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人間は,世界は,分からないから面白いし思考したくなる――壊すことで世界が作られる不思議なシューター「Dreams of Another」が描くもの
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印刷2025/11/28 12:00

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人間は,世界は,分からないから面白いし思考したくなる――壊すことで世界が作られる不思議なシューター「Dreams of Another」が描くもの

 「PixelJunk」シリーズや「トゥモローチルドレン」など,独創的なアートと没入感のある世界観を特徴とした作品で知られるQ-Games(キュー・ゲームス)。京都を拠点に作品を生み出し続ける同スタジオが,2025年10月10日にPlayStation 5とPC(Steam)向けにリリースした新作がDreams of Anotherだ。

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 「PixelJunk Eden」でもディレクターを務めたマルチメディア・アーティスト,Baiyon氏が手掛ける本作は,その名の通り“別の誰かの夢”を旅するような世界観を持つ,三人称視点の探索型アクションゲーム。2025年2月の「State of Play」で初披露されたのち,Game Developers Conference(GDC)2025,BitSummit the 13th Summer of Yokai,東京ゲームショウ2025など,国内外のイベントや体験版を通して徐々に存在感を広げてきた。
 そういったイベントの現地やSNSの反応,ストアページなどでビジュアルや映像を見て,心にひっかかっていたという人も少なくないはずだ。

写真はBitSummit the 13th Summer of Yokaiのもの(関連記事
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見知らぬ空間に迷い込み,壊して創造する。Q-Games新作「Dreams of Another」は,今までにない表現で“誰かの夢”を描く不思議な感覚の探索ACT[BitSummit]

見知らぬ空間に迷い込み,壊して創造する。Q-Games新作「Dreams of Another」は,今までにない表現で“誰かの夢”を描く不思議な感覚の探索ACT[BitSummit]

 撃って壊して創造し,気がつけば誰かの夢へと迷い込んでいた。Q-Gamesによる新作「Dreams of Another」は,非論理的でシュールで,でもどこか寓話のようでもある世界にじわじわと引き込まれていく,不思議な感覚を楽しめる探索型アクションゲームだ。

[2025/07/20 12:48]

 そんな「Dreams of Another」の物語は,市街戦のさなかにある戦場の一角,二人の兵士が身を潜める場面から始まる。プレイヤーはそのうちの一人となり,銃を構えて道を進むと,敵と遭遇。銃撃戦になるが,どうしても引き金が引けない。その後,身を潜めていた場所を敵に見つかってしまうが,その場面でもやはり発砲できず,逆に敵兵に銃を突き付けられ,そして……。

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 と,ここで急に,それまでとはまったく違う空間にプレイヤーは投げ込まれる。
 そこは,泡のような粒子が漂う不思議な空間で,パジャマ姿の男性が長い階段の前に立っている。階段の途中には,この夢のような世界には不釣り合いなマシンガンがぽつんとひとつ。プレイヤーはパジャマの男を動かし,その銃を拾い上げる。
 やがて “彷徨う軍人”と名乗る軍服姿の男と出会い,夢の世界の住人たち――というより夢の欠片のような存在たちと交流しながら,彼に導かれるようにして“どこか”へ向かって歩き始める。

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 世界はポイントクラウド(点群データ)を用いて表現された,泡が漂うような抽象空間だ。プレイヤーは説明らしい説明もないままパジャマ姿の男を操り,マシンガンで泡を撃ち散らしていくことになる。すると視界が開け,そして弾けた泡が寄り集まって噴水やベンチ,家のドア,人や生きものとなり,“世界”が作られていく。

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 こうして生まれた空間で,人やモノを調べ,会話し,物語の先へと進んでいくことになる。
 「モノと会話?」と思うかもしれないが,これは筆者の日本語が変なわけではない。ここの世界では,木も扉も犬もモグラも,人間以外の存在が平然と話しだすのだ。
 そしてその言葉は散文的で,意味があるようで意味をなさない。不思議なつぶやきや独り言のような“会話にならない会話”で,それはまさに夢の中のようなやりとりだ。

