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【島国大和】デベロッパとパブリッシャの理想的な関係とは? 相手の仕事領域と寝袋の中には,あまり踏み込まないで……!
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印刷2026/06/19 07:00

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【島国大和】デベロッパとパブリッシャの理想的な関係とは? 相手の仕事領域と寝袋の中には,あまり踏み込まないで……!

島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者

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島国大和のド畜生 出張所

ブログ:http://dochikushow.blog3.fc2.com/


 はいお久しぶりの島国大和です。
 開発してますかー!

 今回は開発会社(デベロッパ)じゃなくて販売会社(パブリッシャ)メインのお話をしようかと。

 開発と販売を別々の会社が担当することもあれば,同じ会社の場合もありますし,仕事の領域も,タイトルによってまちまちなので,外から見ていると違いが分かりづらいかもしれません。

 一応自分は開発だけでなく,パブリッシュの経験もありますが,実際のところは目の前のタスクとバグをどう処理するかに追われ続けていましたし,偉い人の言うことは聞いておこう以上の感想を持っていませんでした。

 なので,これを機会に,ゲームのパブリッシャとはなんぞや? 何をやってるの? なぜ必要? といったところをまとめてみたいと思います。

 ではパブリッシャのお話いってみましょ!


パブリッシャの役割


 一般的には,ゲームを世に送り出すための「プロデュース」と「ビジネス」全般を担当する,座組上そういう立場の会社などをパブリッシャと呼びます。

 自分が根っからの開発者なので,開発者視点の書き方になりますが,パブリッシャの仕事内容を思いつくまま列挙してみたいと思います。

 細分化すると,以下のような感じでしょうか。

●資金調達と管理
 開発費の出資や予算管理が,パブリッシャ最重要のお仕事ですね。開発からすると「お金を集めてくれてありがとう!」「プロジェクトにめどをつけてくれてありがとうゴザイマス!」というパートで,感謝しかありません。

 こちとら,ダメージ計算とか経験値計算とか,果てしなく続く数字との格闘には慣れていますが,お金には縁がないのでよくわかりません。

●販売と流通
 パッケージ版の店舗への卸売や,デジタルストア(SteamやPS Store,App Store,Google Playなど)での配信手続き,価格設定など。

 昔はパッケージ版のみでしたから,このあたりの仕事は,フツーの素人開発者にはたどり着けない,特権階級に見えました。ですがデジタルストアでPCやスマホ向けのゲームを販売することは,それほどハードルが高くありません。自分で作って売ろうと思ったら,必要なのは開発スキルだけ。

 私も仕事じゃなく趣味で作ったアプリをApp StoreやGoogle Playで公開したことがありますが,自分で全部やれる程度の難度でした。

 とはいえ,デジタルストアにも面倒くさいところはあります。各ストアのレギュレーションは,最初にDLされるファイルサイズや,サムネイル画像の加工禁止など,なかなか細かいんです。

 この前までセーフだったのに今度はアウトか! みたいなこともありますし,ストアのレギュレーションが途中で変わり,工数だけ増えて利益はそのまま,みたいなのも地味に疲れます。

 アイテム課金などの設定にも結構な面倒さがあり,また海外版をリリースしようとすると,その地域のレギュレーションに合わせる必要も出てきて,作業量が跳ね上がります。

 それでもパッケージ販売だけだった時代のことを考えれば,少しの手間で多くの販路を得られるようになったので,基本的には歓迎すべきなのだと思います。

 こういったお仕事は,お金に直接かかわるところなので,パブリッシャがやるのが普通っぽい気もしますが,“そういうのは開発が全部やってね”,という契約も割と見かけますね。

 おのれ面倒くさい。

●マーケティング
 CM,Web広告,イベント出展などを通じた宣伝活動などです。

 パブリッシャは開発成果物の権利を持つ場合が多いので,利益を最大化するために,マーケティングも行う場合が多いです。お金を集める,ゲームを作る,それを売る,売り上げを最大化するには宣伝だ! といった感じですね。

 主なところではテレビCMにWeb広告,ストア内広告などです。昔のガラケー全盛期の頃は,モバゲーとかGREEなどのプラットフォーム内広告の効果が絶大でした。ゲームが出した利益の何割はプラットフォーム広告にぶち込むといったような,プラットフォーム内で利益がぐるぐる回るような状況もあったり。

 今のスマホゲームでも,プラットフォーム内広告とWeb広告の出稿は結構なウェイトを占めています。こういったところを多くのデータや過去の知見から判断するのが,パブリッシャがやるべき仕事と言えそうです。

 そうならない場合も多いんですけど。

●法務
 はい来た法務! 自分は超苦手!

