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海外のパブリッシャは日本のボードゲームをどう見る? ゲームマーケット2026春のボードゲーム座談会をレポート
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印刷2026/06/20 10:00

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海外のパブリッシャは日本のボードゲームをどう見る? ゲームマーケット2026春のボードゲーム座談会をレポート

 国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2026春」が,2026年5月23,24日に千葉・幕張メッセで行われた。
 両日通じての来場者は合計で3万2000名を数え,ボードゲーム,カードゲーム,TRPG,マーダーミステリー,謎解きなど幅広いジャンルにわたるアナログゲームの盛り上がりを感じさせる2日間だった。

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 ゲームの展示即売・プレイ体験もさることながら,場内に設けられたスペシャルステージでのイベントにも興味深いものが多い。
 なかでも筆者の目を引いたのが,海外パブリッシャ・ディストリビュータによるボードゲーム座談会だ。

 ゲームマーケットに限らず,国内コンテンツイベントには海外からの来場者も増えているように見える。
 本イベント直前に「海外イベントを飛び回るアークライトに,ゲームマーケットのこれからを聞く」として,ゲームマーケットが海外アナログゲームカルチャー・市場とどう呼応しているかを紹介したが,反対に,海外からゲームマーケットというイベント,そして日本のボードゲームはどう見えているのだろうか。

 今回は本セッションの様子を通じて「日本のボードゲームを取り巻く視線」を紹介してみよう。

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海外から見たゲームマーケットと「日本のボードゲーム制作」カルチャー


 登壇者はフランスを拠点とする世界最大級のパブリッシャAsmodee(アスモデ)Koreaに所属し,ゲームマーケットには2007年から訪れているというKevin Kim氏
 フランスのディストリビュータBlackrock Gamesのローカライズなどを担当するMatthieu Clamot氏
 そして同じくフランスから,林 尚志氏の「ボムバスターズ」や宮野華也氏の「TRIO(日本版タイトルは『ナナ』)」など,日本ゲームの海外向けパブリッシュを手がけたCocktail GamesのJulia Klokova氏の3名だ。
 いずれも2025年春からゲームマーケットが設ける「海外ビジネス参加制度」に合わせて出展した各パブリッシャ・ディストリビュータから参加した形である。
 司会は自身も日本でボードゲームの研究・制作を行うYannick Deplaedt氏が務めた。

 まず登壇者3人がいずれもゲームマーケットを訪れて面白く思うのは,同人ボードゲームサークルや個人作家のような,小規模ゲームデザイナー層の充実だそうだ。
 それらゲーム制作者の多くが,グラフィックスやアートワーク,そしてマーケティングについても理解し,自分で「製品」としてパッケージを手がけ,完成させたゲームを並べて出展していることはとても特殊で,興味深いことのようである。
 海外ではクリエイターとそのゲーム,そしてパブリッシャとの接点はプロトタイプの時点であることも多く,そこから「製品」にする機能はパブリッシャが担っている場合も多いのだ。

 Julia氏は「彼らは自分の魂の一部を共有しようと『とにかくやってみよう。アイデアがあるなら,それを形にしよう。その先で何が起こったって!』という姿勢でそこにいる。それは本当に特別なことだと感じる」と述べ,このようなクリエイターたちを「勇敢(brave)」と表現した。

Cocktail GamesのJulia氏
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 加えて,その数が非常に多いことにも言及された。
 Kevin氏によれば,例えば韓国でのイベントで見かけるゲームデザイナーは40〜50人程度だそうだ。
 欧州最大のボードゲームイベント,Spiel Essenの2025年の出展者数はおよそ950である。
 今回のゲームマーケット2026春の出展者数は1300以上。単純には比較できないが,これだけの数で,しかも個人を多く含む市場はやはり特異と言える。

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 ゲームの内容についてはシンプルな,それでいて核のしっかりした本質のあるゲームが彼らの目を引くようだ。
 Julia氏曰く,彼女の属するCocktail Gamesは「TRIO」などを扱っていることから分かるように,「理解するのは非常に簡単,でもそのなかにブリリアントな何かがある」ゲームを求めており,日本のボードゲームクリエイターがその「less is better」を理解していることに魅力を感じているそうだ。
 Matthieu氏も,「『素晴らしいアイデアと数枚のカードがあれば十分に成立するゲーム』は,現在のフランス市場のニーズに合致している」と述べた。
 確かに,筆者が今年赴いたフランスのFIJ(Festival International des Jeux)でも,シンプルなカードゲームや2人用ゲームがアワードAs d'Orを受賞していた。

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[2026/03/12 07:00]

 併せてMatthieu氏は「特定の市場の期待に応えようとして,自分たちを合わせすぎないでほしいと思っています。というのも,彼らの魅力である新鮮さや豊かさは,そうした制約に縛られず自由であることから生まれていると思うからです」と述べた。
 一方,大規模なゲームも取り扱うAsmodeeのKevin氏は,「トリックテイキングやカードゲームが人気だが,次にくるトレンドを探そうとしている」と述べ,ゲームマーケットのコンパクトなゲーム群についての概観をみとめながらも,その中でもより「ひねり(twist)」のあるゲームを探すことにも意欲的なようだ。


