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[インタビュー]「ドルフロ」10周年を経て,サンボーンは次の10年へ踏み出す。社長・羽中氏が語るものづくりの信念と,旗艦タイトル「リコーラップス:F」の野望
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印刷2026/05/23 10:00

インタビュー

[インタビュー]「ドルフロ」10周年を経て,サンボーンは次の10年へ踏み出す。社長・羽中氏が語るものづくりの信念と,旗艦タイトル「リコーラップス:F」の野望

 2026年5月2日,「ドールズフロントライン」のメーカーとして知られる上海散爆(サンボーン)は,中国・上海国家会展中心で「ドールズフロントライン」10周年記念イベントを開催した。

 イベントは大きく2部構成となっており,昼の部では体験型コンテンツを中心に,「ドールズフロントライン」「ドールズフロントライン:ニューラルクラウド」「ドールズフロントライン2:エクシリウム」「逆コーラップス:パン屋作戦」の4作品が,それぞれ別エリアで展開された。

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 夜の部は音楽祭として実施され,上海音響楽団による演奏や,ゲストボーカルのKinoko蘑菇さんと上海歌劇院合唱団による歌唱ステージが披露された。
 さらに,社長の羽中(うちゅう)氏が登壇し,開発中の新作タイトル「リコーラップス:F(仮)」「ドールズフロントライン:ブルーコブナント」(仮訳)を発表した。

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 4Gamerは上海に赴き,サンボーン本社の社長オフィスで羽中氏にインタビューを実施した。新作の話はもちろん,ものづくりに強いこだわりを持つ羽中氏の姿勢や,「ドルフロ」に込められた思いについても,たっぷりと話を聞いてきた。本稿ではその模様をお届けしよう。

10周年は目的地ではなく,新たな出発点だ


4Gamer:
 まずは,「ドールズフロントライン」10周年,おめでとうございます。先日,上海で10周年記念イベントが開催されましたが,とくに印象に残っている瞬間はありますか。

羽中氏:
 最初から最後まで忘れられない瞬間がたくさんありましたね。

 まず,イベントの開催を発表した時点で非常に大きな反響があり,チケットはあっという間に完売しました。正直に言うと,プレイヤーの皆さんの熱量を少し甘く見ていたところがあり,来場者数は想定を大きく上回りました。そのため,会場のキャパシティや現場の運営など,至らない点を残してしまいました。次回は今回の経験を糧に,より良い体験をお届けできればと思っています。

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 昼の部では,10周年というテーマを軸に,シリーズの歴史を振り返れるコンテンツを多数用意しました。「ドールズフロントライン2:エクシリウム」(以下,ドルフロ2)や「ドールズフロントライン:ニューラルクラウド」(以下,ニューラルクラウド)といった新作から入ったプレイヤーが多いのではないかと予想していたのですが,実際には初代「ドルフロ」から遊んでくださっている方も非常に多くいらっしゃいました。
 長年にわたって一つのIPを育て,プレイヤーの皆さんと一緒に歩んでこられたことに,改めて感無量でした

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 夜の部は音楽ステージと新作発表でした。通常のコンサートであれば,お客様は客席でステージを楽しむものですが,今回は演奏に加えて,会場全体の熱量の高さが印象的でした。名曲が流れるたびに熱烈な反応をいただき,シリーズの歴史を振り返る場面では感慨深い空気に包まれ,新作発表時には大きな興奮が生まれました。開発チーム一同にとっても,大きな励みになったと感じています。

4Gamer:
 現場には行けませんでしたが,写真からでもあの熱気が伝わってきました。

羽中氏:
 そうですね。これまで開催してきたイベントの中でも,演奏のクオリティ,そして会場の雰囲気という点で言うと,今回は一番よかったと思います。

4Gamer:
 一つのシリーズにとって10周年というのは,記念すべきマイルストーンであり,感慨深い節目でもあると思います。開発に関わってきた中心人物として,10周年に対してどのような思いを抱いているのでしょうか。

羽中氏:
 まず,10年という時間そのものに深い思いがあります。「ドルフロ」を作り始めた当初は,一つの作品やIPがどれだけ長く続くか,正直まったく考えていませんでした。というより,新バージョンのコンテンツ開発に全力を注ぐだけで精いっぱいで,ライフサイクルがどれくらいになるのかを考える余裕がなかったんです。

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 ところが3年目,あるいは5年目に入る頃から,状況が変わってきました。開発経験の蓄積もそうですが,作品を通じてプレイヤーの皆さんから大きな支持をいただくようになりました。その時点で,「このIPを長く,強く育てていこう」という気持ちが自然と芽生えたんです。
 そこから,その思いに応えるためにどんな行動を取るべきか,プレイヤーの皆さんの要望にどう向き合っていくべきかを,長い視点で考えるようになりました。

