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マトリックスの大堀康祐氏が,最近の動向をBCN Game Fest 2025で語る 〜 ゲーム文化を守り,ゲームビジネスを革新させる!
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印刷2025/10/16 18:04

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マトリックスの大堀康祐氏が,最近の動向をBCN Game Fest 2025で語る 〜 ゲーム文化を守り,ゲームビジネスを革新させる!

 BCN Game Fest 2025で,日本から主賓として招待されていた,マトリックス 代表取締役社長の大堀康祐氏がキーノートインタビューを実施していたのでレポートしよう。

現地ゲームメディア「Gamereactor」編集長のダビッド・カバレロ(David Caballero)氏がインタビュアーを担当。大堀康祐氏はセッション中,終始落ち着いてにこやかな表情だった
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 大堀氏のエピソードは有名だ。氏は16歳の高校生時,ナムコのアーケードゲーム「ゼビウス」を完全攻略し,日本で初めてカウンターストップの1000万点をたたき出したことで,ゲーム業界への一歩を踏み出した。

 同年には友人(中金直彦氏)とともにミニコミ誌「ゼビウス1000万点への道」を発行し,再販を含めて1万部を超過。当時のミニコミ誌としては異例のベストセラーを達成し,これをきっかけに「マイコンBASICマガジン」の別冊付録「スーパーソフト マガシン」で,ナムコ系ゲームの攻略記事を書くようになる。

 というように,筆者らゲームライターにとっても大先輩にあたるすごい人だが,ビジネスの才覚もこのころから身に着けていた。

 氏は全47都道府県に「ハブゲーセン」を設立し,各地でゼビウスの最高得点情報を掲載していった。その動機は,「まだインターネットなどで情報交換もできなかった時代に,自分のように強いゲーマーがほかにもいるのかをを知りたかったから」だったという。

 現在のオンラインゲーマーのコミュニティ作りにも通じる,ゲーマーとしての純粋な欲であったことがよく分かる。

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高校2年生のころには,すでに攻略本や1万冊を売るファンコミ誌を作っていたゲームライターであり,プロゲーマーの草分け的存在でもある
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 ゼビウスをきっかけに,クリエイターの遠藤雅伸氏との縁もできた大堀氏は,ゲーム開発の知識もあったことで,大学時代からナムコでアルバイトを始める。大学卒業後は任天堂に赴き,自らのテクノロジーを披露。その結果,有名IPとしてマッチアップされたのがサンリオで,それが1990年にリリースされた,氏が企画からマスターアップまでの全工程に関わった初の作品「サンリオ カーニバル」だった。

 そのあと,フリーランスとして1992年にメガドライブ用RPG「ランドストーカー 〜皇帝の財宝〜」の企画に関わったのち,1994年7月に28歳でマトリックスを設立。その流れを汲むPlayStation用RPG「アランドラ」を1997年に,「アランドラ2 魔進化の謎」を1999年に発売した。

 このアランドラはスペインでの人気は非常に高いようで,インタビュー後の来場者による質疑応答(ほとんどはゲーム開発者だったと思われる)では,質問の大半がアランドラに関するものだったのが印象的だ。

 ゲーム中で死んでしまうキャラクターも多いダークなファンタジーに対して,氏は壇上で「当時のゲーマー層としては,かなり高めの年齢を意識していた」と語っていたが,場内では「同作が初めてのゲームだった」と述懐している人も何人かいた。

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 以降のマトリックスについては多くのゲーマーが知るとおり,「ドラゴンクエストキャラクターズ トルネコの大冒険2 不思議のダンジョン」(1999年),リメイク版「ファイナルファンタジーIII」(2006年),「ファイナルファンタジーXI アドゥリンの魔境」(2013年),モバイル移植版「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」(2014年),「アナザーエデン 時空を超える猫」(2017年)など,RPGジャンルのモバイル版移植やコンテンツ運営なども多く請け負ってきた。

 そしてマトリックスの直近の動向としては,HINATAとの協業を経て,正式に同一ホールディングスによる新しい企業体制をスタートさせていることを本誌で報じている(関連記事)。

 また,同ビジネスモデルをさらに発展させたことが9月16日にアナウンスされた。現在は家庭用ゲームやスマホアプリ開発で実績豊富な「マトリックス」に加え,幅広いプラットフォームに対応する「ジーチョイス」,オンラインゲームを支えるサーバ技術に強みを持つ「プロファイア」,アプリゲーム開発に注力する「メテオライズ」,そして数々の自社IPを持つ「アルファ・システム」による,戦略パートナーシステム「白群」(びゃくぐん)を構築したことが明らかにされている。

1か月ほど前に始動した「白群」は,それぞれのメーカーの強みを生かして弱点を補い合うという,新しい形のゲーム企業連合体だ
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 白群については多くは語られなかったものの,現代の開発費の高騰事情や大規模化が進む中,それぞれの専門分野に長けた会社が連合を組み,互いの弱点を補完することによって「メジャーなパブリッシャに対抗するための新しいチーム構成」と説明されている。

 公式サイトによると開発陣は総勢200名を超え,各自が培ってきた技術と経験が共有されるとともに,より充実した開発環境も構築したという。

歌舞伎町にあるオフィスは,なにかのゲームで爆破されたことで,ゲーマーたちの間でバズったことがある
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 大堀氏が2016年から進めている活動も紹介された。それが「ゲーム文化保存研究所」(Institute of Game Culture Conservation/IGCC)だ。氏が強調していたのは,同組織は単なるゲームプログラム(ハードウェアやカートリッジ,ソフトのデータなど)を残すのではなく,とくに日本国内でゲーム産業の原動力となった,メーカー,クリエイター,そしてゲームプレイヤーという3つの異なる観点で,その哲学や思想,技術,そこに注ぎ込まれた情熱そのものを保存しようという試みだ。

 つまり,ゲーム文化保存研究所の活動は,考古学的な遺物だけでなく,その遺物に刷り込まれているオーラルヒストリーも早い段階で記録してとどめていこうというものである。

 その一例として紹介されたのが,ゲーム文化保存研究所が2023年に出版した「ALL ABOUT DATA EAST データイーストのすべて」だ。福田哲夫氏ら当事者や関係者へのインタビューなどの取材を通じて,デコゲー(DECO/Deta East Coのゲーム,意味)などと呼ばれた個性的な世界観のゲーム群や,アミューズメント機器に対して標準化規格やガイドライン「JAMMA」(Japan Amusement Machine and Marketing Association)の設立のきっかけなどが詳しく解説されているという。

ゲーム会社,クリエイター,そしてゲーマーの3つの観点から,ゲーム文化のオーラルヒストリーを記録していく試みらしい
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 こうした大堀氏の最近の動向は,高校生のころからゲームへの情熱を持って業界に関わり,還暦前にして40年以上もの長い経歴を積んできた,氏自身のゲーム産業への思いと重なり合うものがあるように感じる。

 遠く離れたスペインの地でも高く評価されている氏だが,終始にこやかでハツラツとした経営者らしさと,ゲームオタク的な情熱が感じられるトークに,若いゲーム開発者たちも感銘を受けた様子だった。

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マトリックス公式サイト

HINATA公式サイト

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