業界初の有料配信に至った経緯とは
4Gamer:
では,改めて「第1期 TOPANGAリーグ」の質問に移りたいと思います。やはり注目は“有料配信”というところだと思うのですが,これはどうやって実現に至ったのでしょうか。
豊田氏:
有料配信については,今ここで実現できないようなら,今後ずっと不可能なのではないか,と思っていました。ストIVシリーズって,2008年の初代ストIVから,スパIV〜スパIV AE〜スパIV AE Ver.2012と,根本のシステムが変わらないままに4年続いていますよね。これだけの期間熱が冷めていないシリーズというは,近年の格闘ゲームでは稀だと思うんですよ。
しかもほかのタイトルから越境してくるプレイヤー――例えばバーチャ勢のふ〜ど君や,ギルティ勢のネモにかずのこ,そのほかにもカプエス(「CAPCOM VS. SNK」)勢からも有名なプレイヤーがこぞって参戦してきている。
4Gamer:
まさに異種格闘技戦の様相ですよね。
豊田氏:
そしてこの4年の間に,「プレイの質」自体もエンターテイメントとして成り立つレベルまで昇華されてきたという状況がある。そこに実績,実力ともにトップクラスのメンバーを揃えて,それでもなお有料配信が成り立たないのであれば,ゲームプレイの有料配信そのものが成り立たないんじゃないか――そう考えてドワンゴの運営参号さんに提案したんです。
![]() |
4Gamer:
それはいつ頃のお話ですか?
豊田氏:
ニコニコ生放送で「TOPANGAコンセプトマッチ」が終わった直後ですね,最後の「sako vs. ハイタニ戦」を行った1週間後に,ドワンゴの運営参号さんに企画書を提出したので……2011年の11月半ばくらいかと。
4Gamer:
ドワンゴとしては,企画を受けとってどう思われましたか。
ドワンゴ 運営参号氏(以下,運営参号氏):
「TOPANGAコンセプトマッチ」はニコニコ生放送で配信させていただいた番組だったんですが,これが非常に面白くて,また視聴者数的にもかなり良かったんですよ。その最中に豊田さんと「リーグ戦なんかもできると良いですね」という話をしていたんですが,その1週間後には企画書が届いて。
4Gamer:
そのときすでに,有料配信が前提の企画だったわけですよね。
運営参号氏:
そうです,豊田さんのほうから「有料でいきましょう」という提案を受けました。僕としては1000円くらいかなと考えていたんですが,「いや,3000円前後で」と。
4Gamer:
今回の通しチケット(全日程を視聴できるチケット)は3500円という価格設定ですね。
運営参号氏:
正直なところ,最初はそんなに強気で大丈夫かな,という懸念はありました。でもよく考えると,3000円前後というのは12日間という長期間の放送に対しての価格設定なわけで,それを12で割れば1回の放送が300円前後になる。それならまあ,妥当なラインなのかなと。あとは実際それだけの日程で放送するための手間と経費,かつ赤字にならない金額設定を,と考えていく中で折り合ったのが,この3500円という価格ですね。
4Gamer:
なるほど。しかし一般的な感覚でいうと,学生さんなどはちょっとためらってしまう価格だと思うんですが,そこはどう思われますか。
豊田氏:
確かに,不安がなかったといえば嘘になります。でも迷いはなかったですね。
![]() |
プロのお二人はいかがですか?
ときど氏:
妥当だと思います,これより高いと払いづらい人も出てくるでしょうし,かといって安くしすぎた結果,赤字になってしまうのも困るので。
マゴ氏:
名古屋や関西のプレイヤーにも参加してもらっているので,交通費や宿泊費も必要になるんですよ。
4Gamer:
なるほど,事前の予想では,この価格で何人くらいのユニークユーザーを想定していたのでしょうか。
運営参号氏:
個人的な感覚では,1000人くらい買ってくれれば良いかなあ,と。
4Gamer:
……それで,実際は?
運営参号氏:
……おかげさまで,2回目に繋がるくらいの目処は立っています。
4Gamer:
おお。ちなみに今回はTOPANGAとドワンゴの協賛という形になっていると思うのですが,これはどのような座組になっているのでしょうか。
運営参号氏:
ツッコミますね(笑)。これ,書かれちゃいます?
