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「Ratatan」はなぜ延期になったのか。15〜20人で4ハード10言語を作りきったTVTの開発事例[CEDEC 2026]
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印刷2026/07/29 07:00

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「Ratatan」はなぜ延期になったのか。15〜20人で4ハード10言語を作りきったTVTの開発事例[CEDEC 2026]

 1つの画面に登場するキャラクターとオブジェクトは最大で100体以上。操作キャラクターは8種類,それぞれが引き連れる子分の武器も8種類,ボスは亜種を含めて21体。対応言語は10,展開先はSteamに加えてSwitch 2,PS5,Xbox Series X|Sの4プラットフォーム。これを作りきったチームは,最大でも15〜20人である。無茶が通ったのか? それとも,どこかで無理が出たのか?

 CEDEC 2026の講演「Ratatanができるまで−小規模開発で4ハード10言語開発を達成した開発事例−」は,その問いに真正面から答えた。登壇したのは,TVTの企画チームでディレクターを務める中舎健永氏と,同じく企画チームのプランナーである小谷浩之氏だ。
 中舎氏は関西と福岡のゲーム会社を経てTVTに加わった人物で,代表作に「.hack//G.U.」シリーズや「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」を持つ。
 小谷氏は1965年生まれ,小学校教員からゲーム業界に飛び込み,中小デベロッパでの開発経験を経てソニー・コンピュータエンタテインメントへ入社。「ゲームやろうぜ!」プロジェクトの作品を多数手がけ,還暦を越えた現在もTVTでゲームデザインを担当している。

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登壇した中舎健永氏(上)と小谷浩之氏(下)のプロフィール
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 「Ratatan」PC / Switch 2 / PS5 / XBOX Series X|S)は,PSP用ソフト「パタポン」の精神的続編としてスタートした完全新作で,リズムアクションとローグライクを組み合わせたタイトルである。冒頭で中舎氏は,開発のタイムラインを6つのフェーズに分けて示した。2023年7月までの開発準備期間を経て,同年8〜9月にプレイアブルなモックと動画でKickstarterを実施。中舎氏自身はこのタイミングでチームに参画し,以後ディレクターを務めている。

 そこから約1年のプリプロを挟み,2024年11月にクローズドのα版,2025年3月にβ版,2025年9月にアーリーアクセス版と,おおよそ3か月区切りでROMを上げ続けてきた。そして正式リリースは2026年10月15日。中舎氏は「お気づきの方,あれ? と思う方がいらっしゃると思うんですけども,そうです」と切り出し,発売日が延期になっていることを自ら明かした。その理由は,講演の最後で語られることになる。

開発準備からアーリーアクセスまでの6フェーズと,2026年10月15日という正式リリース予定日を示したスライド
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「お経」から「楽器」へ――リズムコマンドをどう進化させたか


 ゲームコンセプトの解説は小谷氏が担当した。「昨年還暦を迎えまして,ただ今シルバー人材としてTVTでゲームデザイナーをいまだにやらせていただいております」と自己紹介した小谷氏がまず掲げたのは,「新たなリズムコマンドアクションの創出」というテーマだ。リズムの変化とアクション性の導入。この2つが本作の目指したものである。

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 そもそもリズムコマンドアクションとは何か。
 プレイヤーによる4拍分のコマンド入力ターンがあり,続いてユニット――すなわち子分たちによる4拍分の実行ターンが入る。これを1小節ごとに交互に繰り返していく,音楽に合わせたターン制のゲームだ。プレイヤーは部隊を指揮するコマンダーになる。
 ここまでは小谷氏が過去に手がけたリズムコマンドゲーム,講演中に「従来作」と呼ばれた「パタポン」から継承した構造である。

入力ターンと実行ターンを1小節ごとに繰り返す,リズムコマンドの基本構造
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 問題は,その従来作が抱えていた課題のほうだった。4拍のリズムをずっと刻み続ける均一な構造は,覚えやすく安定してはいた。しかし小谷氏は「どうしてもリズムゲームというよりは,お経のように一本調子になりがちだ」と振り返る。「私のほうでリズムゲームと言ってるの,これリズムなのか」という自問は,従来作の企画当初から抱えていたものだという。ゲームの難度もゲーム性も,リズムをキープすることに集中してしまう。SNSでも「リズムが取れなくて遊べなかった」という声を聞いていた。