 「ドルフロ」というシリーズのストーリーを続け,プレイヤーの皆さんと一緒に成長し続けられるように,長期的な計画を立て始めたのはそのころからです。

4Gamer:
 なるほど。そう考えると,今回発表された2本の新作はまさにサンボーンが次の10年に踏み出すための,新たな一歩と言えそうですね。

羽中氏:
 そう捉えていただいて構いません。10周年は私たちの計画において最初の節目であり,新たな出発点でもあると考えています。
 長い年月をかけて一つのIPを育てるという方針がプレイヤーの皆さんに受け入れられたことを,過去の10年が証明してくれました。これからも,さらに長い時間をかけて,その方針をより徹底していきたいと思っています。

ストーリーの行方はプレイヤー全員が決める,ナラティブの新境地


4Gamer:
 「リコーラップス:F」について,開発決定のきっかけを教えてください。タイトルを見ると,「面包房少女」までのストーリーにさかのぼる作品のようにも思えますが,新作との関係性も気になるところです。

※「面包房少女」は,MICA Teamが同人時代に制作した作品。2024年3月には,リメイク版「逆コーラップス:パン屋作戦」がPC,Switch,iOS,Android向けにリリースされた。

羽中氏:
 一つのIPを長期的に育て,プレイヤーの皆さんに寄り添う形で,より多くの作品を届けたいというのが私たちの本心です。このシリーズには非常に大きな世界観があり,時間軸で見ても長い歴史が存在しています。
 「ドルフロ」は,その歴史のほんの一部を切り取ったものにすぎません。こうした世界観をさらに広げていくためには,さまざまな角度から,この世界にまつわるストーリーを描いていく必要があると判断しました。

 そうした考えのもと,「リコーラップス」は同じ世界観における,別の時代に起きた物語として独立させ,世界観の完成度や奥行きを高めていく方針を取りました。

4Gamer:
 なるほど。そうすると,新作ではどのあたりの時代が描かれるのでしょうか。

羽中氏:
 時間軸で言うと,「ドルフロ」シリーズの物語は2054年から2076年ころを舞台としているのに対し,「リコーラップス」は2092年から2112年ころが舞台になります。

逆コーラップス:パン屋作戦
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 そのため,「ドルフロ」よりも,前作「パン屋作戦」とのつながりが強い作品です。「パン屋作戦」時代の科学レベル,勢力図,キャラクター関係を引き継ぐ形で,ストーリーを展開していきます。

4Gamer:
 「面包房少女」といえば,MICA Teamがまだ同人サークルだったころの,原点ともいえる作品ですね。羽中さんにとっても,さぞ思い入れのある作品だと思います。
 ちなみに,「リコーラップス:F」は次世代の旗艦タイトルという位置づけが明記されていましたが,どのような体制で開発を進めているのでしょうか。

羽中氏:
 「リコーラップス:F」はシューティングゲームであるため,ゲームプレイを核に据えたタイトルとして位置づけています。その方針のもと,初期段階では小規模な検証チームを複数編成し,実現したいゲームプレイをデモやプロトタイプの形で段階的に検証してきました。

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 ゲームプレイの検証体制が整った段階でチーム規模を拡大し,クオリティを製品レベルへと磨き上げる段階に移行しました。現時点では,ゲームプレイの実現性の検証を終え,ちょうどクオリティを磨き上げる段階に入ったところです。

4Gamer:
 なるほど。ではサンボーンはこの作品に対して,どのような意気込みを持っているのでしょうか。

羽中氏:
 「リコーラップス:F」は私たちの旗艦タイトルとして,ゲームプレイだけでなく,ビジュアル表現においても過去作を超えるクオリティを目指しています。

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 また,世界観をより大きく拡張していく作品でもあるため,ストーリーテリングにおいても新しいアプローチを取り,プレイヤーをより深く物語に没入させられるよう挑戦していきたいと考えています。

4Gamer:
 ナラティブについては,TRPGの形式を用いて物語を展開していくと聞きました。具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。

羽中氏:
 今の段階ではネタバレになる話が多いため,詳しくは紹介できませんが,大まかな構成についてお伝えします。

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 本作の世界観のバックボーンには,「三女神計画」と呼ばれる設定があり,過去・現在・未来をそれぞれ象徴する女神が存在します。そして戦いの舞台となるのは,時空が歪み,科学レベルや時間の流れが乱れた亜空間です。
 人類はその亜空間を消去するために遠征軍を派遣しましたが,いずれも全滅し,さらに女神の力に侵蝕されて倒すべき敵へと変貌してしまいました。プレイヤーは最後の遠征軍として亜空間に突入し,歪められた敵と戦いながら,亜空間に存在する異常ポイントを修正していくことになります。

