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「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」が目指した“心機一転”。アークシステムワークス・石渡太輔氏と関根一利氏が語る,新時代の格闘ゲームとは
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印刷2014/04/23 00:00

インタビュー

「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」が目指した“心機一転”。アークシステムワークス・石渡太輔氏と関根一利氏が語る,新時代の格闘ゲームとは

「拡張」されたロマンキャンセルに込められた意図


4Gamer:
 ではいよいよ,ゲームシステムについてうかがっていきたいと思います。先ほど「追加」ではなく「拡張」を目指したとおっしゃっていましたが,中でもギルティギアシリーズを代表するシステムであるロマンキャンセルには,大きく手が入っているように思います。その意図を教えていただけますか。

画像集#023のサムネイル/「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」が目指した“心機一転”。アークシステムワークス・石渡太輔氏と関根一利氏が語る,新時代の格闘ゲームとは
石渡氏:
 やっぱりギルティギアと言えばロマンキャンセル,この部分は開発スタッフ内でも共通する認識でしたので,これをどう「拡張」するのかが,まず最初の課題になりました。色々な案がありましたが,その中で一番インパクトが大きかったのが,「どこでもロマキャン」でした。

4Gamer:
 従来のロマンキャンセルは,基本的に相手にヒットかガードされたときのみ発動できるシステムでしたね。それを,どこでも使えるようにしてしまおう,と。

石渡氏:
 そうです。で,そういう仕様でゲームになるかどうか考える,という宿題を,またパチくんに投げまして(笑)。

パチ氏:
 ……最初は「ダウン中でもロマキャンできる」みたいな話だったんですよ。いやいや,それはさすがにダメだろ! って(笑)。

(一同笑)

パチ氏:
 最初の最初は,本当にただ行動のスキを減らすためだけのシステムになっていて,あまり面白くなかったんですよ。そこから色々と考えた結果,効果中は自分以外の動きがスローになる――いわゆるバレットタイム効果を付けようという,現在の形になっていきました。ギルティギアは元々展開が早いゲームなので,突然スローになるという演出は,視覚的にも大きなインパクトになり得ます。
 もちろん,毎回長いバレットタイムが発生してしまうとゲームバランス的にも良くないので,状況に応じて効果時間を調整するなど,対戦ゲームとして成立するように落とし込んであります。

石渡氏:
 あのバレットタイム効果には,初心者がなんとなくロマキャンを使ったときに,あのとき何をすべきだったのか,後から考えてもらいやすいのではないか,という狙いもありました。ただ当初は,“従来のロマキャンによるテンポの良さこそ,ギルティギアの持ち味の一つだ”という意見もあって。

本作では,ロマンキャンセルに「赤」「黄」「紫」の三種類が存在する。最もオーソドックスな赤は,相手に攻撃がヒットした瞬間に入力すると発生。バレットタイム効果の持続が長いので,これまで以上に自由度の高い連続技を作り出せる。また,攻撃の空振りモーションをキャンセルできる紫は,攻撃失敗時のスキを軽減するのが主な用途となる。バレットタイム効果は赤よりも短く,後述する黄よりも長い。なお,どちらもテンションゲージを50%消費する
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パチ氏:
 そこは結構揉めましたね。バレットタイムを入れることで,テンポの良さはどうしても損なわれてしまうことになる。テスト段階では,バレットタイムを伴わないロマンキャンセルを実装して,使い分けられるようにもしてみましたが,やっぱりシステムとして整合性がとれないというか,分かりづらいんです。

4Gamer:
 なるほど。

パチ氏:
 でも,発動モーションやバレットタイムがないことには,見た目的に従来と変わらないものになってしまいますし,なによりシステムを拡張するという当初の目的は達成できない。なので,思い切ってテンポの部分は切り捨てることにしました。

石渡氏:
 “無くした”ということでは,フォースロマンキャンセル(以下,青キャン)※もそうだよね。

※フォースロマンキャンセル……「GUILTY GEAR XX」シリーズに搭載されていたシステムで,特定動作の限定されたタイミングでのみ,ヒット状況にかかわらず(つまり空振りでも)ロマンキャンセルが可能になる,というもの。成功時のエフェクトが青いことから,青キャンと呼ばれる。