均一な4拍が一本調子の体験を生み,難度がリズムキープに集中してしまうという従来作の課題
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 そこで「Ratatan」は,均一な4拍から一歩外に出ることを選んだ。用意したのは3つの要素だ。従来作の1音節ボイスに対する2音節ボイス,均一なリズムに対して音を切って差し込む変則リズム(Chop),そして音のイメージ付けによる属性分けである。
 この3つの組み合わせが,新しいリズムコマンドアクションの出発点になった。

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 2音節ボイスは3種類が用意された。軽快で移動系の印象を持つ「ラッタッタ」,重心が低く戦闘系の印象を持つ「ズンタカタン」,跳ねるようなスキル系の印象を持つ「ヤッホイホイ」だ。小谷氏は会場で実際に音を鳴らしながら,「ポン」「パタ」のような単音の1音節ボイスとは違い,2音節に分かれることでリズム的な変化を与えられるようになったと説明した。

3種類の2音節ボイス。それぞれ移動系,戦闘系,スキル系の印象が与えられている
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 この3種のフレーズで基本コマンドが組まれる。「ラッタ・ラッタ・ラッタッタ」が整列コマンドで,PlayStationのコントローラなら□ボタンを3回押すだけで成立する。「ズンタカ・ズンタカ・ズンタカタン」が戦闘コマンドで,こちらは○ボタンを3回。「ヤッホイ・ヤッホイ・ヤッホイホイ」がスキルコマンドで,△ボタンを3回だ。
 いずれも発音がすべて終わる前に次の入力が入り,音の途中が切られる。サンプラーでいうところの「チョップ」であり,これによって1つのコマンドボイスに表情がつく。

音をチョップして構成される3つの基本コマンド。操作はPlayStationのコントローラに準拠する
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 さらに,同じボイスをチョップせずに2つつなげると,別のコマンドに派生する。「ラッタッター・ラッタッター」はジャンプ,「ズンタカタン・ズンタカタン」はガード,「ヤッホイホイ・ヤッホイホイ」はスキルの第2段階だ。
 小谷氏は,命令に対する子分の復唱レスポンスを重ねることで,「ラッタッター・ラッタッター」がジャンプであると体に染み込むように音声を設計したと語る。□,□,□というコマンド入力の方法には何の意味もないが,そこに言葉を置き直すことでコマンドに表情が伝わってくる。小谷氏はこれを「音のキャラクター化」と呼んだ。

 結果として得られたのは,運指のリズムそのものの変化だった。かつては4拍を一本調子で押し続けるだけだったものが,さまざまなリズムの揺らぎを体験できるようになる。「お経を唱えているような状態から,ちょっと楽器を演奏しているような状態に進化した」というのが,小谷氏によるコマンド体系の総括である。

基本コマンドから派生したバリエーション。音を途中で切らずに2つつなげるとジャンプ,ガード,スキル2になる
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 そのうえで本作は,リズムコマンドにアクションを重ねた。プレイヤーが直接操作するRatatan自身も,コマンド入力を終えたあとに移動や回避,ジャンプができる。Ratatanの位置取りによって子分の行動が変わるため,入力を終えたらすぐ次のコマンドに備えてせっせと移動しなければならない。

 戦闘はターン制で,敵もターンを意識して動く。大型モンスターには必ず予兆があり,プレイヤーはそれを見て次のターンの行動を決める。安全な場所に移動して整列コマンドで子分を呼び寄せ回避させるか,危険ゾーンに残ったままギリギリまで攻撃してジャンプで回避するか,自分だけ安全に退避して子分を戦わせ続けるか。この判断を,コマンド入力の2秒ごとにひたすら行い続けることになる。

敵の予兆に対する回避行動の選択肢。安全地帯への移動,ギリギリでのジャンプ回避,子分を残しての退避が示された
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 ただでさえ難しいところにアクションを加えれば,さらに難しくなるのではないか。小谷氏はその疑問を自ら提示したうえで,むしろ遊びやすくできた理由を3点挙げた。

