
プレイレポート
[プレイレポ]書いて,読んで,暴け! 名探偵・金田一耕助と挑む密室の謎――覚書から真実を紐解き,「本陣殺人事件」を完成させよう
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本作は,探偵作家の横溝正史氏による「本陣殺人事件 金田一耕助ファイル2」(角川文庫)を原作とした作品で,名探偵・金田一耕助が挑んだ密室殺人事件の真相に迫っていく,ミステリーパズルノベルゲームだ。
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本稿では,原作ファンも思わずニヤリとしてしまうような仕掛けが用意された,本作の先行プレイレポートをお届けする。事件の真相に関するネタバレはもちろん含まれていないが,物語に関する記述や画面写真を多く掲載しているため,予備知識なしで楽しみたい人は注意してほしい。
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※記事内のゲーム画面はPC(Steam)版のものです
結婚式を終えた新郎・新婦に起こった悲劇
金田一耕助は,作家の横溝正史氏が生み出した名探偵だ。彼を主人公にした「金田一耕助」シリーズには,長編・短編あわせて多くの作品があり,「八つ墓村」や「犬神家の一族」など,何作も映画やドラマ化されてきた。
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また,名探偵の代名詞として,マンガやゲームに登場する探偵役のモチーフになることも多く,ミステリー小説に馴染みがない人でも,その名前を耳にしたことがあるのではないだろうか。
そんな金田一耕助が最初に登場した作品が,本作の原作となっている「本陣殺人事件」だ。
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▼物語のはじまり(公式サイトより)
1937年11月26日午前4時頃,岡山県にある旧本陣の末裔・一柳家の屋敷の離家で,結婚式を終えたばかりの新郎新婦・一柳賢蔵と久保克子が,布団の上で血まみれになって死んでいた。
事件当夜,離家の中には死亡した夫婦以外,誰の姿もなく,降り積もった雪の上にも足跡ひとつ残されていなかった――まさに,『密室の殺人』だった。
事件の知らせを受けて駆けつけた探偵・金田一耕助は,証言を集めながら,この謎に迫っていくが……。
金田一耕助のパトロン(出資者)である久保銀造は,姪である久保克子の結婚式に出席するため,旧・本陣(身分の高い人が宿泊する施設)の名家「一柳家」を訪れていた。
しかしそこで銀造は,奇妙な殺人事件により姪を亡くし,探偵として活躍していた金田一耕助を呼び寄せることとなる。
金田一耕助は,すでに警察からも信頼を得ており,警部の磯川常次郎の協力のもと,関係者から情報を集めていく。
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事件を追うなかで,怪しい三本指の男の存在や,一柳家と刀にまつわる因縁など,さまざまな疑惑が浮かび上がってくる。
舞台は1930年代,およそ100年前。スマートフォンのような便利な機器は存在せず,価値観も現代とは大きく異なり,祟りや迷信といった思想が信じられていた時代だ。
そんな,どこか不気味でありながらもどこか懐かしい昭和中期の空気が,美麗なグラフィックスと音楽によって描き出されている。
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探偵作家と小説を完成させよう
金田一耕助の事件は,ある探偵作家がその活動を記録し,小説としてまとめたものという形式で描かれている。
本作では,その探偵作家が関係者から得た情報を覚書(メモ)として記録し,金田一とともに内容を整理しながら,物語が進んでいく。
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画面には事件関係者が登場し,その供述がテキストで表示される。文中に水色で示された単語は事件の要点であり,選択することで新たな供述を引き出せる。
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供述は,関係者ごとに整理されている。同じ単語でも,相手によって知っている内容が異なり,さまざまな人物の話を聞くことで,事件の全容が少しずつ明らかになっていく仕掛けだ。
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紫色の単語も事件に関する要点だが,その時点では情報が足りず,新たな供述を得られない。推理が進むことで水色に変化するため,ひとまずはスルーしておいても問題ない。
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関係者の供述は,発言ごとにテキストブロックとして分けられているが,時系列を整理することでつながりが生まれ,事件の正しい流れを把握できるようになる。
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また,要点をもとに供述がつながっていく仕組みのため,ときには証言者と内容が一致しないこともある。
一人称や口調,その人物の立場などに注目し,誰の発言かを推理することが重要だ。正しい証言者を見つけ,テキストブロックが連結された瞬間の爽快感は格別である。
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また,赤いブロックが発生することがある。このブロックを開放するには,特定の人物を選んだり,記述のなかから条件に合う情報を探し出したりと,事件に対する推理が求められる。
奇をてらったような意地悪な仕掛けはなく,供述を手がかりに正解へたどり着ける構成となっており,まさに探偵になったようなワクワク感を味わえた。
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事件の始まりから丁寧に描かれており,相関図なども用意されているため,「金田一耕助」シリーズを初めて知るという人でも楽しめる作品になっている。殺人事件が題材のため,血や残酷な表現も一部含まれるが過度ではない。安心してプレイできるだろう。
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筆者はミステリー小説が好きで,「本陣殺人事件」ももちろん読んだことがある。事件の怪しさや人間の切なさが感じられる演出が随所に用意されており,読書時の記憶を補完しながら,新鮮な気持ちでプレイできて楽しかった。
また,“覚書を整理して,一遍の小説にする”という過程が物語の大きなポイントになっているのも興味深い。犯人を知っていても知らなくても,ニヤリとできる結末が用意されているので,ぜひ期待してほしい。
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「金田一耕助シリーズ 本陣殺人事件」Steamページ
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原作 横溝正史「本陣殺人事件」(角川文庫) (C)Seishi Yokomizo 1973 (C)coly