日本作品発掘の課題はやっぱり「言語」


 このように海外パブリッシャ・ディストリビュータを惹きつける日本のボードゲームとゲームマーケットではあるが,前述のように数多くのブースのなかから,会期の2日間だけで彼らが自分たちのカタログにマッチしたゲームを見つけ出すのは大変なようである。
 これらに輪をかけて登壇者が困難に思っているのは,やはり言語の壁だそうだ。
 Matthieu氏は「英語のルールも用意されるようになってきたが,まだ十分ではない。かといって翻訳アプリを試そうものなら大変なことに」と話していた。

Blackrock GamesのMatthieu氏
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 これは少し意外であった。というのも,海外ゲームのルールブックは,知らない言語であっても「ボドゲ文法とボドゲ語彙」とも呼べるもので構成されていることが多く,翻訳結果は自ずと素直になることが多いためだ。
 日本語のゲーム特有,あるいは同人ボードゲーム特有の難しさがあるのかもしれない。


海外パブリッシャはどうやってゲームを世界へ届ける?


 そんな彼らのパブリッシャとしてのゲーム選定や,発売に向けてのプロセスについても触れられた。
 前述の通り,海外のパブリッシャは,ゲームが一般に向けた市場に出ていくまでのさまざまな段階を手がける。
 ゲームの魅力を最大限に引き出しつつ,パブリッシャごとのカタログや特色にも沿うよう,検討は箱のサイズやパッケージデザインから,ゲーム自体のコンポーネントやメカニクスにまで及ぶ。

 Matthieu氏が属するBlackrock Gamesはパブリッシャではなくディストリビュータだが,それでも,最適なパブリッシャを探す過程の前に彼ら自身がテストプレイを重ねたり,メカニクスやアートワークについて検討したりすることは必ず行うそうだ。
 ゲームの選定はそれぞれに異なるポリシーが最も表れるところだが,面白いのはCocktail Gamesの「チームの全員がそのゲームをプレイして,ほぼ満場一致でなければ採用しない」というスタイルである。少人数パブリッシャだからこその方法と言えるだろう。

Asmodee KoreaのKevin氏。「幕張メッセの周りにもっとレストランがほしい」とのリクエストも
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 最後に登壇者3人から,日本のゲームクリエイターへのアドバイスが語られた。
 Kevin氏は「焦らず,あなたのゲームにとって正しい『居場所』を見つけてください。あなたのために最高の製品を作ってくれる,適切なマーケティング能力があるパブリッシャを探してください」とコメント。
 Matthieu氏は「とにかく『コミュニケーションをとってみる』こと。(ゲームマーケットの『海外ビジネス参加制度』など)仲介してくれる人々を通じてコミュニケーションすることは全員にとってプラスです」と述べた。
 Julia氏は「自分自身に忠実に。トレンド外のもの,あるいは変なものだと思っても,デザイナーの心とゲーム自身が共鳴しているかどうかは海外から見ても常に伝わるものです」と,改めて「勇敢であってください(be brave)」の語を交えて締め括った。

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 海外パブリッシャ・ディストリビュータからの視点と,日本のボードゲームシーンへの真摯な関心を通じて,ゲームを見る際の新しい視点が得られる座談会であった。
 さまざまな差異や特色も語られたが,「成功するゲームに共通する要素はあるだろうか?」との質問に対してJulia氏が答えた「ブームかどうかを超えて,ほかの誰かと共有したくなるゲーム,ブームが終わっても友人や家族,まわりのゲーマーに紹介したくなるゲーム」というのは地域を問わず普遍的なものだろう。
 海外のプレイヤーにも受け入れられ,世界に羽ばたくようなゲームがこれからも現れるか,楽しみなところだ。
 国内・海外のゲームやゲームクリエイター,そしてパブリッシャをはじめカルチャーにまつわる多様な参加者の交流を通じて,魅力的なゲームとの出会いが増えることに期待したい。

 なお,過日Cocktail Gamesの創業者でゲームマーケットにも多く参加されていたMatthieu d'Epenoux氏が亡くなった。
 本稿で触れた「TRIO」「ボムバスターズ」など日本ゲームのパブリッシュにも携わった,本座談会のテーマを体現したような人物であり,冥福をお祈りしたい。

著者紹介:
Im Karton
 海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Jeux」などを訪問。「Essen Spiel Guidebook 2023」「Gen Con Guidebook」に続き,2025年はFIJに行きたい人向けのガイドブックを「FIJ Cannes Guidebook」として刊行。

ginrei
 Im Kartonメンバー。訪問時の撮影とデザインを担当,海外ボードゲーム好き。最近D&Dをおそるおそる始める。好きなボードゲームは「Septima」「REDWOOD」。
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