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  • Bethesda Softworks
  • 発売日:2025/04/23
  • 価格:通常版:6930円(税込)
    デラックス版:7980円(税込)
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Access Accepted第824回:祝「Oblivion Remastered」発売。「たまねぎ」について考える
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印刷2025/04/28 12:00

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Access Accepted第824回:祝「Oblivion Remastered」発売。「たまねぎ」について考える

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 Bethesda Softworksが「The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered」を4月23日に発表し,同日にリリースした。2006年にリリースされたオリジナル版で,ファンから最も愛されて最も嫌われたキャラクターは,その独特の髪型から“たまねぎ” とも呼ばれる「Adoring Fan」(熱狂的なファン)だ。リマスター版でも新しい姿で登場する彼は,いったいどのような存在なのだろうか。


19年ぶりにリリースされた名作RPGのリマスター版


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 2006年にリリースされた「The Elder Scrolls IV: Oblivion」(以下,Oblivion)は,9つの主要都市と40以上の村や宿場,200を超えるダンジョンなどがある広大なマップを自由に冒険できるBethesda Softworksの人気RPGシリーズ第4弾だ。

 発売当初はバグも多く,当時としては珍しい高額のデジタルアイテムが批判の対象になったものの,発売から1か月で170万本,現在までに300万本というヒットになり,多くの賞を受賞した。

 Oblivion が発売されたのはPlayStation 2からPlayStation 3への移行期であり,「PCゲームは死んだ」などと言われていたころだ。「おいでよ どうぶつの森」「マリオカート DS」「ワンダと巨像」「大神」「モンスターハンター 2」「龍が如く」など,誰でも知るような日本産ゲームがリリースされた時期で,PCゲーム市場はMMORPGやオンラインFPSに傾倒していた。

 PCゲームの専門情報サイトだった4Gamerでは,話題の家庭用ゲーム群には目もくれず,「実録Oblivionプレイ日記: なんですぐ怒るの?」という,全12回の連載を展開。PC版は公式に日本語化されておらず,パッケージの輸入販売でしか買えないという環境だったが,ゲームの知名度アップに少しは貢献できていたのではだろうか。

 2008年にゼニマックス・アジアが設立され,日本でも大絶賛された「The Elder Scrolls V: Skyrim」が2011年,「エルダー・スクロールズ・オンライン」が2014年に登場。さらにはE3 2018では「The Elder Scrolls VI」の開発もアナウンスされている。

 そして前回の当連載「第823回:10年を超える開発期間を経た「Skyrim」の大型MOD「Skyblivion」の行方」でも取り上げたように,それまで何度もウワサされていた「The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered」(以下,Oblivion Remastered)が,4月23日に正式発表され,同日に販売が始まった。

 リマスター版とは銘打たれているものの,ゲームエンジンが旧来の「Gamebryo Engine」や「Creation Engine」ではなく,「Unreal Engine 5」になっており,キャラクターの成長やレベルアップのシステム,戦闘やユーザーインタフェース,アニメーションなども現代的に改良が行われたことで,リメイクという印象に近い。公式に日本語化されており,移動の苦労を軽減するスプリンティング機能が用意されているのは,古参ファンにもうれしいところだろう。

ユリエル・セプティム七世皇帝の顔も,19年の間にかなり進化しているが,「そなたが夢に出てきた……」などと言うので,いっそのこと悪夢に登場しそうなプレイヤーキャラクターにしてしまってもいいかもしれない
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語り継がれてきた“たまねぎ”の謎


 そんな「Oblivion」は名作中の名作と言われているが,さまざまなことができるオープンワールドゲームなだけに,その理由はプレイした人によって千差万別だ。

 ちなみに,2007年にドイツのライプチヒで開催された「GCDC」(Games Convention Developers Conference)で,「Oblivion」のリードデザイナーだったケン・ロルストン(Ken Rolston)氏は,「世界感を細かく説明するのではなく,その世界の在り方を印象付けることによって,プレイヤーがイマジネーションを膨らませられる」と話している。

 ロルストン氏ら開発チームが意識したのかどうかは定かではないが,そんな「Oblivion」の世界の広さを感じられたのが,独特な髪型から“たまねぎ”とも呼ばれる「Adoring Fan」(熱狂的なファン)の存在だ。
 釣り目が多いウッドエルフの平民出身であり,緑色のシャツと深緑のパンツといういで立ちで,かなりインパクトのある見た目をしている。腰にはダガーを携帯しているが使うことはない。

 シロディールのアリーナでクエストを完了すると,どこからともなく走ってくる“たまねぎ”は,プレイヤーキャラクターの大ファンだと熱狂的に語りかけ,ついて行ってもよいかと尋ねてくるストーカー気質の強いファンボーイというキャラだ。多くのプレイヤーにとっては鬱陶しい存在だったと思うが,魔法の実験台として崖から突き落とすミーム映像が流行するなど,ゲーマーたちに最も愛され,最も嫌われたキャラクターになった。