4Gamer:
 なるほど。トレイラーに登場した第一次世界大戦風の軍服や武器も,設定的に納得できますね。

羽中氏:
 そうです。また,プレイヤーは3つの勢力の中から一つを選んで加入できます。それぞれの勢力には異なる戦闘ボーナスがあり,ミッションをこなしていくことで勢力の影響力を高め,ストーリーの展開にも影響を与えられます

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 つまり,本作のストーリーの行く末はあらかじめ定められたものではなく,プレイヤー全員の働きによって導き出される結果になります。これは今回の新作を通じて,ナラティブ面で実現したいチャレンジの一つです。

4Gamer:
 なるほど……! それは挑戦的な発想ですね。

羽中氏:
 そうそう。

4Gamer:
 開発の話に戻ります。本作はUnreal Engine 5で開発されているとのことですが,UnityからUE5に切り替えるにあたって,どのような課題がありましたか。

羽中氏:
 苦労は多かったですね。エンジンを変えるということは,Unityで積み上げてきた知見をゼロから積み直さなければならないということでもあります。これまでUnityでのアセット制作パイプラインは成熟していましたが,UEに移行するにあたっては,UEの手法でUnity時代のアートレンダリング表現を再現しなければなりませんでした。
 ワークフローもUnityとはかなり異なり,開発スタッフに求められる技術力や認識レベルも,自然と高くなりました。

4Gamer:
 それほどの苦労をしてまで,UE5を採用するメリットはどこにあるのでしょうか。

羽中氏:
 表現力のスケールと,シューティングゲームにおける開発効率の向上という点で,UE5には大きなアドバンテージがあると考えています。エンジン自体も優れており,Epicからのサポートも充実しています。

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 また,ポリゴン処理のアルゴリズムやDLSSといったハードウェアレベルのインフラ面でも,UE5のほうが優秀です。AAAクラスのクオリティを目指すのであれば,やはりそういう選択になります

4Gamer:
 近年,UE5を採用した新作ではPC版とスマホ版を同時にリリースするケースも増えています。しかし,スマホでのパフォーマンスという点では,UE5にはまだ課題が多いようにも思えますが……。

羽中氏:
 確かに,スマホでの動作については,まだ満足のいくものではありません。まさに現段階での最重要課題として取り組んでいるところです。
 幸い,すでにUE5でマルチプラットフォーム展開を実現している事例がいくつかあります。いわば先行事例という「巨人の肩」に乗る形で,その経験を参考にしながら進められるので,2年前と比べるとその壁はかなり低くなっています。

4Gamer:
 なるほど。では,ビジュアル面についても聞かせてください。今回公開されたトレイラーを見ると,リアルな戦場の雰囲気とアニメ調のキャラクターが同居しているのが印象的でした。開発者の目線から,本作で実現したいビジュアルスタイルを教えてください。

羽中氏:
 実は,現在公開しているものは,私たちが目指している完成形の30%程度にすぎません。シューティングゲームとして求められる臨場感を実現しつつ,プレイヤーから指摘されそうな課題を克服していく必要があります。たとえば,今はアニメ調のビジュアルとフォトリアルな環境が乖離し,なじみが悪いといった課題に積極的に取り組んでいます。

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 カラーパレット,ライティング,マテリアル,エフェクトといったあらゆる要素で検討を重ね,より良い表現を追求しています。最終的には,キャラクターと背景が自然になじみ,なおかつ私たち独自の視覚言語として成立する状態を目指しています。

 実はこれは,「ドルフロ2」のときと似た状況なんですよ。当時は,NPRカートゥーンレンダリングのような平面的な描写が主流でしたが,私たちはNPRとPBRを組み合わせた,より実写寄りのハイブリッドスタイルを追求したいと考えていました。当初は疑問の声もありましたが,試行錯誤を重ねた結果,最終的には私たちが目指す表現に近づけられたと考えています。

 ただ,「ドルフロ2」はSRPGなのでカメラアングルが比較的固定されており,限られた空間の中でビジュアルスタイルを制御しやすい面がありました。「リコーラップス:F」はフリーカメラ視点になるため,そうした制約がないなかでも,「ドルフロ2」と同じように統一感があり,なおかつ個性の強いビジュアルを実現したいと思っています。

※NPRは非写実的レンダリング(Non-Photorealistic Rendering)の略で,写真のようなリアルさを目指すのではなく,あえてアニメやイラスト,マンガのようなアート表現を追求する3DCG技術だ。一方,PBRは物理ベースレンダリング(Physically Based Rendering)のことで,光の反射や物質の質感を物理法則に基づいてシミュレーションし,リアリティーを再現する3DCG技術だ。

