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関税問題に揺れるトランプ政権下の「Gen Con 2025」。その影響を現地の関係者たちに聞いてみた
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印刷2025/09/08 10:43

イベント

関税問題に揺れるトランプ政権下の「Gen Con 2025」。その影響を現地の関係者たちに聞いてみた

 2025年7月31日から8月3日にかけて開催された「Gen Con」。50年以上の歴史を持ち,4日間でのべ20万人以上が参加をするアナログゲームの一大イベントだが,取材に行くことを周囲に話すと,「今ってアメリカに行って大丈夫?」なんて心配されることが少なくなかった。筆者自身は大丈夫だろうと高をくくっていたものの,確かにいろいろと騒がしい時期であり,実際のところが気になっている人も多いのではないだろうか。

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 関税問題に揺れるトランプ政権下の「Gen Con 2025」。その影響を現地の関係者たちに聞いてみた

 今年のGen Conは,第二期トランプ政権下で初めての開催というわけで,関税問題に揺れるアナログゲーム界では,とくに気になるということもあるだろう。そこで今回は,「第二期トランプ政権下のGen Con」というテーマで,会場の雰囲気をレポートしてみたい。

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 北米最大級のアナログゲームコンベンション「Gen Con 2025」が,7月31日から8月3日まで4日間,アメリカ・インディアナポリスのIndiana Convention Centerで開催された。昨年からさらに規模を拡大し,大盛況だった現地の模様を,本稿では写真と共にレポートする。

[2025/08/18 11:30]

「Gen Con 2025」公式サイト(英語)



トランプ政権下のインディアナポリス


 ニュースで見る米国は政治的な混乱が目に付く印象だが,開催地であるインディアナポリスとGen Con会場を見る限り,昨年までとそう変わらない印象だった。
 警備の数がとくに増えたということもなく,来場者はいつもどおりコスプレ姿で会場を賑わしていたし,賑わいも変わることなく,来場者たちは例年どおりくつろいだ雰囲気で過ごしていた。

コンベンションセンター内の風景。コスプレ行列も昨年までと同様だ
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 一方で,アナログゲームのイベントでは常連の欧州系企業の欠席は目立っていた。
 フランス企業のielloや,ドイツの製造業者であるLudo Fact,ボードゲーム用家具メーカーであるギリシャのRathskellersなどは,いずれも欧州では存在感のある業者だが,今年のGen Conへは出展しなかった。
 トランプ政権との因果関係は断定できないが,大陸欧州系メディアでは年初から春先にかけて入国審査でのトラブルが頻繁に報じられていたため,欧州企業の意思決定に影響を与えた可能性は十分にありそうだ。
 欧州系の出展がやや減少した結果として,今年のエキシビションホールではいわゆるユーロゲームの比率が下がり,相対的にテーブルトークRPGやサプライ品(ダイスなど)が目に付く展示となっていた。


関税とその影響


 第二期トランプ政権下において,アナログゲーム業界に大きな影を落としているのは関税の影響だ。いわゆる「相互関税」の発表直後から,製造を大きく中国に依存するボードゲーム業界では,とくに懸念が囁かれていた。

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[2025/04/25 21:12]

 当初ぶち上げられた145%という衝撃的な関税率はその後保留となり,二転三転したあげく,Gen Conの開催時期には30%という数字に落ち着いたが,それでも大きいことに違いはない。

 筆者としてまず気になったのは,「本当に30%もの関税が適用されているのか?」ということだ。なにしろトランプ関税が始まって以来,米国行政は混乱を続けており,つい先日も15%で合意したはずの日本からの関税が,“間違って”25%の関税が適用される事案があったくらいだ。ましてや145%という非現実的な数字が覆ったあとでは,30%の関税も実際は適用されていないのでは? という不信感があった。

 この点を現地でさまざまなパブリッシャに話を聞いてみたところ,30%の関税はどうやら本当に取られているようだった。145%という数字のあとでは錯覚しそうになるが,昨年までと比べると30%でも相当な高率である。