「Oblivion」では最も愛され嫌われたNPCの“たまねぎ”こと「Adoring Fan」。牢屋に閉じ込めて永遠に待たせるという方法もあったが……
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 しかし,“たまねぎ”の用途(?)はほとんどない。同行させても戦闘が始まると逃げ出して隠れてしまうし,誤って敵に向かって走り出し倒されてしまうこともある。
 ダンジョンでは松明を灯してしまうのでステルス系のプレイスタイルにはあわない。
 また,「Skyrim」には登場しなかったが,「Starfield」ではプレイヤーキャラクターのバックグラウンドの選択によって“たまねぎ”というほどの髪型ではなくなっているものの,同じ声優による「熱心なファン」が登場し,クルーメンバーにもなる。

 そんな“たまねぎ”は,もちろん「Oblivion Remastered」にもカムバックする。少し細身で浅黒くなった姿はかなりウッドエルフに近くなった印象だが,プレイヤーキャラクターのストーカーとなるのは同じだ。この“たまねぎ”に関しては,以前からさまざまな考察が行われている。


ウッドエルフなのに!


 冒険に同行させても名を名乗ることもない“たまねぎ”は,タムリエル大陸ではシロディールの南西,エルスウェアの西部にある海沿いの森林地帯ヴァレンウッドを故郷とするボスマー(ウッドエルフ)に属する種族だ。

 The Elder Scrollsシリーズではエルフはいくつかの種族に細分化されており,アルトマー(ハイエルフ),ダンマー(ダークエルフ),オーシマー(オーク),マオルマー(シーエルフ)などが存在する。そのなかでも自然との共生を尊んできたウッドエルフなのに,“たまねぎ”は都会で暮らして格闘技の観戦に熱中していたという矛盾がある。

 しかも“たまねぎ”の口癖の1つに,「おおアズラ様!」(By Azura, by Azura, by Azura!)というものがある。アズラはデイドラ十六神の一人であり,ダークエルフの守護神とされているのに,なぜか“たまねぎ”は信仰を寄せているようだ。シロディールには帰るべき家さえなさそうだが,ストーカー行為の裏には,彼のそれなりに複雑な人生や宗教観も見え隠れする。

「Oblivion Remastered」では,もはやリマスターではなくリメイクされてしまった“たまねぎ
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「Skyrim」のシセロと同人物!?


 「Skyrim」では,道化師の風貌をした滑稽なふるまいをする“シセロ”と出会い,そこから暗殺者ギルドの“闇の一党に関するクエストが始まる。シセロの身辺を探るにあたって,彼が残した5冊の日記を収集でき,それを読むと彼が精神的に壊れていく様子が分かるが,第1巻の末尾には,以下のような意味深な記述がある。

 「アリーナの依頼を完了した。最終的に,有名人に惚れ込んだファンを装うことに決め,グランドチャンピオンの好意をすぐに手に入れた。傲慢な愚か者を大森林に護衛しながら,喉を切り裂き,その死体を熊たちに残していった」

 アリーナとチャンピオン,そして「Starstruck Fan」(有名人に惚れ込んだファン)という描写が“たまねぎ”を連想させると多くのファンに言われていたが,「Oblivion」と「Skyrim」には時代的に190年ほどの開きがある。
 The Elder Scrollsシリーズのエルフ族は200年ほど生きるとされているが,シセロは寿命が短いインペリアルに属しており,この2人に関連性はないというのが一般的な見方だ

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“たまねぎ”不滅説


 そもそも“たまねぎ”の設定そのものが不気味だ。「Oblivion」のNPCでは珍しく日常ルーチンどころか帰るべき家さえ存在しない。冒険の途中で同行を断ると,山であろうが谷であろうが,まさに一直線でシロディールのアリーナ正門がある方向に驚異的なスピードで走り去っていく。

 もちろん,街角でプレイヤーキャラクターを見つけると再び近寄ってきてストーキング行為を続けるのだが,あっさりと敵にやられてしまったり,「飛び込み岩」(Dive Rock)と呼ばれる崖から突き落とされて落命したりしても,ゲーム時間の3日間が経過すると戻ってきては,いつものように振舞うのでウザったい。この“たまねぎ”をMODで美形にしてしまおうという人もいれば,バグを探して“たまねぎ”を永遠に葬り去ろうとしたりしたゲーマーもいた。

 だが,そもそも命を落としても別のファンが登場するのではなく,同じ“たまねぎ”が再登場するのはなぜなのだろうか? “たまねぎは,ひょっとしたらThe Elder Scrollsの世界観では不滅な存在なのかもしれない

 こうした議論が生まれた背景には,緻密に構築された作品の脚本と世界観があるのは間違いない。制作側が“たまねぎ”のようなブラックユーモアを狙って作っただけのNPCに,意図せざる設定ミスがいくつか重なった結果,プレイヤーの間でさまざまな深読みや新たな解釈が生じてしまった可能性も考えられる。

 しかしこれらは,「説明ではなく印象」というロルストン氏のゲームデザインの賜物でもあり,そうした意味で“たまねぎ”は「Oblivion」というゲームの世界に深みを与えるのに一役買っていると言えるだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。


※次回の更新は,2025年5月12日を予定しています
  • 関連タイトル:

    The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered

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