4Gamer:
書いちゃいます。
運営参号氏:
分かりました(苦笑)。チケット売り上げによる収益は,関係各社で分け合う形をとります。具体的な割合まではちょっとお話できないんですが,今回の座組では,TOPANGAに一番収益が入るようになっています。
4Gamer:
それはつまり,プレイヤーサイドにできるだけ還元する仕組みにしたかった,ということでしょうか。
運営参号氏:
そうですね,TOPANGAが主催者として今後やっていけるように。制作費という面もありますが,一番は今回参加した12人のプレイヤーが,ストレスなくプレイできるように,という部分が大きいです。例えば先ほど話に出た交通費や宿泊費,プレイに対するギャラ,そしてもちろん賞金もあります。そういうところまで含めて,お互いがペイする形を目指しました。
![]() |
4Gamer:
カプコンさんが協力という形になっていますが,こちらの反応はいかがでしたか。
運営参号氏:
お話をさせていただいときの感触は良かったんですが,けっこう議論はあったみたいですね。カプコンさんの中でもいろいろな意見が出たけれど,最後は本作のプロデューサーである小野義徳氏の鶴の一声でGOが出たと聞いています。
4Gamer:
おお,小野Pカッコイイ。ちなみにどんな一声だったんでしょう。
運営参号氏:
「格闘ゲーム業界の火を消さないためにも,プレイヤー主導でやるイベントを後押ししたい」とか。
4Gamer:
もう惚れちゃいますね。ところで実数でなくて構わないのですが,格闘ゲームの動画を見ている層――いわゆる動画勢のなかで,有料でもいいから見たいと考える層って,どれくらいいるとお考えですか?
運営参号氏:
うーん……あくまで僕個人の感覚値ですが,格闘ゲームの放送に関していえば,潜在的には3割くらいいてもおかしくないんじゃないかと思いますね。TOPANGAリーグがどうこうというよりも,GODSGARDENさんや海外のEvolution2011なんかを見ての感想です。
4Gamer:
3割というと相当大きな数字だという気がしますが,どうなんでしょうか。MMORPGなどの場合,課金者の割合は多くて2割程度だと聞いたことがあります。
運営参号氏:
そうですね。3割はすごい数字だと思います。ただTOPANGAについても,今回は幸いにも赤字になりませんでしたが,今後も継続的にうまくいくのかというと,それはまた別の話だと思うんです。
4Gamer:
今回は特別だったと?
運営参号氏:
最初の1回はご祝儀みたいなものですから(笑)。回を重ねるごとに視聴者さんの目は肥えていくわけで,そうなるとどこかしらで“ゲームの外”にコンテンツを作っていく必要が生じてきます。
4Gamer:
それがプロゲーマーという枠組や,シーンを盛り上げる活動であると。
豊田氏:
はい。それこそが,TOPANGAの仕事だと思っています。
「第1期 TOPANGAリーグ」本戦ステージ,本日22:00開幕!
4Gamer:
ではそのTOPANGAの仕事の部分,今後の展開についてお聞きしたいと思います。まあまだ本戦シリーズが残っていますが,その次には?
豊田氏:
そうですね,今回のものを仮にAリーグとして,今後はBリーグ,サッカーのJリーグでいうところの,J1に対するJ2のようなものを実現できれば,と考えています。ただ現状はプロゲーマーの数はまだまだ少ないので,今後もっと増えていってほしいと思いますね。もちろん我々のほうでも,そうなる努力を続ける必要がありますけど。
![]() |
プロゲーマー界に新しい風を吹き込みたいと。
豊田氏:
はい。今回の第1期では,まずプロゲーマーの方を優先的に入れ,それに続いてスパIVで実績のあるプレイヤーを入れていきました。なので人選は完全にこちらで決めてしまったようなものなので,Bリーグに関しては,なんらかの方法で一般の方にも門戸を開いた形にしたいと考えています。
4Gamer:
例えば,リーグ参加者を決める大会とかでしょうか。そこからどんどん勝ち上がって,Aリーグを狙うことも不可能じゃないわけですね。そういえば,ときどさんは以前にも「プロ野球のようなリーグがあったら」とおっしゃってましたね。
ときど氏:
そうですね。今後も続けられたらいいなと思います。今回は時間がない中で作った部分もあるので,ルールなんかもブラッシュアップしていきたいです。
4Gamer:
個人的に一つ気になったのは,TOPANGAさんがほかのイベントとの競合をどう考えているのか,というところです。今回の「第1期 TOPANGAリーグ」の放送日程は,ほかの格闘ゲームイベントとかなり時間が被っていましたよね。これは参加する人はもちろん,視聴する側にとっても大変だったと思うんですが。
豊田氏:
その点には,本当に申し訳ないと思っています。ほかのイベントと被ってしまうのは分かっていたんですが……色々事情がありまして,今回はどうしてもズラせませんでした。
ときど氏:
今後はほかのイベントの運営サイドとも連携を取り合ってやっていきたいですね。
マゴ氏:
やっぱりスタープレイヤーの数って,今はまだそれほど多くはないので。それがバラけてしまうと,盛り上がりにも欠けますしね。
豊田氏:
ほかの団体さんがイベントをされているときは,なるべく日程を調整していかなければと思っています。つぶし合いになっても意味がないので。
![]() |
まあ今回は初めての試みだったし,行き当たりばったりなところはあったと思うんです。でもダメだったところは改善していけばいい。たださっきもちょっと言いましたけど,こういうリーグがあれば若い人達が自信を持ってプロを目指せるようになるじゃないですか。そんなプロゲーマー業界になってくれればいいなと思っています。
豊田氏:
現状,プロゲーマーになりたいなんていったら,親は泣きますからね。
マゴ氏:
実際,俺の親なんてゲーム大嫌いだからね。かなり反対されましたよ(笑)。
豊田氏:
今はまだアメリカの方が“ゲームで飯を食う仕組み作り”が進んでますが,格闘ゲーム発信地である日本にこそ,プロは必要だと思っています。その道筋を整備して,もっと盛りあがれる環境を作っていきたいです。
4Gamer:
では最後に,マゴさんとときどさんに本戦ステージへの意気込みを伺いつつ,締めにさせていただきたいと思います。
マゴ氏:
本戦ステージは決着までの試合数が多い,やり込みが活きる形の試合形式なので,結構自信あります。久々に切れちまったよってことで,修羅になりたいと思います。応援お願いします!
ときど氏:
非常に厳しい戦いになると予想はしていますけど,ひとつひとつの試合をできる限り楽しみにながらやっていきたいと思います。まあ,初戦は負けない自信があるので,皆さん応援をぜひともよろしくお願いします。
4Gamer:
ふ〜どさんは,本戦に向けての対策をなにか考えていますか?
(偶然TOPANGA事務所の暖房で暖まっていた)ふ〜ど氏:
キャラ的にはイケると思っています。ときどが本当にきつい相手なんですけど,ウメハラさんが途中にいるので,戦うことにはならないかなと(笑)。
![]() |
マゴ氏:
“ウメバリア”があるからなあ。
4Gamer:
逆に,ウメハラさんを倒せたら優勝もあるかもしれない?
ときど氏:
そしたら優勝しちゃいますね,きっと。
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。
ストリートファイターIVシリーズとともに,再び注目を集めている格闘ゲームジャンル。その盛り上がりの要因の一つには,YouTubeやニコニコ動画,Ustreamといった動画サイトを中心とした“観戦する”という楽しみ方が,ゲームの消費の仕方として定着しつつあることが挙げられるだろう。そして現在のプロゲーマーという枠組自体が,この動画文化のうえに成り立っているものであることは確かである。
今回のTOPANGAリーグによって実現した有料配信は,そんなこれまでの現状に一石を投じるものとなる。これまで“見て応援する”しかできなかった観客達が,視聴料という形でメーカーやプロゲーマーを後押しできるようになったことは,大きな一歩といえるだろう。一方で,プレイヤーコミュニティの熱意によって生まれ,運営されたきたこれまでの動画配信は,そのあり方が再び問われることになる……かもしれない。
TOPANGAの語る未来と,我々格闘ゲームファンが望む未来が,必ずしも一致するとは限らない。それでも,格闘ゲームのムーブメントが続いてほしいという想いには,どちらも変わりはないはずだ。
スターゲーマー達の祭典「第1期 TOPANGAリーグ」本戦ステージは,本日22:00に幕を開ける。そこで生まれるだろう名勝負の数々は,間違いなく我々を熱狂させてくれるだろう。オンラインからオフラインへと舞台を移し,さらに熱を増す頂上決戦に期待しよう。
![]() |
――2012年2月1日収録




























