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日本での発売が待ち遠しい「アスペクト比32:9」の最新ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイを発見
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印刷2024/06/10 13:18

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日本での発売が待ち遠しい「アスペクト比32:9」の最新ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイを発見

海外ではさまざまなゲーマー向けディスプレイを販売しているSamsung。こちらはウルトラワイドではないが,湾曲型の4K(3840×2160ピクセル)量子ドット液晶パネル採用の「55" Odyssey Ark」。お値段なんと2999ドル
画像集 No.004のサムネイル画像 / 日本での発売が待ち遠しい「アスペクト比32:9」の最新ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイを発見
 海外では「Odyssey」ブランドでアスペクト比32:9のウルトラワイドディスプレイを積極的に展開しているSamsung Electronics(以下,Samsung)。しかし同社は,2007年に日本のテレビ・ディスプレイ市場から撤退しており,同社製品を正規ルートで購入,使用する手段がない。
 ところが,最近では「OdysseyシリーズのOEM品かな」と思えるような,32:9ディスプレイが,国内でもチラチラ出始めてきた。というわけで本稿では,筆者がCOMPUTEX 2024で見つけたアスペクト比32:9のゲーマー向けディスプレイを3製品紹介したい。


KOORUIから32:9有機ELディスプレイが登場


 HKCは,特定メーカーから委託されてODM製品を開発したり,あるいは自ら開発した製品を大手メーカーブランドで販売するOEM事業を得意としている半導体関連メーカーだ。最近では,「KOORUI」という自社製品ブランドを立ち上げている。
 とくに,KOORUIのゲーマー向けディスプレイは,Amazon.co.jpで,競合製品よりも安価に販売されているため,注目度が高い。筆者も,KOORUIブランドを認知してはいたが,その大元であるHKCブースを取材したのは初めてだ。

 そんなHKCが,「近々,KOORUIブランドで発売する予定」として紹介していたのが,アスペクト比32:9のゲーマー向け有機ELディスプレイ「P2」だ。「Samsung製の量子ドット有機EL(QD OLED)パネルを採用」を全面に押しだした展示を行っており,仕様を見る限り,中身はほぼSamsungの「Odyssey OLED G9」(型番 G95SC,以下型番表記)と同じだ。

KOORUIブランドの49インチウルトラワイドOLEDディスプレイ「P2」。湾曲率は1800R
画像集 No.002のサムネイル画像 / 日本での発売が待ち遠しい「アスペクト比32:9」の最新ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイを発見

 QD OLEDパネルといえば,Samsungが開発した新世代有機ELパネルで,青色有機ELサブピクセルに赤量子ドットと緑量子ドットを組み合わせて,赤緑青のサブピクセルを純色発光させるのが特徴である。白色有機サブピクセルにカラーフィルターを適用するLG Electronics式の有機ELパネルよりも,圧倒的に色域の広い発色が特徴で,とくに製品が増えてきた有機ELディスプレイの中でも,採用する製品が増えている。

 HKCが送り出すQD OLED採用の32:9ディスプレイは,画面サイズ49インチで,解像度5120×1440ピクセル。その大きさは,27インチサイズで2560×1440ピクセル解像度のディスプレイを,横に継ぎ目なく連結して1枚パネルにしたものに等しい。
 標準輝度250nitで,HDR信号にも対応。公式スペックとしてのHDR表示品質は,「DisplayHDR 400 True Black」相当になるとみられる。
 有機ELパネルは,画素1つ1つが発光するので,ネイティブコントラストは黒浮きとは無縁な150万:1を誇る。色空間カバー率は,デジタルシネマ向けの色空間規格「DCI-P3」で98%,PC向け色空間規格でお馴染み「sRGB」は100%だ。

 応答速度は0.03ms。つまり30μsで,一般的な液晶の100倍は高速だ。そのおかげで,最大リフレッシュレートは240Hzとなっている。HDMIのディスプレイ同期(可変リフレッシュレート)技術の「VRR」や,同種の技術(AMDのFreeSync系や,NVIDIAのG-SYNC系など)にも対応する。
 接続端子はHDMI 2.1入力×2と,DisplayPort入力×1を備える。

背面のLEDイルミネーションは消すことができる。デザインも悪くない
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 気になる価格だが,本家SamsungのG95SCが1800ドルなので,これよりは確実に安くなるらしい。Amazon.co.jpでも販売予定だとのこと。
 この手のOEMメーカーによるオンライン販売品は,諸事情あって在庫が安定せず,一定量販売すると在庫切れ,しばらくすると在庫補充というサイクルを繰り返す。Samsung製QD OLEDパネル採用の32:9ゲーマー向けディスプレイが欲しい人は,KOORUI/HKCブランドの販売状況を監視するとよさそうだ。


Acerの「Predator Z57」がついに日本でも発売へ


 CES 2024で発表されたものの,その後,音沙汰がなかったAcerの32:9ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイ「Predator Z57」(以下,Z57)が,ついに発売となるようで,その量産品相当の機材が披露されていた。

見よ,この圧倒的なウルトラワイド感! ちなみに,7680×2160ピクセルの57インチは,ちょうど32インチの4K解像度の2画面分となる
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 Z57は,画面サイズ57インチの32:9,ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイで,解像度は7680×2160ピクセルだ。映像パネルには,ネイティブコントラストに優れたVA型液晶パネルを採用しており,湾曲率は1000Rと,かなり強く曲げた表示面を持つ。