 ゲームの販売には,前述したストアに絡むもの以外にも,多くのレギュレーションが存在します。

 こういう商売しちゃいけません,こういう表現はダメです,この仕様は他社の特許に抵触します,こういった絵は他社の著作権に抵触します……といったルールをクリアしているか確認し,必要があれば開発現場に修正指示をする。あるいは,そういった件で訴えられたとき,和解するか争うかといった方針を決める。なかなかの大仕事です。

 私は最近法務に関わる仕事がないので幸せですが,AIとかでだいぶ楽になっていたりするんでしょうか。

 開発視点では,資料を作ってパブリッシャの法務部に丸投げしたら,ここを直せリストが返ってきて,それに従って直したらおしまい,といった楽なケースもあります。

 しかし大変なときは,何度もキャッチボールと大量の資料作成を繰り返すことになります。パブリッシャの内製開発だと,「これは特許取れそうだから取ろう,ついては書類を用意しなさい」みたいなことも。

 特許に抵触しないゲーム作りは大変です。カメラワークのロジック,レベルアップ時に体力ゲージの上限を超えて回復する仕組み,ローディング中のミニゲーム,バーチャルパッド,敵キャラクターがプレイヤーキャラの動作を記憶し,プレイヤーに対する態度を変化させるシステムなどなど。失効した特許もありますが,まだ生きている特許もあります。

 個人開発では,もーぜったい手を出したくない面倒くささ。
 それゆえに,個人開発や小規模開発では,「君子危うきに近寄らず」「なるべく問題にならないように頑張ろう」スタンスになりがちです。

 ありがとうパブリッシャの法務の人! という感じで,自分はなるべく関わりたくないエリアです。

●ローカライズ
 世界中にこのゲームを売りましょう! となった時に,各国のレーティング審査(日本のCEROレーティングにあたるもの)や,多言語翻訳の管理といったことをパブリッシャが受け持つことが多いです。

 デベロッパにはそこまでの対応ができないからなのかは分かりませんが,某パブリッシャでローカライズのお仕事をちょっとやったとき,「ここを直してくれリスト」の莫大な量をみてバックレたくなった記憶がよみがえります。細かいよ! どうでもいいじゃないか! エクスクラメーションの後ろにスペースを入れないとダメとか!

※編注:4Gamerでもスペースを入れるルールなので入れました


●プロデュース,ディレクション
 パブリッシャの仕事と決まっているわけではないですが,お金を集めてきた都合上,こういうゲームを作るべき,イラストはこの先生にお願いしよう,この声優さんに頼みましょう,ということをパブリッシャが受け持つことは多いです。

 だいたいプロデュースをパブリッシャが,ディレクションをデベロッパがやる,といった区分けになりがちですが,力関係によって業務と責任の分担はよく変わります。

 強いパブリッシャは,「こういうのを作れ。これくらいの予算で。あとちょっとディスカウントしろ,デベロッパなんかいくらでもあるんだ!」という態度が取れます。
 一方で強いデベロッパは,諸々の権限を全部ひっくるめて担当する前提で「これを作るから,開発費ちょーだい」というスタンスをとれます。カッコイイ。

 PC用に開発されたインディーゲームのヒット作を家庭用ゲーム機に移植するときや,他国に展開するとき,パブリッシャが変わることがありますが,こういう場合はデベロッパが主導権を握っていたりするのだと思います。

 なので,ケースバイケースなのですが,莫大な予算がかけられているタイトルの場合は,パブリッシャが多くの権限を持つことが多い傾向にはあります。

 いろいろ挙げてみましたが,そんな感じで,ゲーム開発や販売において,パブリッシャが吸収している面倒ごとは結構あります。ありがたいことです。

 知人がインディー開発でセルフパブリッシュに挑戦したら大変過ぎたそうで,「二度とやるもんか」とか言っていました。
 私は趣味でリリースしたスマホゲームでは,高頻度で入るプラットフォームのアップデートの対応にめげて,「こんなの仕事じゃなきゃやってられぬ」と思いました。

 ですが,ひどいパブリッシャと揉めたとかの話題も,最近よくネットで見かけますね。なぜ揉めごとが発生するんでしょうか。


揉める理由は,リスクと権限と取り分の線引き


 揉めごとっぽくなりがちな図式を描いてみると,だいたいこんな感じでしょうかね。

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 最近は違うパターンも多いですが,まずはこちらの話から。

 資本主義の世界ではお金がものをいうので,その上流で,多くの流量を持っている人(出資者)ほど強い意見を言えます。

 出資者が大金を提供する目的は,それをさらに大きな利益に変えることです。失敗したらそのお金がパーなので,売れないものを作られては困ります。

 このキャラでこういう内容で,こういうものを作れ。仕様書は全部チェックします,ここリテイクです,これは仕様変更です。というようなオーダーを出す権利権限は当たり前にあります。

 ところがどっこい,出資者の“強さ”には限界があります。それが出資額です。

 カツ丼の予算で,素敵なフルコース料理は食べられません。ラーメンの予算で,海鮮尽くしも注文できません。ゲームも,低予算でAAAゲームは作れません。ロハで新機能は追加できません。

 「そんなの当たり前」って思うでしょ? でも,誰でも分かり切っていることが,なぜやら揉めごとの種になりがちです。

 たとえば,パブリッシャとデベロッパでゲームを開発していると,こんなことに遭遇します。

a.パブリッシャがゲーム開発に詳しくない
b.パブリッシャの窓口担当者が複数いて,担当者間で連携が取れていない
c.予算に関心のない人が担当者に混じっている
d.これまでの経緯に関心のない人が混じってる