 1つめはゲームオーバー条件だ。従来作との大きな違いとして,本作でゲームオーバーになるのはRatatanが死亡したときのみで,子分は一定時間で復活する。「Ratatanさえ無事であればぶっちゃけOK」という設計は,自分だけ安全な場所に逃げて子分を何度でも死なせる究極の逃げ戦法さえ許容してしまう。ネガティブな側面もあり悩んだというが,「今は格好悪いけど,次はもっとかっけえプレイをして勝ってやるんだ」という,へっぽこな戦いの過程で学ぶ上達スタイルを認めることが,プレイヤーのスキルレベルの差を吸収するクッションになったと小谷氏は言う。

 2つめはワンボタンコマンドであること。ボタンの押し替えを意識せずにリズムを刻めるため,リズムに没頭しながら判断と実行を行うことが従来作より容易になった。
 3つめは,コマンドが3拍目で成立する設計をあえて選んだことだ。4拍目を打たずに次の行動へ移れるこの1拍分の余裕が,アクションパートにおけるプレイヤーの心の余裕を生む。加えて,ゲーム性の比重をアクション側に寄せたことで,リズム判定自体も従来作に比べて大きく緩和できたという。

遊びやすさを支える仕組みとして示された,ゲームオーバー条件とコマンド設計
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 小谷氏は自身のパートを,「Ratatanは試行錯誤の末に生まれた,まだ少し粗削りなタイトル」と位置づけて締めくくった。「その根っこには,完成された名作であるパタポンへの挑戦とリスペクトがありました。パタポンが粗削りなところから進化していったように,Ratatanもこれからもっと成長していくつもりでおります」と話していた。


しくじり先生――物量,10言語,ユーザーの声,そして4ハード


 後半は再び中舎氏が登壇し,開発中に起きた問題点とその解決法を語った。「ぶっちゃけですね,しくじり先生なんですね」と率直に切り出し,非常に泥臭くすべてを対処した話をこれからする,皆様の良き反面教師にしてほしい,と前置きした。
 テーマは4つ。物量,10言語対応,ユーザー意見の吸い上げ,そして4ハードのコンソール対応である。

 1つめの物量は,開発チームの規模に対してゲームの規模が大きすぎたという問題だ。操作キャラクターが8種,それぞれが引き連れる子分の武器が8種,ステージは単純な数で6,そこにボスが亜種を含めて21体。大軍と大軍がぶつかり合うコンセプト上,1画面に登場するキャラクターやオブジェクトは最大で100体を超える。

 しかも中舎氏によれば,TVTという会社にとって「ほぼ初めてのゲーム開発」だった。一部のゲームパートを受け持ったり,ARG的なタイトルを手がけたりした経験はあり,メンバー個々にコンシューマ開発の経験もある。だが会社の中に経験値がなく,結果として基底システムが存在しない状態から開発がスタートしていた。

 解決法として示されたスライドは,「じゃあ作るか,ちょっとずつでも。」という身も蓋もない一文だった。

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 もっとも,まったくの丸腰だったわけではない。最終的にはコンシューマ開発やソーシャルゲーム開発の経験者が一通りそろい,大量のデータをどう扱うべきかという制作のノウハウはあった。マスタ構造などの考え方はチーム内にスムーズに浸透したという。
 ただ,どれをTVTとしての基底システムにしていくかのすり合わせには,ものすごく時間がかかった。経験してきたタイトルの違いによるノウハウのブレンドに,相応の試行錯誤を要したわけである。

 キャラクター周りの素材を担当したPHスタジオが大量のアニメーション作成に手慣れていたことも大きかった。「この期間までにこれだけお願いします」という無茶ぶりにも柔軟に対応してもらえたと,中舎氏は感謝を述べている。

 そしてもう1つが,3か月前後で1本のROMを上げなければならないスケジュールだ。途中で体験版の実施やホットフィックスが突発的に決まることも多く,チームは「タイミング的にできるところまでやろう」という姿勢を取るようになった。最初から3か月ですべてをやりきることはできない。ならば3か月でやりきれるところを何度も積み重ねて最終目標に到達しにいく。α版のころからチームのスタンスはそうなっていったという。処理負荷の軽減も,計測をしたうえでその都度分割して対処し,アーリーアクセス以降にコンソール対応を始めてからは本格的に取り組んだ。