4Gamer:
 リアルな背景とアニメ調のキャラクターを統一するのは,聞くだけでも相当難しそうですね。

羽中氏:
 非常に挑戦的です。ただ,長年の開発を通じてビジュアル面の技術には一定の蓄積があるので,その課題についてはある程度の自信があります。

 私たちが本当に核心的な課題と捉えているのは,ゲームプレイのほうです。本作はシューティングと共闘を組み合わせたゲームプレイになりますが,その奥深さとバリエーションがプレイヤーに受け入れられ,長期にわたって楽しんでもらえるかどうかが重要です。
 コンセプトはゲームプレイ主導のデザインであるため,十分に面白くなければ,私たちがこのタイトルに求めているビジョンは実現できません。

4Gamer:
 紹介テキストを読む限り,脱出型シューティングのような印象も受けましたが,公開されたトレイラーでは「HELLDIVERS」のようなPvE協力ゲームを連想しました。ゲームプレイの詳細を教えていただけますか。

羽中氏:
 脱出型シューティングはどちらかというとRPG寄りですが,厳密に言えばそれとは少し違います。私たちが目指しているのは,ランダムなフィールドで多種多様な敵と戦いながら,仲間との予測不能な連携で体験が広がっていくような,ソーシャルでエンタメ性の高い戦闘です。その意味では,おそらく「HELLDIVERS」に近いと思います。
 大まかな流れも「HELLDIVERS」に近いものになります。プレイヤーはランダムなフィールドに投入され,特定のミッションをこなしながら価値ある物資を確保し,撤退ポイントから脱出する流れです。ただし,本作の位置づけを踏まえ,取得アイテムや戦闘テンポといった面では「HELLDIVERS」と差別化を図ります

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4Gamer:
 なるほど。協力プレイを軸にしたシューティングとして考えると,操作感やコミュニケーションの取り方は,プラットフォームによってかなり変わってきそうです。「ドルフロ」や「リコーラップス」もそうですが,近年の新作はスマホだけでなく,PCやコンソールにも展開されています。
 とくにシューティングは操作感の違いが出やすいジャンルだと思いますが,プラットフォームごとのアプローチや,プレイヤー層の違いについてはどのように考えていますか。

羽中氏:
 これは私たちにとって大きな挑戦であることは間違いありません。ただ,マルチプラットフォームで展開すると決めた以上,異なるユーザー層やニーズに応えていく必要があります。操作性にしてもパフォーマンスにしても,できる限り応えていかなければならないと考えています。

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 私たちが取り組もうとしているのは,キャラクターの仕組みによって差別化を図るというアプローチです。たとえば,操作精度が求められるキャラクターはPCなどのプラットフォームで快適に遊べる一方,そうではないキャラクターはスマホ向きにする,という形です。プレイヤーがそれぞれの環境で,自分に合った遊び方を見つけられるようにしたいと考えています。
 こうすることで,どのプラットフォームのプレイヤーも,自分に合ったスタイルでゲームを楽しめるはずです。

4Gamer:
 つまり,キャラクターを切り替えることで,プラットフォームを問わず異なる体験が得られるということですね。

羽中氏:
 そうです。それはトレイラーでもお見せしたとおりで,4つのクラスを用意しており,それぞれ異なる体験を得られます。


ストラテジーからシューティングへ。ジャンル転換で見えた課題


4Gamer:
 同じ三人称視点のシューティングでも,「リコーラップス:F」「ドールズフロントライン:ブルーコブナント」(以下,ブルーコブナント)は,どのような違いがあるのでしょうか。

羽中氏:
 両作品の違いは非常に大きく,同じ三人称視点シューティングとはいえ,戦闘体験の方向性は明確に線引きしています。

 「リコーラップス:F」は実験的なタイトルとして位置づけており,ビジュアルスタイルからゲームプレイ,ナラティブに至るまで,さまざまなブレイクスルーを目指しています。その分,時間もかかり,実際に体験できるのは2028年以降になる見込みです。

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 一方,「ブルーコブナント」は,プレイヤーにとってなじみ深い「ドルフロ」の世界観,ストーリー,キャラクターを踏襲し,できるだけ早く体験してもらうことを意識しています。
 本作では,プレイヤーがお気に入りの戦術人形を自ら操作し,広大なマップで敵と戦ったり,ほかのプレイヤーと協力したりできます。まずは,そうした基本的なプレイを年内に体験してもらえるよう,開発を進めています。

4Gamer:
 なるほど。本作は東南アジアでベータテストとして展開されている「Girls' Frontline: Fire Control」から発展した作品と伺っていますが,「Fire Control」からの具体的な変更点を教えてください。

Girls' Frontline: Fire Control
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羽中氏:
 最大の変更点は,「Fire Control」が5対5の対戦ゲームだったのに対し,現在はPvE協力ゲームへと転換した点です。