湾曲率は1000R。前掲のKOORUI製有機ELディスプレイよりも曲がっており,没入感はさらに高まる
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 液晶パネルを照らすバックライトは,直下型構造のMini LEDを採用。エリア駆動(ローカルディミング)の分解能は2304ゾーンだそうで,おそらく,この値が液晶パネルを照らすMini LEDの個数と一致するとみられる。
 最大リフレッシュレートは120Hzで,こちらもディスプレイ同期技術のVRRや,AMDの「FreeSync Premium」,G-SYNC系に対応する。

 さて。ディスプレイに詳しい人なら,Z57のスペックを聞いて,SamsungがCES 2023で発表した,32:9ウルトラワイドゲーマー向け液晶ディスプレイの最上位モデル「Odyssey Neo G9」に似ていると思ったかもしれない。ただ,細かく比較していくと,スペックには主に3つの違いがある。

 ひとつは,Predator Z57はMini LEDバックライトを採用するが,量子ドット技術は非採用であること。
 2つめは最大輝度。Odyssey Neo G9が最大2000nitなのに対して,Predator Z57は1000nitなのだ。1000nitでもだいぶ明るいので,一般的なゲーマーであれば,不満は感じないかもしれない。
 3つめは最大リフレッシュレート。Odyssey Neo G9は,最大リフレッシュが240Hzだったが,Predator Z57は,半分の120Hzとなっている。Z57の解像度は4K解像度2画面分の7680×2160ピクセルであるため,120Hzのリフレッシュレートで表示すると,HDMI 2.1の伝送帯域幅的(最大48Gbps)にギリギリなのであった。Odyssey Neo G9のように,画質劣化を許容する「Display Stream Compression」(DSC)技術を併用すれば,240Hzまで拡張できるが,Z57ではそれを見送ったということなのだろう。

OSDメニューを表示してみた。HDMI 2.1モードで接続されているが,展示機はリフレッシュレートは60Hzで動作していたようだ
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背面にはスピーカーを内蔵。スタンド接合部はカラーLEDイルミネーションが点灯していた。もちろん消すことも可能だ
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 ブースの担当者に発売時期を聞いたところ,未定ではあるものの,日本での発売予定があること。そして価格は,「Odyssey Neo G9の(メーカー想定売価である)2500ドルよりは,だいぶ安価になるであろう」とのことだった。
 なお,Acerではなく,別のディスプレイメーカー筋からの情報だが,一連のOdyssey Neo G9風な製品群の価格は,1800〜2000ドル前後になるのではないかとのことであった。

AcerのZ57製品情報ページ



あのCooler Masterからも,32:9のウルトラワイドゲーマー向けディスプレイが登場


 PC向けの冷却ソリューションの名門,Cooler Master Technology(以下,Cooler Master)からも,32:9のウルトラワイドゲーマー向けディスプレイ「GP57ZS」がリリースされる。

Cooler Masterから登場した32:9ウルトラワイドゲーマー向けディスプレイ「GP57ZS」
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 スペック的には,先述のPredator Z57とほぼ同じで,画面サイズは57インチ,解像度は7680×2160ピクセルと,32インチの4K解像度を2画面連結したようなサイズ感となる。バックライトはMini LEDで,エリア駆動数のは2304。湾曲率は1000Rだ。最大リフレッシュレートは120Hzで,ディスプレイ同期技術のVRRやFreeSync系,G-SYNC系にも対応する。

 「Predator Z57と相違点はあるか」と聞いたところ,「我々はCooler Masterなので,冷却性能にこだわった。これにより,競合よりも全画面を光らせたときの輝度を高くできる」とのことであった。

湾曲率は1000R。スピーカー位置やスリット位置もPredator Z57とそっくり。ただし,スタンド接合部の冷却口はCooler Master GP57ZSの方が多い?
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 とくに,大量のLEDチップを実装したMini LEDバックライトシステム採用機では,消費電力と発熱の制御をシビアに行う必要がある。有機ELでは寿命も絡んでくるので,さらにシビアとなる。そこで,一部のメーカーでは,冷却機構に手を入れて,ピーク輝度の上限を上げたり,高輝度表示の持続時間を伸ばすチューニングをすることがある。
 パナソニックは,2020年モデル以降の「VIERA」ブランドの有機ELテレビで,同じLG Electronics製有機ELパネルを使っているにもかかわらず,他社に比べて高輝度表示が可能なことをアピールしていた。その秘密は,まさにこうした冷却機構の改善を念入りにやっていたから,というのは有名な話だ。
 どうやら,そうした独自の冷却系チューニングを,このウルトラワイドゲーマー向けディスプレイにも行ったというわけである。

GP57ZSのインタフェース部。こちらもPredator Z57とほぼ同じであった
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 なお,Cooler Masterブースでは,GP57ZSに2台のPCから4K画面を入力して,1台2役的に活用するデモを披露していた。具体的には,1つのUSBマウスやキーボード,有線ゲームパッドを,GP57ZSのPC切換器機能(KVMスイッチ)を活用して2台のPCで共有し,表示映像の入力切り換えに連動して,USB機器の接続先も随時切り換えるというものだ。

 Acerブースでも確認したところ,Z57にもKVMスイッチがあることを確認した。つまり,両製品は製造元が同じで,中身はかなり酷似しているのだと思う。

 Cooler Masterの担当者によれば,GP57ZSの発売は,年内を予定しているが,価格は未定。日本での発売は「前向きに検討中」とのことなので,楽しみに待ちたい。

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