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 結果としては,なんとかなった。ただし完璧ではない。データのマスタ化はバトルなど一部の要素で完了せず,その分あとの調整に膨大な時間がかかった。処理負荷もピーク時の低下やボスデータ読み込み時のスパイクに最後まで悩まされている。開発初期にアセットのレギュレーションを決めるアーティストを充てられず,中盤以降にデータの入れ直しが発生したことも反省点として挙げられた。それでもステージ数や敵の数を当初計画から一部軽減した以外は,ほぼ計画どおりに実装を達成できたという。

 2つめのテーマは10言語対応だ。当初の想定はEFIGS,つまり英語,フランス語,イタリア語,ドイツ語,スペイン語に日本語を加えた6言語だった。ところがKickstarterのバッカーをはじめとするユーザーから対応言語を増やしてほしいという声が上がり,α版以降に繁体字中国語,簡体字中国語,韓国語,ポルトガル語を追加。テキスト量は日本語換算でざっと12万文字,多言語ならその1.5〜2倍になる。ここでも,TVTに基幹システムは存在しなかった。

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 解決の方針は物量のときと同じく,「じゃあちょっとずつやるわ」である。
 α版やβ版といったマイルストーンの切れ目ごとに,小刻みに翻訳を重ねて言語を増やしていった。1つ前のROMを開発している最中に次のROMで何が実装され,どういうテキストが必要になるかをFIXさせる。そのうえで,作りながら増えた前ROMの不足分と突き合わせて翻訳に再提出し,漏れがあれば次のターンで出す。言語を増やすタイミングでまとめてチェックする,というサイクルだ。

 情報必須度の低いシステム的なテキストには機械翻訳を先行投入し,あとから正規の翻訳に差し替える手も試した。これはテキスト翻訳担当から「だいぶ不評」だったという。すでに何か入っているとそのまま通りがちになること,機械翻訳と正規翻訳を切り分けて管理するのが煩雑なこと,そして当時のAIではカルチャライズまで意識できる精度に届かなかったことが理由だ。「今だとだいぶ違うと思いますけどね。当時はこういう判断を一度した,という状態になります」と中舎氏は補足した。

 さらに,これは偶然だが,トリリンガルの社員がたまたま入社していたことも大きい。ドイツ語,日本語,英語ができるその社員は,カルチャライズの一部を見極められた。英語版が仕上がってからほかの言語へ展開する際に,ゲームの中身を見たうえでカルチャライズに必要な情報を補足として足せる。しかもSlackで現地の翻訳担当者と直接会話ができたため,翻訳担当とゲーム制作側の橋渡しを担ってくれた。彼がいなければ,翻訳はかなり厳しい状態になっただろうと推測しているそうだ。

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 3つめはユーザー意見の吸い上げである。開発想定はSteamで,コンソールでのリリース需要は不明瞭だった。ローグライク要素がどこまで受け入れられるかも,開発側の想定が客と合致しているか分からない。TVTとしてゲームを1本まるごとリリースしたことがない以上,「あくまで想像上の何かでしかない」と中舎氏は振り返った。

 解決法は「もう直接聞いちゃえ」だった。Kickstarterの実施時に公式Discordチャンネルを開設し,Discordの書き込み,公式フィードバック,Steamの評価コメントの3つを意見の吸い上げに使う。開発初期には開発者トークをDiscord内で複数回実施し,外国語スレッドと日本語スレッドを同時に走らせてリアルタイムで質問に答えた。実装するものをアンケートで決めることもあり,操作キャラクターの1体である「カモネロ」のデフォルトカラーはこの方式で決まっている。

 Kickstarterの企画で開発者が罰ゲームとして牛乳を一気飲みしたときには,その牛乳をアイコン化して配布した。するとユーザーが自発的に「乾杯」の意味でそのアイコンを使い始めたという。支援者向けにα版・β版をクローズドで配信し,各種イベントにROMを出展して開発者がアテンドすることでも,直接意見を得ている。

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 ROMの切れ目ごとに数千件のフィードバックが集まり,次のROMでの改善方針は非常に立てやすかったという。とくに大きかったのがβ版のタイミングだ。チュートリアルや分かりやすさを充実させようという方針転換を大きな決定として行った結果,Steamでの「賛否両論」評価が「非常に好評」に変わった。

