そういう選手の方々が一堂に集まって試合するICONS MATCHは,ネクソンのユーザーだけではなくすべてのサッカーファンを対象にした“ゲームのような体験”なんです。
このような体験を提供したネクソンという会社に対して良い評価をしてくださったり,良いイメージとして長く印象に残ると思います。そしてそれは長期的にも,実績やその他の部分においてポジティブな影響を与えると思います。
来年2026年の日本でのローンチに向けて,今すごく頑張って取り組んでいるところです―――マビノギモバイル
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なんかそういういい感じの話を続けたいんですけど,実はもうあまり時間もないですし,限られた時間で日本人的に絶対外せない質問として「マビノギモバイルはどうなってますか?」というのを聞いてもいいですか。
Lee氏:
気になりますよね。
………この話は,社外の方には初めてしゃべるんですが,来年2026年の日本でのローンチに向けて,今すごく頑張って取り組んでいるところです。
4Gamer:
!
Lee氏:
ここで1つ強調しておきたいのは,グローバルビルドでのグローバル同時発売ではなく,日本限定ローンチだということです。
4Gamer:
いやあ……ついに来るんですね。
2026年以降のグローバル展開は示唆されていた状況ですが,日本についてはやるともやらないとも言わずずっとノーコメントだったので,今日は実は山のようにマビノギモバイルについての質問を考えてたんですが,もうそれらは全部聞く必要がなくなりました(笑)。
……いや待ってください。去年の話から考えると,“ハイパーローカライズの対象にする”ということは,日本の存在価値をそれなりに大きく感じていらっしゃるということですね。
Lee氏:
グローバルで同時リリースをすると,サービス対象国の中で集中度が下がる国が発生したりするのを防ぐために,まず日本をターゲットにして,日本ユーザーの特徴やニーズにもっと素早く対応できるように,日本オンリーでリリースします。
4Gamer:
おお……初の海外進出が日本なんですね。
Lee氏:
そうですね。マビノギモバイルにとっては初の海外展開になります。
4Gamer:
ちなみに,どんなところを変えようと思ってるんですか。言える範囲で大丈夫です。
Lee氏:
まず一番集中している部分は,実は結構地味なところでして,容量やインストール段階でのUXです。
ネットワーク環境の違いが原因かもしれないですが,韓国の場合は大きい容量のゲームをダウンロードすることに抵抗感があまりありません。しかしそれが,日本含む海外では,大きい容量のゲームに対する抵抗感が大きいことを示すデータを今まで見てきました。
4Gamer:
僕,個人的にはかなりのパケットを使える料金体系なんですが,確かに巨大ダウンロードはちょっと躊躇しますね。
Lee氏:
そういう方は結構いらっしゃるようです。なのでROMをコンパクトにまとめ,ダウンロードまでの過程を韓国より簡単にするよう集中しています。そして,とてもテキスト量が多いゲームなので,完璧な言語対応をして,声優を起用して劇的な演出や効果を見せることに力を入れています。
ある程度ユーザーに見せられるレベルのテストバージョンができましたら,そこからCBTを実施し,日本ユーザーのニーズをさらにキチンと把握して,それに合わせてコンテンツを追加していくつもりです。
4Gamer:
「始まる」というのを実感できますね。
ちなみにああいうノンビリさんゲームなのでユーザー分布みたいなものがちょっと気になってるんですが,先行する韓国ではどんな感じのデータですか? 例えば男女比とか。
Lee氏:
韓国でのデータを見ると,性別比は5:5ぐらいです。
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[インタビュー]ネクソンの「マビノギモバイル」が,20〜30代に刺さって売上320億円達成。次は50〜60代の世代を狙う
日本でのローンチにも期待がかかる,ネクソンの新作MMORPG「マビノギモバイル」について,先行サービスインしている韓国で,合同インタビューが行われた。日本でも長くPC版をサービスしているのでファンやユーザーは多いと思うが,絶好調で運営されているようなので,まずは国内サービスに期待しておこう。
4Gamer:
やはり結構多いんですね。
Lee氏:
ほかのRPGみたいに競争を促すのではなく,平穏な雰囲気の,独特なゲームですからね。ですので私としても,この雰囲気が多くの日本ユーザーの好みとよく合うのではないか,と予測しています。
4Gamer:
マビノギというIPの日本でのパワーはどれくらいで評価されてるんでしょうか。
Lee氏:
なにせ日本でも20年間サービスを続けているゲームですし,最近も活発にライブサービスを運用してますよね。認知度の面では,日本でも結構知られている方だと思っています。
4Gamer:
あなたのネクソン社歴と,マビノギの運用年数は同じくらいですしね(笑)。
まぁこれは日本に限らないですが,スマホでMMORPGを遊ぶという習慣自体がちょっと薄くなってきているかな……? という気がしてるんです,最近。昔ほど活発じゃないですよね。
そういった周りの状況を考えて,ちょっとローンチは慎重になろうか,みたいな話が社内であったのかなと邪推してたんですが,まぁでもそういうわけじゃなさそうでよかったです。MMOの盛衰じゃないですが,そういう部分はどのように考えてますか。
Lee氏:
マビノギは,実際プレイしていただけたならご存じかと思いますが,私達の意図としては,RPGというより,ゲーム内でユーザー同士のコミュニケーションが出来る,一種のメッセンジャーのようなゲームになってほしいのです。
狩りをしたりしなくても,ただゲーム内にいるだけでも楽しく過ごせる体験を提供したい,と思って設計してますので,そういう観点から言うと,マビノギをMMORPGとして見るのは個人的にはちょっと無理がありますね(笑)。
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4Gamer:
うーん確かにMMORPG感はないですね。それはモバイルになっても変わらず?
Lee氏:
はい。もちろん日本でローンチする時も,その制作意図から離れることはないと思います。
4Gamer:
しかしいまお話聞いて思ったんですが,改めて考えてみるとマビノギというのは,ずいぶんと時代を先取りしたメタバースのようなものなのかもしれませんね。
RPGというよりは,その世界に入ることが楽しい,という。今こそ真価が発揮されるのかもしれません。
Lee氏:
そうです。頑張りますよ。
4Gamer:
何月頃とか……。
Lee氏:
ちょっとそこまで話すのはいま難しい部分がありまして……(笑)。ローカライズ作業を念入りにしているところですので,日程共有は難しいです。ごめんなさい。
4Gamer:
では季節は?
Lee氏:
……いやダメです。開発チームに怒られます(笑)。
会う機会がありましたら,マビノギモバイルを開発したdevCAT studioのキム・ドンゴン代表※にぜひ聞いてみてください。
※2000年にネクソンを入社し,2002年からマビノギの企画開発に携わってきた人物(関連記事)
4Gamer:
残念。ではまた羊の毛刈りができる日を楽しみに待ちますね(笑)。
MapleStory Worldsはグローバルですごく好調ですが,差別化に悩んでいます
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しかしさっき“メタバース”と口にしてふと思い出したんですけど,「MapleStory Worlds」はどんな感じで動いてますか?
今回のTGSで,実は2,3件くらい新しいUGCプラットフォームの話を聞いたので,グローバルで一斉に来てるかなというところもあり,そんな中で一歩先に進んでるわけですし。
Lee氏:
確かにUGCはとても大きいトレンドになっていると思いますね。Robloxとかフォートナイトのクリエイティブモードみたいなものもそうですし。
MapleStory Worldsはグローバルですごく好調なんですが,ほかのゲームとの差別化をどういう方向にするか,私もすごく悩んでいるところであります。
4Gamer:
どのへんで悩んでるんですか。
Lee氏:
まず,フォートナイトのクリエイティブモードはUnreal Engineレベルでの制作支援があるので,UGCのテクノロジーの面ではすごく先を進んでいるとは思いますね。
となると,ネクソンはどういうところで差別化を図っていくのかについてなんですが,メイプルストーリーの特徴として,運営会社であるネクソンが20年間作ってきたアセットを,ユーザーが自由に使えるという部分があります。
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4Gamer:
あぁ……そうなんですね。それは使いでがありそうです。
Lee氏:
フォートナイトが,ゲーム制作ツールを完璧に提供してゲームを作らせるUGCだとしたら,ネクソンが目指すべきところは,IPのファン層を厚くしていくところではないかと思います。さらには,アラド戦記やネクソンが持っている他のIPに対しても同じようなアプローチができると思いますし。
そして,ゲームの文法というものも常に変わっていくものだと個人的には思っていますので,MapleStory WorldsのUGCが,ゲームという形にこだわらず,YouTubeのショート動画などゲーム以外の方向にも拡散できるように支援していこうと思います。
4Gamer:
ネクソンのほかのIPに広がるという話は,さらりとおっしゃいましたけどなかなかすごいですね。
しかしUGCはその構造上,ユーザーがジェネレートしてくれないと成立しないわけですけど,それにあたって一番大事なものはなんだとお考えですか?