 「Fire Control」は私たちにとって初のシューティングゲームであり,そこから技術面,チームマネジメント,アップデートサイクルの運用において,膨大な経験を得ることができました。同時にさまざまなトラブルも経験し,シューティングゲームの開発がいかに難度の高い分野であるかを痛感しました。

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 その経験をもとに,大幅な改善を進めてきました。プレイヤーからいただいたフィードバックをもとに,ボーンアニメーション,テクスチャ,エフェクトなどのクオリティを引き上げ,表現力を強化しました。
 また,一部のスキルについて,物語上そのキャラクターに合っていないという指摘もありました。そこで開発チームは社内のIP部門と連携し,ゲームプレイの都合だけでスキルを無理に割り当てるのではなく,そのキャラクターのイメージに合った形で作り込むことを徹底しました。

 さらに,全体的なビジュアルを刷新し,マップのスケールを拡大し,敵の数も増やすことができました。

4Gamer:
 ゲームプレイの方向性については分かりました。一方で,「ドルフロ」というIPといえば,重厚な世界観と,考察しがいのある物語も大きな魅力です。本作では,ストーリーはどのように展開されるのでしょうか。

羽中氏:
 ストーリーについては,過去の「ドルフロ」シリーズで描かれてきた,印象的なキャンペーンの場面を再現することを重視しています。
 これまでの作品では,指揮官が戦術人形を率いて数多くの激戦をくぐりぬけてきましたが,プレイヤーから見ると,その多くは抽象化された平面マップとデフォルメされた2Dグラフィックスで表現されていました。戦場の苛烈さはプレイヤーの想像に委ねられており,実際に体感できるものとは言えませんでした。

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 プレイヤー目線で考えれば,やはりかつての名シーンをリアルな感覚で体験したいはずだと,私たちは考えています。
 そこで今回発表した「ブルーコブナント」では,過去のキャンペーンで描かれたステージや敵,重要な出来事などを,等身大の戦術人形を自分で操作して戦う形で体験できるようにしています。あの名シーンに自分が参加していた,という感覚を味わってもらいたいのです。

4Gamer:
 なるほど。そうした名シーンを再現しようとするのであれば,トレイラーに何度も青い蝶が登場していたことにも,象徴的な意図があるのではないかと感じました。やはり,かつての名シーンの中に入り込むような演出なのでしょうか。

ルニシアは「ドールズフロントライン」に登場する人物で,M4A1のもとになった少女。物語上でも重要な存在だ
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羽中氏:
 その通りです。本作のポイントは,かつての名シーンを現代的な手法で追体験することにあります。ただし,追体験にとどまるだけではありません。同時に,本作独自のメインストーリーもあり,ルニシアに関わる研究の物語が展開されます。
 ルニシアは,グリフィンの戦術人形や指揮官と深くつながっています。そのため,かつての記憶がどのように引き出されるのかという点が,ストーリーの展開軸になります。

4Gamer:
 もともと「ドルフロ」シリーズは銃器の表現に強いこだわりを持つ作品ですが,これまではストラテジーを軸としてきたので,プレイヤーが直接銃撃戦を行うタイプの作品ではありませんでした。
 そういう意味では,「ブルーコブナント」は開発面でも,ユーザー層の受け入れという面でも大きな挑戦になると思います。そのあたりはどのように考えていますか。

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羽中氏:
 開発面については先ほども触れましたが,エンジンの課題やゲームプレイデザインの試行錯誤がありました。これまではストラテジーを開発してきましたが,シューティングゲームはワークフローが大きく異なります。ただ,「Fire Control」などのプロジェクトを通じて経験を積み上げてきました。

 ユーザー層の受け入れという面では,正直,予想よりもずっと好意的な反応でした。「ドルフロ」というシリーズは,もともと美少女と銃器をテーマにしているため,ユーザー層にはシューティングとの親和性が高い人が多いんです。シューティングゲームとして展開することは,むしろプレイヤーの皆さんの期待に合致していると思います。
 私個人の感覚ですが,「どうしてシューティングに変えたのか」ではなく,「ようやくシューティングをやるのか」という反応のほうが多いくらいでした。なので,ジャンルを変えることに対する抵抗は,想定していたよりもずっと小さかったです。むしろシューティングへの移行は,プレイヤーの皆さんの期待に沿ったものだったのだと思います。

4Gamer:
 なるほど。シューティングへの展開も,プレイヤーの期待と重なる部分が大きかったわけですね。一方で,今回発表された2本の新作はいずれも同じ世界観のもとで展開されます。同じIPの作品を作り続けることに対して,不安を感じたことはありませんか。