パチ氏:
 青キャンの有り無し談義も,かなり長いことやりあってましたね。

石渡氏:
 2013年の冬頃までは,僕はまだ“有り派”だったんですよ。対戦ツールとして,習熟した人だけが辿り付ける世界は,あって然るべきだと思っていたんです。だけど,最近は昔ほどやり込む体力を持っているプレイヤーは,少なくなってしまったという話をパチくんから聞いて,心変わりしました(笑)。

パチ氏:
 僕は最初からずっと“無し派”でしたね。上級者だけが大きく得をするシステムは,新規層獲得を狙う本作のコンセプトから外れるものです。なので,青キャンというシステムが生み出した面白い要素――飛び道具を追い掛けたり,フェイントに使えたりといった部分を,今回は黄色ロマキャンという形で取り込んでいます。テンションゲージの消費量も,青キャンと同じ25%ですし。ただ青キャンと違い,任意のタイミングでボタンを押せば,誰でも狙えるようになったのは大きいです。技術よりも発動タイミングを考える想像力に重きを置きました。

相手に攻撃を当てずとも発動できる黄色いロマンキャンセルは,テンションゲージを50%消費してしまう赤や紫とは違い,25%とコストが安い。飛び道具を出した直後に使って弾を追いかけ,同時攻撃を狙うなどが定番の使い方だ
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4Gamer:
 確かに,これまで青キャンでできていた行動は,ある程度黄色ロマキャンで代用できるようになっていますね。

パチ氏:
 だいたいね,「青キャン最高!」って言っているプレイヤーは,たいてい青キャンで優遇されたキャラを使っているからなんですよ。僕は当時ファウストって青キャンがあまり意味のないキャラを使っていたから「……何が最高だよ!」ってずっと思ってて。

(一同笑)

パチ氏:
 ……というわけで,今回は石を投げられる覚悟で無しにした,という感じです。

4Gamer:
 先ほど最近のプレイヤーの傾向についての話がありましたが,そんなに違いがあるものなんでしょうか。

石渡氏:
 僕はもう,パチくんに言われるまで,正直全然考えていなかったですね。僕にとってのゲーマーって,ほとんど仕様が解明されているにも関わらず,「まだどこかに穴があるはずだ」って,半ばキャラ愛・ゲーム愛を原動力に,中毒的に遊んでくれるイメージを持っていたんです。

4Gamer:
 確かに,今は格闘ゲーマーでも,そこまでの情熱を持っている人は稀かもしれませんね。

石渡氏:
 僕は僕なりに,「俺が面白いんだから面白いはずだ!」という,ギルティギア像を持っていて,さっきの青キャンの話も,それに従うと別にいいんですよ。でも,パチくんから「最近の傾向を知らなさすぎる!」とたしなめられちゃって(笑)。

パチ氏:
 今はとにかく消費が早いし,動画配信が普及したことで,自分で正解やシステムの抜け道を探そうとするプレイヤーは減っています。隠れた仕様なんて作っても,ヘタをすると,気付かれないままにゲームの寿命が尽きてしまいかねない。

石渡氏:
 そんなわけで,僕がパチ君から一番助けられたのは,そういった“今のプレイヤーの傾向”なんですね。もしパチ君がいなかったら,GGXrdの間口は,そこまで広がらなかったかもしれません。

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黄色ロマンキャンセルと対になる存在「ブリッツシールド」


4Gamer:
 ロマンキャンセルについては分かったのですが,本作にはそのほかに二つ,新しいシステムが登場しています。「ブリッツシールド」「デンジャータイム」ですが,これらはなぜ搭載されることになったのでしょうか。

石渡氏:
 ブリッツシールドを入れた一番大きなきっかけは,最初のロケテストを行ったとき,従来のプレイヤーから「これまでと何が違うんだ」という声を非常に多くいただいたことなんです。まあ,ロケテストだとプレイ時間が短いので,新しいロマンキャンセルの仕組みを充分に分かってもらえなかったのかもしれませんが,もう少しキャッチーな新システムがあってもいいかもしれないと考えました。

パチ氏:
 そこで生まれてきたのが,相手の攻撃を弾いてスキを作り出す,ブリッツシールドなんです。視覚的に分かりやすい新システムというのが主な実装理由ですが,これにはもう一つ,対空技の有無によるキャラクターの優劣を,システム面から補うという狙いがありました。