Lee氏:
私は……UXだと思いますね。制作の経験のあまりない人でも,もっと手軽に始められるような場所を設けることがとても大事だと思います。
本当に小さい子供でも,クリック数回で簡単にゲームが作れるような,何かコンテンツを生み出せるような,そういうUXを設計することがとても重要だと見ています。
4Gamer:
AIもずいぶんと進歩してますしね。
Lee氏:
AIの導入はUGCコンテンツの必然ですね。すべてのゲームのUGCは,AIを通じて平均化されると思いますけど,その中でどんな競争力をつけるのかが大きな悩みです。
4Gamer:
ほかのUGC……「Minecraft」なんかがそうですし,最近では「Sandbox」などもそうですが,UGCがどんどん極まっていくと「UGCのAAA」が出てくるんですよね。そして上下がどんどん離れていく。
そういうのは,どうにかするべきか,しなくてもいいのか,僕にはちょっと分からないんですが,興味深く見ています。
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あぁ,そうですね。これは個人的な考えなんですけれど,元々ゲーム開発において一番の壁は「プログラミング」だったと思うんです。でも最近はChatGPTだったりのAI技術が進化していて,AIがプログラミングをしてくれるじゃないですか。
プログラミングというハードルがなくなってしまったら,ほかにはない目立つ個性をどうやって作れるかが大事なポイントだと考えています。その個性のポイントを先に見つける会社が,AAAゲーム市場をも先占できるのではないかと予想しています。
4Gamer:
そうなんですよね。プログラミングそのものの難しさや壁がなくなりつつあるので,みんながみんなレベルが上がってはいるんですけど,逆におっしゃるようにどんどん平均化している感じがちょっとありますよ。
だからこそ逆に,“クリエイターのオリジナリティ”を表に出しやすい時代なのかもしれないな,という気がしています。
Lee氏:
クリエイティビティが武器になる時代は,想像よりも早く来ると思いますよ。
4Gamer:
インディーのゲームショウとか見ていても,皆さんすごくいいものを作ってるんですけど,ほぼレベルが同じなんですよね。ああいう感じで差別化が図れなくなってしまうのが,ここ最近のムーブメントになっちゃうんだろうなという気はします。
しかしネクソンは,AAAを作れる数少ないグローバル企業だと思いますけど,AAAそのものはやはりどんどん厳しくなっているわけです。
AAAのコストに見合うだけの売り上げが作りづらくなってるという部分について,何かお考えがあったりしますか。この後はAAAはやめようとか,逆に今こそ張ってみようとか。
Lee氏:
パッケージゲームは特にそうだと思いますが,開発費用はどんどん上がってますし,発売当日にコストを全部回収できないと会社が危うくなることで,ほかの企業だと挑戦を迷うだろうと思いますが,ネクソンはむしろAAAゲームを開発していこう! との立場です。
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ネクソンの新作AAAタイトル「Woochi the Wayfarer」が発表に。韓国の古典文学を題材としたシングルプレイのアクションADV
ネクソンは本日(2025年8月12日),開発中の新作AAAタイトル「Woochi the Wayfarer」を発表した。本作は,韓国に実在したとされる人物「チョン・ウチ」を主人公としたシングルプレイのアクションアドベンチャーゲームだ。発表にあわせて,ティザートレイラーも公開されている。
4Gamer:
それはまたなぜでしょう?