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 ゲームとしてはメインストーリー“的”な流れがあり,何かを達成すると次の場面へ切り替わるステージ進行“的”なものもある。
 ただ,それらも夢をさまようように唐突に終わったり,急に場面が変わったり,気付けばパジャマの男がベッドで眠っているメイン画面へ戻ったりする。
 泡を撃って世界を形づくり,住人の言葉を聞いて先へ進むというそれだけを追っていると,単調に感じてしまう人もいるだろう。物語も抽象的で,そのまま受け止めていると「結局何だったんだ?」で終わると思う。

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 でもこのゲームは,物語をまっすぐ追うだけでは見えてこないものがたくさんある。
 言葉は,意味があるのかないのか分からないように聞こえるものでも,人によっては“なにか”のきっかけになったり,そのとき置かれた状況などでふいに浮かんで自分のものになることがある。
 本作には,そういう“いずれなにかになりそうな言葉”を拾い集めていく感覚があって,そこに独特の面白さがあると感じた。プレイを重ねると出会った言葉がアーカイブされていきあとから読み返せる仕組みになっているのも,その遊び方とよく合っている。

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 じゃあ,いわゆる“考えるゲーム”でゲーム性は薄いのか? というとそうではない。むしろ見せ方は――表現として適切ではないかもしれないが,“普通に”ゲームとして気持ちよくできている。
 銃の扱い自体は一般的なFPSやTPSと同じ感覚で気負わずに遊べて,撃つだけでも十分に爽快だ。弾を放つと泡が散ってまた集まる感覚は本作ならではの気持ちよさがある。
 弾数を気にせず“バババッ”と撃ちまくれるのも心地よさにつながっている。

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 何か考えさせられる言葉も難解さや説教めいた印象はなく,どこかクスッとくるようなユーモアがにじんでいる。
 世界そのものもナンセンスかつシュールな寓話のようで,筋道立った意味を求めてもするりと抜けていくような感覚があり,それは独特の心地よさを感じさせてくれる。夢の中の理不尽さに身を預けるような感覚というか,状況によって受け取り方が変わるタイプの作品だと思う。

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 これはさらに個人的な視点での感想になるが,脳内で常に思考が動き続けているような人に刺さるものがあると思う。
 というのも筆者がそういう感覚のある人間で,頭の中で常に音楽が流れていたり,複数の人があれこれ話していたりするような“雑音に近いおしゃべり”がずっと渦巻いている。その声たちは会話として成立していなかったり,唐突に飛躍して意味をなさなかったりもするが,それらの小さなピースが時折かちっとはまり,自分の考えが整理されたり,新しいアイデアに結びついたりする。本作からは,そんな思考の流れにどこか近いものを感じたのだ。

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 何時間も集中して一気に遊ぶというより,寝る前に少しだけ起動して,落ち着いたBGMとともに泡の世界をさまよい,爽快に銃を撃ってリラックスし,気になった言葉をひとつふたつ拾い集める。そして物語の区切りがついたら,そっと現実へ戻って布団にもぐり込む――そんな遊び方がしっくりくるゲームだと思う。

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「壊す」と「作る」のあいだに生まれる余白と解釈の自由。Baiyon氏インタビュー


 と,ここまでが実際にプレイしてみて感じた「Dreams of Another」の印象だ。ここからは,東京ゲームショウ2025の会場でディレクターのBaiyon氏にうかがった話をとおして,この“不思議なシューター”の裏側をもう少し掘り下げていきたい。

Baiyon氏
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4Gamer:
 まず最初にうかがいたいのが,銃で撃って“壊して”いるのに,結果として世界が“できていく”ところについてです。あの発想はどこから来たんですか?

Baiyon氏:
 もともと「壊す/創る」って,そんなにきれいに二項対立で分けられるものじゃないよな,という感覚がずっとあったんです。
 壊すことは創ることでもあるし,創ることは壊すことでもある。真剣にものづくりを続けていると,だんだんそういう境界が溶けていくように感じていて。

 それで,なぜそれをシューターという文脈でやるかというところでいうと,ある時期,FPSやTPSをあえて違うクラシック音楽を聴きながらプレイしてみる,ということをしていたんですよ。戦場での銃撃戦のBGMとして,例えば儚いピアノの曲,グレン・グールドのピアノとかを流してみると,途端にその場に全然違う空気が立ち上がる。それだけで「殺し合い」のシーンが,別の文脈を帯びはじめるんですよね。