発動すると,一定時間相手の攻撃をはじき返す「ブリッツシールド」。シリーズのご多分に漏れず起き攻めが強力な本作ではあるものの,このシステムの存在によって若干の緩和が見られる
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4Gamer:
 ああ,ギルティギアは空中からの接近行動が強いので,それに対処できるかどうかで相性が決まっていたところはありますね。

パチ氏:
 ただ1回成功すれば逆転できるような強力なシステムだと,攻め重視というギルティギアらしさが損なわれてしまいます。なので,初回ロケテスト時にあった弾きの要素をここに加えました。

石渡氏:
 僕にとっては,ギルティギアって守りより攻めが強いイメージなんですよ。だから,ブリッツシールドの案が最初に出てきたときには,成功時のリターンはなくて良いと思っていたんです。だけど,実際にゲームが組み上がってくるにつれ,黄色ロマキャンとブリッツシールドがうまく対になっていることに気がついた。テンションゲージの配分としても面白くて,「ああ,これならいける」と思いましたね。

4Gamer:
 ブリッツシールドを誘っておいて,黄色ロマキャンで反撃したり,逆に相手にゲージがないときを狙ってブリッツシールドを決めたりと,色々な戦術が生まれるわけですね。

パチ氏:
 そうそう。あと相手が黄色ロマキャンを発動すると,バレットタイムの効果によってブリッツシールドの有効時間も延びるので,黄色ロマキャンを誘ってブリッツシールドを狙うというのもありですね。
 とはいえ,ブリッツシールドに関する議論は,プレイヤーの間で恐らく何周もするだろうと思っています。先にも言ったとおり,今はネットの情報でプレイヤーの攻略が一気に進んでしまう時代なので,すぐに最適解にたどり着かないような,“アナログなシステム”を一つ入れておくことが大事なんですよ。

4Gamer:
 では,最後のデンジャータイムについてもお聞きしたいのですが……これって一体何を意図したシステムなんでしょう。プレイヤーの意思と関係のないところで勝手に発生して,かつ一方が利益を得られるシステムって……とくに最近の格闘ゲームでは,かなり珍しい気がするのですが。正直,個人的にはいまいちピンと来なくて……。

互いの強力な攻撃がぶつかり合ったとき,一定の確率で発動するのが「デンジャータイム」だ。デンジャータイム中は,最初にヒットさせた攻撃に「モータルカウンター」がつき,攻撃側に「強制カウンター」「相手のみのスロー効果」「全ての技でキャンセル可」といった,大幅に有利な状況が発生する
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石渡氏:
 昔はそういうシステム,良くありましたよねえ。「サムライスピリッツ」の鍔迫り合いとか。ぶっちゃけると,あれ……もの凄くアレなシステムだったじゃないですか(笑)。

(一同爆笑)

4Gamer:
 まあ,今の視点だとおっしゃるとおりですね(笑)。とくに競技性を重視するコミュニティでは,プレイヤーがコントロールできない逆転要素は,忌避される傾向にあります。

石渡氏:
 いや,僕もそう思いますよ。ただね,ロジックによる駆け引きを突き詰めすぎるのも良くないと思うんです。ちょっと脳みその力を抜く場所を用意しておきたかったというか。まあ,単純にメンタル面に火が点く要素が欲しかったんですね。それこそサムスピの鍔迫り合いだって,「俺,なんでこんな必死に連打してんだろう……」と思いながら,心拍数は上がっているハズですから。

パチ氏:
 これはですね……実装が決まった時点では,僕はまだ開発チームにいなかったんです。で,入ってきから初めてデンジャータイムの存在を聞かされて……「おい! ふざけんなよ!」と(笑)。

(一同笑)

パチ氏:
 いや,でも作り手側の立場に立つと,プレイヤーに驚きや感情を揺さぶる瞬間を与えたいって気持ちはすごくよく分かるんです。とはいえ,デンジャータイムでの逆転性が強すぎると,プレイヤーは納得できないんですよね。

石渡氏:
 最初の頃は,テンションゲージが一定時間使い放題だったりとか,色々な仕様を考えていたよね。

パチ氏:
 ありましたね。でも,それだとお互いにロマキャンしまくって終わっちゃうだけになっちゃった(笑)。なので,発生したら,強制的に仕切り直しが入って改めて勝負,という今の仕様に落ち着きました。
 モータルカウンターの効果も悩みましたが,あまりに効果が小さいと,お互い下がって様子見ってことになりかねない。なのできっちりしたリターンは必要だろうと。結果的には賛否両論はあれど,存在感のあるシステムになっていると思っています。

4Gamer:
 ちょっと話が戻るのですが,パチさんの言っていた“アナログなシステム”という話が面白かったので,その部分をもう少しお聞きしてもいいでしょうか。格闘ゲームにおけるアナログ感って,つまりどういうものなんですか?