米国で人気の高いミニチュアゲームは,とくに関税の影響が大きいと予想される
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 一方で,会場内での実売価格が目立って上昇していたかというと,そういうことはなかった。昨年までに発表された既存製品の価格が変わらないのは当然だが,今年の新作であっても関税が価格に転嫁された形跡はない。

 また新作の点数についても,現時点で目に見えた影響はなかった。会場でみられる流通数の変化は軽微に留まっており,例えばGen Conの注目作をまとめた「BGG Preview」を見ても,昨年の635件が621件に微減した程度である。厳密に新作のみを取り上げた数字ではないのであくまで参考値だが,ほぼ昨年並と考えてよさそうである。

Gen Conで初配布の新作「Guildlands」
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 大枠では影響がないとはいえ,まったくないわけでもない。
 昨年まで,エキシビションホールで3ブロック分のスペースを使って出展していた米企業のFlat River Groupは,今年のGen Conには不参加であった。同社は関税を理由に,2025年春の段階で大幅な規模縮小を宣言しており,今回のGen Conへの不参加も,その延長線上にあるのは想像に難くない。目に見えて分かる会場の変化としては,これが今年最大の変化と言える。

昨年と今年のホールマップの比較。中央で大きく場所を取っていたFlat River Groupの跡地(着色部分)は,複数のブースに分割されていた(画像はGen Con公式サイトより)
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関係者たちはどう考えているのか


 関税の影響について,会場でいくつかのメーカーにコメントを求めてみた。
 中国系の製造業者の中には,「関税の影響? そんなものはないない」と調子のいいことを言う人もいれば,「我々には正直分からない。直接影響を受けるのはパブリッシャだから」と,誠実な回答をしたところもあった。また,とある欧州系のパブリッシャに話を聞くと,トランプ関税絡みは回答を拒否されてしまった。

 実際,中国の製造側としては,目立った影響はないのだろう。直接の影響を受けるのは米国で展開しているパブリッシャだが,それがどう響いてくるかは,彼らにもまだ分からない。今後どうすべきかをうかがっている段階なのだろう。
 一方で,米国系の製造業者の中には,「Made in USA(=関税の影響を受けない)」ことを売りにブースを出している商魂たくましい出展者もあった。

米系製造業者のブース。「メイドインUSA,関税を軽減」の掲示がある
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 総合すると,現時点では一般のボードゲーマーにまで関税の影響は及んでおらず,今年のGen Conを見る限りでは,はっきり分かる影響は感じられなかった。
 一方で,業界側の動きは始まっている。30%に引き上げられた関税率は,今後パブリッシャにボディーブローように効いてくるだろう。そして8月中に決着予定だった最終的な米中関税率は,本稿執筆中に11月に先送りされた。

 万が一関税率が法外な数字になり,中国から米国への輸出が停止するようなことがあれば,日本のボードゲーマーも影響を免れない。むしろ北米市場の大きさを考えれば,ものによっては製品の企画自体が中止になる可能性だって出てくるはずだ。アナログゲームファンとしては,当面は関税のニュースを意識せざるを得ない状況は続きそうである。

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[2025/06/06 10:00]

「Gen Con 2025」公式サイト(英語)


著者紹介:
Im Karton
 海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」(シュピールエッセン)をはじめ,アメリカ「Gen Con」(ジェンコン),フランス「Festival International des Juex」などを訪問。「Essen Spiel Guidebook 2023」に続き,2024年はアメリカのアナログゲームイベント「Gen Con」へ行きたい人の旅行ガイド「Gen Con Guidebook」を刊行。

tackman
 Im Kartonメンバー。訪問時は文字を書いたり写真を撮ったりする。「Civilization IV」でストラテジーゲームにハマり,「Civilization: The Board Game」(2010)でボードゲームにハメられた。好きなボードゲームは「イノベーション」「テラフォーミング・マーズ」など。
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