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タイピングで少女のトラウマを打ち消す「Pain Pain Go Away!」は,言葉の1つひとつが深く刺さる新感覚なアドベンチャーゲーム[BitSummit]
淡彩的な壁のビジュアルと,実際に試遊している人の画面の衝撃的なビジュアルのギャップが印象的で,多くの人が足を止めていた。
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主人公は,小さな診療所のカウンセラー。最新のカウンセリング機器「P2GA」を使い,家出少女たちの悩みを聞き出そうとする。
少女の感情が暴走すると,心を支配するトラウマワードの数々が現れ,ダイブモードへ移行し,その言葉を打ち消していく。このカウンセリングでの質問や,トラウマワードの打ち消しでタイピング要素があるという形だ。
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正直,ADVにそのままタイピングのミニゲームが入っただけだと思っていたのだが,実際プレイしてみると,その印象は大きく変わる。タイピングするとき,文字を読んで,頭でキーに変換して実際に叩く。
もちろんタイピングゲームなので,打ち込む文章は1字1句正確である必要があるので,無意識に頭の中で修正と復唱を繰り返す。
これを高速に,何ワードも行う。カウンセリングでは,自分が少女に言葉をまくし立てているような臨場感があり,トラウマワードを高速で打ち消していくときは,テキストを読むときの数倍,1つひとつの言葉が深く突き刺さってきた。
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システム的な話だが,「?」や「,」などの記号や句読点は入力する必要はなかった。タイピングゲームで詰まりやすい部分が排除され,ストレスもないし,カウンセリングフェーズでまくし立てている感じがさらに深まっているように感じた。
ダイブモードで,少女のトラウマワードを打ち消していくと,彼女のトラウマの元凶である「ファイナルワード」を抱えるボストラウマが現れる。
ボスは複数のワードをどんどん打ち消すフェーズと,ファイナルワードのフェーズに分かれている。ファイナルワードでは,1文字もミスできず,ミスすると1つ前のフェーズの途中からスタートする。
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再びファイナルワードに挑戦するときは,失敗する直前の文字からスタートになる。ファイナルワードだけどうしてもクリアできないということはなさそうだが,実は,ノーミスでクリアすると特別な演出を見られたそうだ。
心療タイピング型アドベンチャーゲーム
— 藤澤 仁 / storynote (@JIn_Fujisawa) July 17, 2025
『Pain Pain Go Away!』
体験版のリリース開始しました!
NORMAL以上の難易度でボスを1ターンで倒すと
それ用の特別な演出が出るようにしたんですが
自分にはできないので、タイピングに自信がある人
是非録画して見せてください……https://t.co/bZtqHaNoM4
編集部員である筆者は,日常的にタイピングする機会が多いので,難度は「イージー」「ノーマル」「ハード」のハードに挑戦したのだが,ファイナルワードはけっこう大変で,ノーミスクリアはできなかった。
会場では,普段愛用しているキーボードで再度挑戦したい,と意気込んでいる人も多く見かけた。Steam体験版もBitSummitの試遊出展にあわせて公開されているので,これを読んでいる読者のみなさんも挑戦してみてほしい。
ゲームとは関係ない部分だが,ブースの雰囲気もかなり良かった。ファイナルワードに挑み,ボスを倒したプレイヤーには拍手と歓声が送られ,試遊後は,プレイヤーの名前も書かれた「内用薬」(中身はノベルティ)も配布されていた。
受け渡すときも「1日2回,朝と夜に……」といった風に,スタッフの皆がゲームの世界観をより体験できるような空間を作っていて,大人が全力で文化祭を楽しんでいるような印象であった。
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「ドラゴンクエスト」シリーズ(DQIX,DQXなど)のディレクターを務め,現在は「Project:;COLD」シリーズや「かがみの特殊少年更生施設」などを手がける第四境界の総監督で,シナリオ制作会社・ストーリーノートの代表である藤澤 仁氏も自らブースに立ち,拍手や歓声を送っていた。合間にコメントを頂けたので,紹介しよう。
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4Gamer:
ストーリーノートと本作について教えてください
藤澤氏:
僕らはもともとシナリオ専門会社だったので,自分たちでゲームを作っていなかったんですけど,最近アドベンチャーゲーム専門ブランド「Lorebard」ってものを立ち上げました。その第1作がPain Pain Go Away!です。
社外のエンジニアの方に手伝ってもらっている部分もあるんですが,うちのスタッフは,シナリオだけじゃなく,絵が描けたり,音楽を作れたり,いろいろな特技を持っていて。そういう人間たちが,みんなで力を合わせて作ってるゲームです。
もともと,僕はドラクエのディレクターもやってたので,それを生かして,若い子たちが活躍できるようにディレクションしていて。せっかく作ったなら1人でも多くの人に知って欲しい。それで,「手弁当でプロモーションを全部頑張ろう!」みたいな,そんなプロジェクトでもあります。
BitSummitも,40人くらいいる社員のうち,京都に近いスタッフを中心に10人くらいが参加している形です。
4Gamer:
アドベンチャーゲーム専門ブランドの第1作に,タイピング要素を入れた理由を教えてください。
藤澤氏:
第四境界もそうなんですけど,ストーリーノートっていう会社は,「今ある物語の見せ方なら,僕らがやる必要はないよね」という考え方をしています。まだ誰もやっていない物語表現を見つけて,それをやるのがストーリーノートの社員です。
タイピングでアドベンチャーゲームって珍しいのではないか。ならば,僕らがやるべきなのでは,ということで,このゲームを作り始めました。
4Gamer:
実際プレイしてみて,タイピングがあるからこそ,言葉が深く突き刺さってくるような気がしました。
藤澤氏:
そこは,僕らも実際作ってみて初めて実感した部分ですね。あとは,今もブースで歓声があがったり,拍手があがったりしているじゃないですか。こんなアドベンチャーゲーム見たことないんじゃないかな。
随分新鮮なアドベンチャーゲームになっているな,って思っています。
4Gamer:
タイピングならではの要素はありますか。
藤澤氏:
試遊版には入ってないのですが,アドベンチャーゲームとして物語を読んでいると,何も書かれていないワードボックスとかが出てきます。
プレイヤーが自分で推理して入れなきゃいけない場面も出てくるんですね。
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4Gamer:
復唱とは全然違うゲーム体験になりそうですね。
藤澤氏:
そうなんです。実際にプレイしていて,何も書いてないワードボックスが急に現れたら,「えっ!?」って驚くじゃないですか。このドキドキをみなさんに提供したいと思います。
4Gamer:
選択した難度によって,物語は変化しますか。
藤澤氏:
さすがに,物語自体は基本的に一緒です。ただ,アドベンチャーゲームらしいというか,プレイに対してのエンディング分岐は用意しています。
だから,本当にタイピングが上手いプレイヤーじゃないと見られないエンディングも,思いもしないような入力をしないとたどり着けないエンディングも用意しています。
4Gamer:
純粋なタイピングを追加しただけではない,ということですね。
藤澤氏:
もちろん最初はそうだったんですが,作っているうちにアイデアがどんどんあふれてきて,これもっと面白くできるよね,ということで追加していきました。
ブランクボックスどころか,出ているのはこれだけど,違うワードを打つと,打った瞬間だけ,パッと姿が見える隠しワードボックスもあって……。思いついたアイデアは,いろいろ詰め込んでいます。
体験版ではそこまではないんですが,最終的にはそういった要素がもりもりになっています。
4Gamer:
タイピングゲームはカジュアルなゲームが多いイメージがありますが,けっこう重いテーマを取り扱っていますよね。
藤澤氏:
ストーリーノートは物語屋なので,簡単な物語を作ろうって動機はないんですよ。最初から「そんな物語は辛すぎない?」っていう,心臓をえぐっていくような物語を作ってこそ,僕らなんだなと思っています。
4Gamer:
十八番の物語を,新しい形で届けたいと。
藤澤氏:
目指しているのは,そういうところですね。
4Gamer:
開発についてですが,進捗はいかがでしょうか。
藤澤氏:
製品版は11月のリリースを目指しています。体験版をリリースして,ある意味バーティカルスライス(ゲームの序盤をほぼ完成形の状態で見せるもの)的なものは完成している,という認識ですね。
あとは,シナリオを着実に積んでいくというフェーズになってくるので,ある程度スケジュールの計算ができる段階に入っています。
ただ,自分たちが納得するまでやるところもインディーのいいところです。そういう意味で言うと,もちろん11月を目指しているけど,本当に自分たちが納得するまでやるっていうことが大事なんだと思っています。
4Gamer:
ありがとうございました!
「BitSummit」公式サイト
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