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4Gamer:
 映画でもありますよね。凄惨なシーンなのに,流れている音楽は静かで物悲しいとか。

Baiyon氏:
 そうそう。で,その状態で敵をバーッと一掃したり,ビルを吹き飛ばしたりしていると,ふと「今倒したこの人にも家族がいたんじゃないか」「このビルの中にも生活があったんじゃないか」とか,そういうことがいつも以上に気になりだしてくる。
 そのとき自分でも驚いたんですけど,いわば“死んでいる映像”を見ているはずなのに,それが逆に“生”を感じる瞬間があったんです。

 花火もそうですよね。夜空に打ち上がって,パッと開いて,すぐ消えてしまう。あれって一瞬の“死”でもあるけど,同時にその瞬間が頂点で,見ている人に「生きてるな」と強烈に感じさせたりもする。
 なぜ消える瞬間に“生”を感じるのか。それって,誰にとっても避けられない「いつか死ぬ」というルールを,全員が共有しているからなんじゃないか――そんなことを考えるようになって。
 そういう「逆を見せることで,逆側を感じる」感覚が,ずっと自分の中に残っていたんです。

4Gamer:
 その感覚の表現として,ポイントクラウドを選んだということでしょうか。

Baiyon氏:
 そうですね。ポイントクラウドの映像って,ジェネレーティブなVJやアート寄りの作品の文脈で見ることが多いと思うんですけど,「粒が集まってモノになる」という見せ方が多いじゃないですか。それを見たときに,「あ,これ逆再生したらどうだろう?」と思ったんです。

 大きなポイントクラウドのかたまりがバーンと細かくなって飛び散り,それがまた戻ってくる。そしてそれを何度も繰り返すうちにどんどんモノとかが形作られて,世界が見えてくる。撃ちまくることで形が“壊れる”んじゃなく,“創っている”感覚にできるんじゃないか,と。
 その発想と,「破壊と創造」という自分の中にあったテーマが,ポイントクラウドを見た瞬間に全部つながってきた感じでした。

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4Gamer:
 ポイントクラウドの表現に,個人的には細胞や生きものっぽさも感じていて。今のお話を聞いて,そこにも生命……生き死にみたいなニュアンスを感じていたのかなと思いました。

Baiyon氏:
 生物学者の福岡伸一さんの「動的平衡」という考え方がすごく好きで。人間って,細胞レベルでは常に入れ替わり続けているのに,何年ぶりかに会った人を「久しぶり」と認識できるじゃないですか。よく考えると,すごく奇妙だけど面白い。

 ポイントクラウドも,粒が集まって何かの形になるけど,その粒自体は入れ替わっていく。撃つたびに一回バラバラになって,また集まって,前と同じようでいて同じじゃない。一度は何にも属さない“無所属の粒”になって,それが別の場所に移動したとき,別の何かの一部になる。そう考えると,すごく面白いですよね。
 今の自分はたまたまAという形をしているけれど,いつかBにもCにもなれるかもしれない。そういう存在の儚さや可能性みたいなものを,ポイントクラウドそのものが体現しているように感じたんです。

4Gamer:
 リアル調の銃が,あの泡の世界の中でやけに“浮いている”のも印象的でした。

Baiyon氏:
 あれは,僕の中では「現実の銃」じゃなくて,「ゲーム文脈における銃」なんです。FPSやTPSのアイコンとしての銃。ゲームを遊んできた人が「知っているシンボル」としての銃ですね。
 あの銃は,ゲームが好きな人たちとゲームにおける“お約束の記号”を共有したうえで,それを使って「その構造をひっくり返したら何が見えるか」を一緒に実験したい,という感覚が近いです。

 だから,銃社会や戦争への批評とか,アンチ・シューターみたいな暗喩とかはぜんぜんなくて。説教くさいものが,この世で一番嫌いなので(笑)。

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4Gamer:
 説教くさいものがこの世で一番嫌い。いいですね(笑)。

Baiyon氏:
 大げさじゃなく,本当にそのレベルで嫌いです(笑)。
 伝えたいことや考えていることはいくらあってもいいと思うんですけど,「こう思え」「こう感じろ」と決めつける形に落ちてしまう瞬間が,どうしてもダメで。