羽中氏:
 同じシリーズの作品を出し続けているように見えるかもしれませんが,私たちは新作を出すたびに,何かしらの進化を遂げてきたと考えています。
 「ドルフロ」は2DビジュアルのストラテジーRPGでしたし,「ニューラルクラウド」ではオートチェスの要素を入れました。「ドルフロ2」では,いわゆるアメリカ式のストラテジーに近い作りにしています。ゲームプレイも物語も,キャラクターも方向性も,毎回かなり変えていますから,同じことを繰り返しているとは思っていません。

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 また,一つの世界観に実在感や説得力を持たせるには,相当な量のコンテンツが必要になります。木を育てるのと同じで,毎日少しずつ水をやり続け,10年かければ大きく育ちます。100年もあれば,雲に届くような大木にもなれるでしょう。逆にいくらお金を積んでも,1年で苗木を大木にすることはできません。

 3年目の時点で,長期的にIPを育てることが,プレイヤーの皆さんの期待にも私たちの意志にも一致する“両想い”の道だと確信しました。5月2日の10周年記念イベントでも,長い期間にわたって支え続けてくれたプレイヤーがいかに多いかを目の当たりにしました。新作発表にプレイヤーの皆さんが熱狂してくれたことも,このIPが長く生き続ける生命力を持っていることの証だと思っています。
 ビジネス面でも参考になる例はたくさんあります。任天堂の「マリオ」シリーズでは,主人公はずっとマリオですが,新作では常に新しい試みが行われています。「ウォーハンマー」シリーズの歴史も1980年代にまでさかのぼれますが,その過酷な世界観には新しいコンテンツが追加され続けており,プレイヤーはなじみ深い世界観の中で常に新しいものを発見できます。IPへの愛着も自然と高まっていきます。
 私たちも同じような方法でIPを育てていくつもりですし,この方針に十分な自信を持っています。

4Gamer:
 なるほど。では,そうした方針のもとで進められている新作について,現在の開発進捗を教えてください。

羽中氏:
 「ブルーコブナント」については,基盤となるフレームワークはほぼ完成しており,現在はコンテンツの充実に注力しています。プレイヤー向けのテストは2026年中を想定しています。そのときには,できるだけ多くのコンテンツを実際に遊んでもらえるようにしたいですね。

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 「リコーラップス:F」については,現在はまだゲームプレイの検証段階にありますが,シューティングの基盤となる技術的フレームワークは完成しています。先日公開した実機映像が示すように,キャラクターを操作してランダムな環境で敵と戦うというゲームサイクルについては,技術的に実現可能であることを確認済みです。

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 ただ,私たちはありきたりなシューティングゲームを作るだけでは不十分だと考えています。現在の戦闘システムを基盤としつつ,ゲームプレイに深みと広がりを持たせるため,さらに時間をかけて磨き込んでいくつもりです。


虚構と現実が交錯する,不思議な感覚


4Gamer:
 「ドルフロ2」と「ニューラルクラウド」について,現在の運営状況を教えてください。

羽中氏:
 「ニューラルクラウド」はすでにメインストーリーが完結しており,「ドルフロ」のときと同様,プレイヤーの皆さんに引き続き楽しんでいただけるよう運営を続けている状態です。

 「ドルフロ2」は,現在の「ドルフロ」シリーズにおける旗艦タイトルで,中国版はおよそ3年目,グローバル版は2年目を迎えています。ストーリーの進行,新キャラクターの追加,ゲームプレイの実装,いずれもまだ序盤に差し掛かった段階です。
 なお,「ドルフロ2」の開発チームには,ストラテジー開発で豊富な経験を積んだスタッフが在籍しているため,ゲームプレイに関する部分はご安心ください。
 現在は更新ペースを維持しながら,毎年テーマを設けて「ドルフロ2」の世界にふさわしいコンテンツを届け,ストーリーをさらに盛り上げていく予定です。

4Gamer:
 順調に運営されているようですね。

羽中氏:
 サイクルはしっかり安定しています。21日ごとに小規模アップデートを,42日ごとに大規模アップデートを届けており,年間でおよそ18本のアップデートを展開しています。
 キャラクターやストーリーなど,コンテンツの追加はいずれも安定したペースで続けられており,プレイヤーの皆さんから大きな不満もなく,バランスの取れた状態になっています。

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 私たちとしては,「ドルフロ2」のチームが安定した足取りで,この作品ならではのストーリーをしっかり語り続けてくれることを望んでいます。

4Gamer:
 その「ドルフロ2」ですが,新しい夏イベントに加えて,リアルタイム対戦の新モードが追加されると発表されました。詳しく教えていただけますか。


羽中氏:
 この新モードは見下ろし型のシューティングをベースとしており,プレイヤーはマップ内を探索しながら物資を確保し,撤退ポイントから離脱する流れになります。

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 強いて言えば「エスケープ フロム タルコフ」に近いイメージです。もちろん,「タルコフ」をそのまま取り入れるつもりはなく,マップデザイン,敵,展開するストーリーのいずれも,「ドルフロ2」の世界観とキャラクターに基づいた形で作り込んでいます。