Lee氏:
なぜなら,ネクソンはパッケージゲームを作る会社ではなく,オンラインゲームを作る会社だからです。発売以降にも持続的に売上を発生させられますし,コンテンツを拡張していく経験を30年間積んできた会社なので。
4Gamer:
あぁそれは……オンラインゲームのAAA化ということですか。
Lee氏:
そうです。ありそうで意外とないんですよね。
4Gamer:
いいですねえ,オンラインゲームのAAA。
Lee氏:
自社で言うなら,メイプルストーリーやアラド戦記は20年間もの間サービスしているので,コンテンツの量だけ見ればすでにAAAゲームレベルですね。ネクソンにはそれぐらいの経験値がすでにあるわけですし,十分に達成できる目標だと思っています。
4Gamer:
さっきのKhazanの話もそうですけど,パッケージゲームのノウハウも溜め込んでいけば,うん,だいぶ強いですね。
さてちょうど1時間経ってしまったので,2026年……というか来年に向けて,日本市場への戦略に向けて特筆すべき点とか,注目してほしい部分とかあったら,ぜひ最後に教えてください。
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来年もグローバル拡張が最優先課題でして,今見えているタスクで一番大事にしている作品は「ARC Raiders」です。
そして来年まで,グローバル拡張のために新作やサービス中のタイトルへの投資,積極的な動きは続けるつもりです。
とくに,さっき話したようなゲームのローンチだけではなく,日本のゲーム会社様との様々なパートナーシップや投資機会を模索しています。これからも,日本市場でのネクソンの動きに声援をお願いします。
4Gamer:
投資も結構大手やってますよね。バンナムとかコナミとかセガとか……まだまだいくぞ,ということですか?
Lee氏:
はい。投資にもいろんな方向があると思いますが,日本のゲーム産業において,同じエコシステムの中で一緒にできる部分を設計したいと思っています。
4Gamer:
今僕が名前挙げたようなところは,おそらくM&Aしたり経営に口出ししたりとかそういう部分ではなくて,長期的なパートナーシップを一緒に結んでいきましょうという意味だと思うんですが合ってます?
Lee氏:
そうですね。もちろん大手さんとの協力関係を構築することには積極的ですし,コラボもいっぱいやりたいです。そして,小規模の会社の発掘だったり育成,協業なども幅広く考慮しています。
4Gamer:
ネクソンぐらいの会社であれば,ぜひ一緒にやりたいっていうところはいっぱいあると思うんですけど,ネクソン側からどんなところがいいんですか。
Lee氏:
一緒にやりたいと言ってくださるならとても嬉しいです。
日本は,IPの宝物庫みたいなところです。長いゲーム歴史の中で沢山の良いIPを生み出したところなわけです。
だから会社もそうですけど,創作力や企画力を持っている人材を結構探しています。本当に広範囲に全方向から全部見ているとも言えますね。
4Gamer:
じゃあ,質問の方向性をちょっとだけ変えて,逆にLeeさんとして,韓国のゲーム業界に足りない要素はなんだとお考えなんですか。足りない要素を補充したいんだろうなと思うので聞いてみました。
Lee氏:
そうですね……ある意味ではトレンドを追いすぎだとも言えますし,ジャンルや開発方向が一本調子になるのが問題だと思います。
世の中になかったものを生み出せるような力が必要だと思いますけど,韓国ゲームシーンは日本や欧米よりはそういう部分が足りない感じです。
4Gamer:
一斉に同じ方向向いちゃいますもんね。
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逆にネクソンは。30年間Free-to-Playのゲームを作ってオンラインサービスをしてきた経験がある会社です。
でも私には,日本こそが,世の中になかったIPを創作して,それらの完成度を上げるという開発環境というかDNAがあるように見えます。だからネクソンが持っている開発力と日本の会社が持っている力が融合すれば,とんでもないものが誕生すると思っていまして,その側面からも,私は日本をとても重要視しています。
4Gamer:
韓国がオンラインゲームでブイブイ言わせてた頃からずっと思ってるんですけど,おっしゃる通り,日本の「IPを作る力」と韓国の「オンラインゲームを作るノウハウ」がくっついたらもっといいものが作れるんじゃないかってずっと思ってるんですけど,誰もやってくれません。ぜひお願いします。
Lee氏:
ぜひ見守っててください(笑)。
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―――2025年10月17日収録




















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