 こういう座組だと「無茶な指示」「指示の手のひら返し」が発生します。

 「やれというからやったのに,今それをやめろと言ったか?」「開発コスト何日分も溶かしたけど,それは無意味か?」「クライアントだからと要望を聞いていたが,バラバラで整合性がないぞ」「フィックスしたと言ったが,あれは嘘だ」みたいな騒ぎに。

 そんなことがあるのか! 割とあるから驚きませんよ。

 ゆえに,「意見はそれぞれ好きに言っていい,やるかやらないかはディレクターが決める。予算の責任も持つ」という形がベストだと思っているんですけど。誰がディレクターかよく分からないプロジェクトだって存在します。

 そんなことがあるのか! あってびっくりしたんですよ。

 で,こういうのは,程度の差こそあっても,ある意味で避けられないことです。そういう荒波をうまく泳いでこそ,ゲーム開発者としてはいっぱしなわけです。私は時々おぼれそうになりますが。

 なので,無茶苦茶な朝令暮改だって,みんな文句は言いません。予算の範囲でやってるうちは。予算を超えた要望がゴリおしされたあたりから,ギクシャクするわけです。

 パブリッシャの成果確認者が,いくらの予算でやってるのかを知らないまま,「ここのクオリティをもっと上げてください」とか言い出します。

 「思ったよりクオリティが上がらないので,偉い人がチェックする工程を増やしました!」みたいなこともよくありますが,手を動かす人を増やさないと(≒人件費を増やさないと),大してクオリティは上がらないんですよ。

 出資額以上のコストをデベロッパに押し付けるような形になると,問題が大きくなりがちです。

 自社開発なら好きにやればいいんですよ,無理をさせたら残業代に反映されるし,無茶をやって失敗すれば利益を棄損する。そのリスクを直接背負ってますから。

 パブリッシャとデベロッパに分かれている時に,内製と同じような無茶をすると,誰かがそのワリを食うんですよ。利益は変わらないのにリスクだけ増えていく。

 予算以上の要求はしちゃダメですよ。すりつぶされる現場の寝袋に入っているとき,ことさらにそう思います。最近はそういう仕事もなくなりましたが。

 もちろん逆もあります。デベロッパが強いパターン。

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 同じような図ですけど。ヒエラルキーが違う。

 最近よく見かけるのが,インディーゲームとして一発当てた,商品価値の高いタイトルを持っているデベロッパのケースです。パブリッシャが「それをワールドワイドで売りましょう。家庭用ゲーム機向けにリリースしましょう。うちがそのあたり受け持ちますよ……」と,後からやって来るパターン。

 実際小規模開発で,新たなプラットフォームや多言語に対応するのはきっついので,納得のいく%で受け持ってくれるなら,お願いしたほうがお得。やらないよりは利益になるはずなので。デベロッパがIP持ちだと本当に強いですね。

 ですが,このパターンでの揉めごとも発生しているようです。
 契約が一方的だとか,専任のローカライズチームでやりますと言っておいて,ふたを開けたらAI翻訳の雑な仕上がりだったとか。権利譲渡の範囲が広すぎるとか。

 このあたりは要注意なんでしょうが,噂を調べたり,契約書をプロの人に読んでもらうぐらいしか自衛の仕方を思いつきません。

 また,さらに逆というか,デベロッパがパブリッシャを振り回すケースもあります。

 ヒット作をリリースしたインディーメーカーが,複数のパブリッシャと同時に契約交渉を進めて,その中の1社との締結までの間にかなりのタダ働きをさせたとか。パブリッシュ委託だと思っていたら,相見積もりだったということですね。

 発注みたいな振りしてコンペかよ,みたいな話は昔からよく聞きますが。逆パターンもあるとは世の中進みました。

 こう書くと騙し合いのようにも見えますが,実際のところは,悪意からというよりは,誰もが自己利益を最大化しようとした結果じゃないでしょうか。商売ってそういうものなので,仕方がないところもあります。

 次の仕事をちらつかせて,いい条件を引き出そうとすることなんてよくある話です。実際には次の仕事なんてないのに,そう匂わせることも。


まとめ 大事なのは信頼関係とリスペクト!


 ゲームの開発が複雑怪奇化したように,ゲームの販売も複雑怪奇化しています。1人の人間ができることには限界がありますし,チームでやるにしても肥大化せざるを得ません。

 各分野のプロフェッショナルがいて,開発は開発者,パブリッシュはパブリッシャ,モチはモチ屋と,得意分野でお互いに腕を振るうのが幸せだろうなと思います。いえね,本業じゃない分野の細かい説明なんて聞きたくないでしょう,お互いに。

 「そこは任せたからうまくやってくれ,そのかわり俺の領分はうまくやれるよう頑張る!」ぐらいの信頼関係とリスペクト,そして相手の領域に踏み込むときの気づかいが重要ではないかと思います。

 なので,私の領域と寝袋の中にはあんまり踏み込まないでほしいものです。もちろんこちらからもリスペクトを持って,なるべく踏み込みません。やりたくないだけじゃないですよ!

 それでは今回はこの辺で!
 アディオスアミーゴ!
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