 ゲームに限らず,映画や音楽,漫画などどんな表現も,本来は説教になりそうなメッセージを,ユーモアや構造の遊びで「作品」に昇華しているものだと思うんです。
 抽象性と受け手の自由を担保しているからこそ,映画である意味とか,音楽である意味,ゲームである意味が生まれてくる。そういう“受け手の自由”が担保されている表現が好きなんですよね。

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4Gamer:
 ちょっと近い話かなと思うんですが,私はいわゆる“インディー”な音楽や映画,ゲームがすごく好きで。
 たとえば音楽なら,曲調は明るくてポップなのに物悲しいことを歌っていたり,まっすぐ伝えるのはくすぐったいからか,どこかちょっとねじれていたりしますよね。
 「これはラブソングです」と,きれいなメロディで「君を愛している」と歌っているものが,少し苦手というか直視できないという理由もあるんですが(笑),でもそれ以上に,その“ねじれ”みたいなものの中に「本当のこと」が潜んでいるような感覚があるというか。

Baiyon氏:
 分かります分かります。僕も例えば,悲しい歌をものすごく“悲しく”歌うのは,「そもそも“表現”と呼べるのだろうか?」という感覚があって。
 もちろんそれでいい作品もあるし,好きな人もいるんだけど,自分にとっては,悲しいなら悲しいなりにちょっと距離があるほうが刺さるんですよね。
 こっちに向かって「ほら悲しいでしょ」と押し付けてこない“かすれた悲しさ”というか。向こうのほうで鳴っていて,こちらが勝手に自分の心を置く余白がある。その“間”とか“距離”が,すごく大事だと思っていて。

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4Gamer:
 こっちが勝手に「分かりたいな」と思って近づいていく感覚ですね。

Baiyon氏:
 そうそう。「分かりたいんだけど,全部は分かりたくない」みたいな(笑)。

4Gamer:
 そういう,ちょっと矛盾したところも含めて。

Baiyon氏:
 ええ。だから「Dreams of Another」のストーリーやモノがしゃべるセリフは,どの角度から見ても必ず何らかの意味に当たるように設計しているけれど,その「意味」をこちらから説明したくはないし,一つに限定したくない。
 だけど,遊んでいる人が「何を言っているか意味が分からない」「この先に答えなんてないんじゃないか」と不安になる必要はなくて,引っかかった場所の奥には,少なくとも一つは何かしらの“種”が置いてある。
 「そこから先どう育てるかは,完全にあなたの自由です」というスタンスです。

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4Gamer:
 ゲームは見た目の部分はすごくアーティスティックなんですけど,どこかユーモラスだったり人懐っこかったりする感覚もありました。

Baiyon氏:
 そうありたい,というのはありますね。
 おっしゃるとおり,アート寄りに見える作品って「難しそう」「構えて遊ばなきゃいけなさそう」と身構えられがちなんですけど,僕がやりたかったのはむしろ逆で。
 抽象的だからこそ,ちょっとくだらない笑いとか,拍子抜けするようなセリフでコーティングしておきたいんです。重たいテーマをどんと置くというより,ふとした拍子に「あのセリフ,なんだったんだろう」と思い出してもらえたらうれしいなと。

4Gamer:
 私は「不思議の国のアリス」や「マザー・グース」が子どものころから好きで。ああいった童話や寓話の,シュールだったりちょっと複雑だったりする話も,言葉遊びがあって受け入れやすくて楽しい……みたいなところに通じるのかなと思いました。

Baiyon氏:
 それでいうと,言葉遊びやユーモアって本当に大事だと,そこはめちゃめちゃ思っているところですね。
 あとはセリフだと,ひとつのセリフに例えば「羨ましがられる側」「羨ましいと感じる側」「その関係性を外から眺める側」みたいに複数の視点を重ねられるようにしていて,どこにでも自分を置けるようにしてあります。

 だから,ただ「なんだこれは。意味分からん」と笑って終えてもいいし,その言葉が残っていて自分との対話が始まる人もいるかもしれない。それくらいの自由さで受け取ってもらえたらいいなと思っています。

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4Gamer:
 分かるようで分からない“意味のありそうな言葉”を扱うときに,意識していることはありますか?