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パチ氏:
 アナログ感というのは,うーん……「フレーム攻略に頼らない読み合い」とでも言えばいいのかな。例えば,「3フレーム有利な状況から次の攻撃を出すとき,その発生が5フレームまでの技であれば,割り込まれることはない」。これはデジタルな要素なんです。これまでのギルティギアシリーズは,起き攻めやセットプレイが強力な,比較的デジタル要素が強いゲームだったと思っていて。

4Gamer:
 つまり,セットプレイをかっちりと組みあげて,その引き出しの数が,プレイヤーの強さを決めるというような。

パチ氏:
 ええ。対してアナログ要素の強いゲームはというと……例えば「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」が代表的だと思います。ブロッキングというアナログ要素の強いシステム――どんなに有利な状況でも,相手の行動次第でひっくり返される可能性がある――が面白さの中核を担っていて,未だに多くのプレイヤーに愛されている。最適解が変わって,常に人間と人間の読み合いになるので,寿命が長いんですよ。

4Gamer:
 正解を引き当てるために,読み合いが何周もしていくような。確かに,長く遊ばれている格闘ゲームには,そうした要素が必ず入っているように感じますね。

パチ氏:
 デジタル要素が強すぎる,つまりロジックだけで攻略できてしまうゲームは,どうしても寿命が短くなってしまう。自分が以前攻略ライターをやっていた経験から言うと,そういうタイトルの場合,攻略が完成した時点で満足してしまうことが多いんですよ。

4Gamer:
 その気持ちはよく分かります。「あとは誰がプレイしても一緒」では,自分で遊ぶ意味がない。

パチ氏:
 いつの時代も,格闘ゲームにおける最強の技は「ちょっと遅らせて出す昇龍拳」じゃないですか。攻略が完成したあと,そこからどう読み合いを詰めていくのか。その材料となる要素が多いゲームが,自分にとって面白いゲームなので。だからこそGGXrdでは,これまでの面白さであるデジタルな要素を残しつつも,アナログな読み合いを分かりやすく提示することにしました。
 攻めの黄色ロマキャンと,守りのブリッツシールド。どちらも,どんなタイミングで出しても正解になる可能性があるので,そこはぜひ,何周もしながら読みあってもらえたらと思いますね。


ゲームセンターが格闘ゲームの聖地であり続けるために


4Gamer:
 ではここからは,今後のギルティギアシリーズについてうかがえればと思うのですが……その前に。まずボスキャラクターであるラムレザル=ヴァレンタインが,プレイアブルキャラクターとして追加されるとのこと(関連記事)。このインタビューが掲載される頃には,すでに実装済みだと思いますが,まずこのキャラクターのコンセプトを教えていただけますか。

ラムレザル=ヴァレンタイン
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パチ氏:
 バトルコンセプトとしてのプレイアブル版のラムレザルは,ギルティギア史上,最もできることが多いキャラクターだと思います。通常時は2本の大剣を装備していますが,[S]ボタンと[HS]ボタンで,それらを個別に分離/発射できます。剣それぞれの性能が違うので,相手によっては両方飛ばしたり,逆に両方装備しておいたりと,これだけでも多彩な行動がとれるんです。

4Gamer:
 おお,ボス版とはかなり性能が違うんですね。ブリジットのYOYOを2つ持っている感じでしょうか。

パチ氏:
 ああ,そんな感じですね。さらにガトリングコンビネーションとは異なる,独自のコンビネーション攻撃を持っていて,これまでのギルティギアのキャラとは一味違うプレイフィールで楽しんでいただけるのではないかと。