4Gamer:
 新モードのほか,今回は「ドルフロ2」と「ビーロボカブタック」(以下,カブタック)とのコラボレーションも発表されました。コラボ相手に「カブタック」を選んだきっかけを教えてください。

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羽中氏:
 「カブタック」は,スタッフの多くにとって子供のころの思い出が詰まった作品で,たいへん愛されています。以前,プレイヤーから「他社はデータでコラボ先を選ぶのに,サンボーンは気分で選ぶ」と言われたこともあります。それは確かに個人の好みによるものなので,当然といえば当然なのですが。
 私たちは適切なタイミングで,童心をくすぐるコンテンツを「ドルフロ2」のビジュアルで届け,何か新しい化学反応を起こせないかと考えました。それが今回のコラボの出発点です。

4Gamer:
 中国で「カブタック」は非常に人気が高いそうですね。ただ,比較的明るく楽しい雰囲気の作品なので,「ドルフロ」の重厚な世界観にどうなじませるかという部分が課題になりそうですが,いかがでしょうか。

羽中氏:
 そもそも「ドルフロ2」は,重くシリアスなだけの作品ではなく,軽めのユーモラスな要素もそれなりに含まれています。コラボや衣装といったコンテンツは,メインストーリーのように厳密に見られるものではなく,楽しく軽いものだと考えています。
 プレイヤーの皆さんもそういうものだと理解してくださっているので,ギャップから生じる違和感を心配する必要はないと思っています。こうした要素は,重厚なメインストーリーとのあいだにクッションのように機能し,息抜きのスペースを提供してくれます。

4Gamer:
 「ドルフロ」は,独自性の強いIPだと思いますが,近年のサービス型ゲーム市場は大きく変化しており,プレイヤーの好みも多様化しています。そうしたなかで,「ドルフロ」のようなミリタリーテイストの作品の存在感は,以前と比べてどのように変化していると見ていますか。

羽中氏:
 「ドルフロ」,あるいは私たちのIPスタイルは,非常に強い独自性を持っています。アニメ調のタイトルは多く,ハードコアなミリタリーゲームも多い。ただ,アニメ調とミリタリーを高いレベルで組み合わせているタイトルとなると,ほんの一握りしかありませんし,それを続けている会社もほとんどありません。

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 さらに,私たちはアニメ調×ミリタリーというスタイルの先駆けでもあります。この手のゲームを遊びたい場合,まず思い浮かぶのはサンボーンだと思っています。
 ですから,シェアが失われることや,プレイヤーに思い出してもらえないことを心配するよりも,私たちが今手がけているゲームがプレイヤーの期待にきちんと応えられるか,そしてその期待を超えられるかが重要だと考えています。

4Gamer:
 確かに,美少女と銃器のゲームといえば「ドルフロ」ですね。美少女の話のついでに気になるのですが,戦術人形の人気キャラクターや傾向に,地域差はありますか。プレイヤーの好みは地域によって異なると思います。

羽中氏:
 意外なことに,それほど大きな差はありません。「ドルフロ」はストーリーの方向性がはっきりしているので,メインストーリーへの関わりが深いキャラクターは,どの地域でも人気が高いです。

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 ただ,メインストーリーへの関わりが比較的薄いキャラクターについては,地域差が出ることがあります。
 全体的に言えば,HK416はどの地域でも非常に人気が高く,皆さんクルカイが好きだという点では一致していますね。

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 また,地域ごとに,自国の銃器に由来するキャラクターへの愛着が出る傾向もあります。たとえば北米のプレイヤーにはM200やスプリングフィールドが好まれ,日本では一〇〇式(百式短機関銃),韓国では韓国の銃器に由来するキャラクター,中国では95式が支持されています。銃器そのものへのなじみや知名度が,キャラクターの好みにも影響しているようです。

4Gamer:
 なるほど。銃器へのなじみがキャラクター人気にも影響するというのは面白いですね。そこから少し話を広げると,「ドルフロ」は美少女キャラクターのゲームであると同時に,銃器や軍事技術といった現実の要素を強く反映したSF作品でもあります。
 近年はAI技術の発展やドローンの実戦投入,パンデミックなど,現実のほうがSFの描写に近づいたり,ときには追い越してしまったりするような出来事も起きています。そうした現実の変化を,創作のモチーフとして意識したことはありますか。