Baiyon氏:
 人間が文化を発展させてきた大きな要因のひとつに,「象徴的思考」というものがあると思っていて。
 普通の会話で例えば,「昨日,先輩と晩ご飯行ってさ」みたいに言われることがありますよね。この言葉にはその“先輩”がどの人で,どこで何を食べたのかも分からないけど,言っている意味は理解できる。これは,聞き手が一度イメージを自分の中に取り込んでシンボルとして抽象化し,イメージとして取り込むことで成立しているんですよね。

 僕は,この“象徴的思考”の力がすごく好きで,抽象的なものを介して他人と具体的な感情を共有できるって,とてつもない発明だと思っているんです。

4Gamer:
 何気ない会話でも,関係性や状況によって同じ“ような”ものは想像できている。

Baiyon氏:
 そうそう。僕たちは知らないうちに“象徴としての言葉”を共有しているから,ざっくりした会話でもちゃんと通じる。
 僕が好きなのは,その「象徴」をじっくり考えたり,ちょっとひねってみたりすることなんです。ゲームでは犬がどうでもいいことをしゃべっていたり,モグラが妙に達観したことを言っていたりするわけですが,「考えたことなかったわ」と笑いながら読んでくれる人がいてもいいし,もっと深く潜っていく人がいてもいい。

 つまり,同じように“読む人が自分の中で勝手にふくらませてくれる余白”が働いたらいいなと思っていて。
 強制するのではなくて,自分なりに考えてもらう余白を残しておきたい。それで,日々ちょっと疲れている人が,ふらっと入ってこられる精神的なシェルターみたいなものになったらいいな,とも思っています。

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4Gamer:
 先ほどの“ゲームの文脈における銃”というのもこの話に通じますね。銃が落ちてたら拾うし,落ちてたら拾って,ZLで構えてZRで撃つみたいな。ゲーマーなら共通して持っている感覚というか。
 世界や人間って,分からないからこそ面白いし,だから考える。このゲームはなんというか,“人間賛歌”な感じがあるなあと思いました。

Baiyon氏:
 人間って,存在の形は持っているけれど,ある意味では「最も重要なものが欠けた状態」で生まれてくるとも言えると思うんです。
 自分がなぜ存在しているのか,その“理由”は最初から与えられていない。だからこそ,人生の中で楽しいことも苦しいことも,良いも悪いも全部ひっくるめて体験していくし,ときにはそれを「美しい」と言ったりもする。

 よくアートやエンタメって「生活に必須じゃないもの」といわれるけど,そういう「ちっぽけだけど尊いもの」を得る意味でも表現することや触れることって重要だと思っています。
 それもあって,このゲームの根っこにあるのはやっぱり「ゲームが好きだ」という気持ちなんですよ。

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4Gamer:
 今日お話していて,「ゲームとして面白く」を大事にしているんだと感じました。

Baiyon氏:
 それはうれしいですね。
 アートも音楽も大好きだけど,同じくらいゲームが好きで,からかったり斜に構えたりせずに,自分のゲーム愛を形にしたのが「Dreams of Another」なんです。
 ちょっと抽象的すぎるところや理屈っぽく見えるところを感じる人もいると思うけど,ゲームとして楽しいものでありながら,日常に少し違う空気を届けられたらいいなと。

4Gamer:
 ありがとうございました。
 こういう話って,言語化してもらうのは野暮だなと思いつつ,でも作り手の気持ちも伝えなければというジレンマがあって。説教っぽくならないようにまとめなくちゃとか……。

Baiyon氏:
 分かります(笑)。「受け取り方は自由でいい作品だけど,作り手としてはこういう気持ちがある」というのを伝えるのってすごく難しいです。

4Gamer:
 結局は「まず遊んでみてください」になっちゃうんですけど(笑)。

Baiyon氏:
 (笑)。だからこそあらためて,「難しいゲームだと構えないで大丈夫」と伝えたいです。
 見た目やコンセプトで身構えるかもしれないけど,まず単純に“撃つのが楽しい”シューターですと。抽象化した世界を撃ってそれがバラバラになって,また集まって具体化していくという変化も込みで,それだけでも楽しいので。

 そのうえで,一つでも「妙に心に残る言葉」や「理由は分からないけど気になる場所」があったら,少しだけ考えてもらえるといいかなと。正解を当てにいく必要はないし,そもそも正解はない。自分なりの答えを見つけてもらえたら,それだけで作り手としてはうれしいです。

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