 ただし,このやり方は1本筋を通しておく必要がある。
 開発者の意図やコンセプトを短いスパンで定期的に伝えること。こちらからやりたいことをあらかじめ提示し,反応をなるべく早くROMに反映させること。短期間で対応できない場合はパッチノートのような形で「いついつにこういうことをやります」と事前に宣言すること。こうした方針に,ブレがあってはならない。中舎氏は「言いなりになるのは違うんですよ。本末転倒なんです」と釘を刺した。
 また,チーム内でも,なぜその仕様に変えるのか,なぜ割り込みで対応するのかを説明して納得させる覚悟が必要だったという。

 そして4つめは,コンソール対応である。開発途中でSwitch 2が発表されたため,元々想定していたSwitchの対応を差し替えた。全ハード同時発売が目標だが,別チームを組めるほどの余裕はない。そしてまたしても,TVTという会社の中にノウハウはなかった。

 方針は「最大公約数的に開発して差分を最小限にしよう」だ。Unityと自社開発ミドルウェア「Theory Engine」で開発し,各コンソール共通の部分を先に洗い出して実装してから,差分だけをあとで対応する。
 たとえばユーザーIDの表示は,表示領域がもっとも小さいSwitchに合わせて文字数を決め,それを超える場合はスクロール表示を入れた。招待フローも一度Steam版で挙動を実装し,違うところだけを改変している。

 Unity部分の問題は少なかったが,Xbox系のビルドではそれなりに苦労した。通信部分に自社開発のTheory Engineを使っているため,その対応や相性の調整も相応に発生したからだ。ただ,この点については「これ自業自得なんですけども」とのこと。
 加えて,クロスマッチング対応ではユーザーの名前やIDがコンソールによってUGCと捉えられてしまい,一部のハードではそのまま出せないことが判明した。

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 結論を,中舎氏は「なんとかなりませんでした」と言い切った。予定日時までにコンソールのロットチェックの指摘対応が間に合わず,10月への発売延期という形になったのである。「なんとかなるんじゃないかって言ってこの講演を公募させていただいて通ったんですけど,何ともなりませんでした。現実は非情だったってやつですね」だそうだ。

 このスライドを作っていた7月頭の時点で,ようやく物理版のロットチェックが通ったところだったという。Day 1に向けた対応と非物理版のロットチェックが進行中で,会社からは「めちゃめちゃ怒られた」と中舎氏。実質的な所要期間は,Switch 2単体で約4か月,PS5やXbox Series X|Sで約3か月だった。

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 中舎氏は,「僕たちの失敗は,コンソール対応を甘めに見たことだと思っています」と総括した。その時々の最新のTRCを把握し,規約にどの程度考慮した実装を最初からできるかという点で,対応の深度や度合いを見誤った。そのうえで中舎氏は,小規模開発を想定する聴講者に向けて具体的な数字を残した。各ハード最低3か月×担当者1人という目処で工数を立てること,そして事前にTRCなどの規約調査を十全に行っておくことである。

 そして最後のスライドに残されたのは,3行だけだった。

 ちょっとでもいいから実装を進めろ。
 工夫は行うが,あとは泥臭く。
 コンソール対応はほんとに舐めるな。

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 質疑応答では,3年前に発表されたRatatanと外山氏,河野氏とのコラボレーションの行方を問う質問が出た。中舎氏は「今,DLCなども含めた今後の展開を計画しておりまして,当然そのうちの1つではあります」と答えたうえで,「もともと当初予定していたことができていないので,順番に前から片づけていく形になります。ちょっとお時間をいただくと思います」と続けた。

 公式Discordの運営は費用対効果に見合うのか,という質問には,「一定のコストは使うと思うんですけど,とても有意義だと個人的には思います」と応じた。公式チャンネルを開発陣が見ていると認識してもらえている前提であれば,忌憚のない意見が出る。それによって,開発者として甘えてしまうところを容赦なく指摘してもらえるのは,「めちゃめちゃありがたいです。僕らが諦めないための理由になります」と感謝を述べていた。

 そんな「Ratatan」の正式リリースは,2026年10月15日を予定している。

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