羽中氏:
 私たちが書いたストーリーは,そうした出来事のいくつかよりも前に書かれているんです。SFというのはもともと,人類の科学技術が発展していく先の未来を想像するもので,想像のほうが先行し,現実が後からゆっくり追いついてくる形です。
 むしろ感慨深いのは,逆のことが起きているように感じることです。AIは近年になって急速に発展しましたが,私たちが人形AIの物語を書き始めたのは2010年代です。当時思い描いていた知能技術の発展が,こんなに早く現実になるとは思っていませんでした。物語の中では2050年代に初めて登場するはずの技術が,2020年代にはもう現実のものになっています。虚構と現実が交差するような,不思議な感慨があります

4Gamer:
 そういえば「ドルフロ」の世界観では,ストーリーの発端とされる「北蘭島事件」が2030年に起きたという設定なんですよね。今は2026年で,その事件まであと4年です。これもまた,虚構と現実が交差しようとしているようにも感じます。

羽中氏:
 確かに(笑)。

4Gamer:
 そうした今の状況のなかで,10年前と比べて現実世界への見方に変化はありますか。

羽中氏:
 ストーリーを書いていた当時は,対立と緊張感を生み出すための背景としてさまざまな設定を考えていました。当時はまだ経済が上向きの時代でしたし,フィクションはあくまでフィクションで,現実がそんな方向に進むはずはないと,どこか他人事のように捉えていた気がします。
 しかし,今では状況が大きく変わりました。北蘭島事件のような具体的な出来事はまだ起きていませんが,世界の状況はストーリーを書き始めた頃と比べて,一触即発の雰囲気になっています。衝突も増え続けており,物騒な空気が漂っています。
 あくまでも論理的な推論から世界の行方を想像していただけなのに,現実がその方向に進み始めているように見えると,信じられないような気持ちになります。

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 プレイヤーの皆さんからもよく「ドルフロがまた何かを予言したぞ」と言われますが,それは予言ではなく,ある程度の必然だと思っています。たまたま論理的に推測していた結果が現実になっただけです。
 虚構と現実の間に何らかの呼応があるように見えるのは,あくまで社会の流れから必然的に現れてくる傾向が,重なって見えているに過ぎないのだと思います。

4Gamer:
 現実世界もそうですが,この10年を経てサンボーンという会社も,同人サークル時代のMICA Teamから大きく変化してきました。以前と比べて変わったこと,そして変えてはいけないと考えていることはありますか。

羽中氏:
 「術」「道」の二つに分けて考えると,整理しやすいかもしれません。

 「術」とは変わった部分,つまりゲーム開発の手法や熟練度です。経験を重ね,複数のタイトルを手がけた結果,開発の各段階で起こり得る問題を,ある程度予測できるようになりました。リソース配分,チームマネジメント,計画の立案と実行において,以前よりも余裕を持って臨めるようになっています。よく分からない問題が起きても,慌てることは少なくなりました。
 そして,日々の仕事も常に変化しています。ゲーム業界の競争は非常に激しいので,私たちはいつも高い緊張感を持って仕事に取り組んでいます。そうした環境のなかで,この10年間に成長を続けてきました。

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 一方,「道」とは変わらない部分,つまりゲームを作るうえで,私たちが本当に求めているものです。
 一つには,長期にわたってプレイヤーに寄り添い,共に成長するIPを作り続けるという会社の戦略があります。もう一つには,実在感にあふれ,心から憧れられるような世界を作りたいという望みがあります。これは非常にやりがいがあり,誇りに思えることです。この思いは,この10年間ずっと変わっていませんし,次の10年も変わらないと信じています。

4Gamer:
 今やサンボーンは,グローバルでタイトルを展開できるほど大きな会社になりました。グローバル市場における今後の展望を聞かせてください。

羽中氏:
 今後については,グローバルにおけるパブリッシングを,これまで以上に確実なものにしたいと考えています。以前もグローバル展開は実現できましたが,地域によってリリースのタイミングにズレがあったり,バージョン内容に違いが生じたりすることがありました。
 これから新作を展開する際には,全世界で同じバージョンを同時にリリースし,すべての地域のプレイヤーに同じ体験を届け,一貫したサービスを提供できる体制を整えていきたいと考えています。

4Gamer:
 ゲームのほか,海外でコンサートやファンフェスタのような大型オフラインイベントを開催する予定はありますか。

羽中氏:
 今年は,日本と韓国で大型オフラインイベントを計画しています。公開できる段階になれば,詳細をお知らせします。

4Gamer:
 最後に,日本のプレイヤーへのメッセージをお願いします。

羽中氏:
 長きにわたってご支持いただき,本当にありがとうございます。「ドルフロ」のストーリーを,これからもより楽しんでいただけるよう願っています。
 そして,私たちの新作にもぜひ注目してください。また違った形で,皆さんに唯一無二のストーリーと,新しいゲーム体験をお届けします。

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4Gamer:
 ありがとうございました。

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