4Gamer:
 むむむ。となると結構上級者向けのキャラクターなのでしょうか。

石渡氏:
 やれることは多いですが,決して扱いが難しいわけではないんです。ラムレザルは,剣を装備しているときはテンションゲージが溜まりやすく,逆に分離していると全然溜まらない。だから,まずは剣を装備した状態でテンションゲージを貯め,それから色々やってみる,くらいの感覚で良いと思います。

パチ氏:
 とくに,大剣での1発はかなり気持ち良いです。

石渡氏:
 覇王丸の強斬りみたいな感じだよね(笑)。

4Gamer:
 ビジュアルに関してはいかがですか? ボスとしての初公開時も,なかなかのインパクトを残したように思いますが。

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石渡氏:
 いや,あのビジュアルは,実は結構思いつきなんです(笑)。てるてる坊主みたいな,ポンチョ姿の女の子がパッと思い浮かんだ,という。

4Gamer:
 ヴァレンタインといえば,GG2にも同名のキャラが登場していましたが,何か関係はあるんでしょうか。

石渡氏:
 ええ,あります。ただ,同一人物ではありません。その辺りは,今後のストーリーの展開に注目して頂ければと。

4Gamer:
 では,その今後についてですが……コンシューマ版が2014年内の発売となっていますが,今の時点で何かお話いただけることはあるでしょうか。

石渡氏:
 コンシューマ版では,今のところアーケード版で“to be continued”で終わっているストーリーを進めるのと,キャラクターの強化を考えています。

4Gamer:
 ということは,そのタイミングでの追加キャラクターも期待できる?

石渡氏:
 ……やりたい……のは山々なんですが,あまり大きいことは言えない,というのが正直なところです。ええと,これはまだ秘密だとかそういうことではなく,ぶっちゃけてしまうと,うちの会社って小さいんですよ(笑)。GGXrdチームも20名ちょっとの少数精鋭で作っているので,これは本当に未定なんです。

4Gamer:
 分かりました(笑)。では続報に期待と言うことで。

石渡氏:
 はい。僕らも良いものをお届けするために,できる限りのことをやるつもりでいますので,ご期待ください。

4Gamer:
 それにしても,アークシステムワークスさんの格闘ゲームって,徹底してアーケード重視を貫いていますよね。ネット対戦が普及したことで,コンシューマーで展開するタイトルも増えてきているのに,すごいと思います。

石渡氏:
 これは会社ではなく,いち開発者としての僕個人の考えなんですが,格闘ゲームって,あくまでも1フレームを競うものだと思うんですよ。それをもっとも純粋に遊ぼうと思ったら,遅延のないゲームセンターしかありえないじゃないですか。だからこれからも,ゲームセンターが聖地であり続けてほしいと願っています。

4Gamer:
 聖地としてのゲームセンターの火を消さないために,アーケードゲームを作り続けると?

石渡氏:
 そうありたいとは思いますが,どちらかというと,もっと純粋な願いみたいなものですね。ビジネス的な側面について,僕はどうこう言える立場ではないですが,アリーナとしてのゲームセンターという場が絶えてしまうようなことは,僕には考えられない。

パチ氏:
 ゲームセンターについていえば,僕自身はまだなんとか大丈夫だと思っています。BLAZBLUEシリーズやP4Uシリーズのコンシューマ版から格闘ゲームを始め,今ではゲームセンターでGGXrdを遊んでくれているという人からの声も少なからず届いていていますし,各社さんも積極的にタイトルを出されていますから。

4Gamer:
 JAEPO2014でも,新作格闘ゲームがかなり発表されていましたね。

パチ氏:
 ええ。格闘ゲーム以外でも,若い世代が牽引しているタイトルが幾つもあるので,これから良い風が吹いてくるんじゃないかと期待しているんですよ。

石渡氏:
 ゲームセンターという文化が続く限り,作り続けたいですね。

4Gamer:
 ではちょっと脱線してしまうのですが,RTSであるGG2の続編なんかはいかがですか?

石渡氏:
 それはもう,すごく作りたいです(笑)。

パチ氏:
 やりたいですねえ。

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Xbox 360「GUILTY GEAR2 -OVERTURE-」
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4Gamer:
 そもそもなんですが,GG2が出てきた当時,RTSってまだマイナーな存在だったじゃないですか。日本においては,今もまだメジャーとは言い難いですが,石渡さんはどうしてRTSを作ろうと思ったのでしょうか。

石渡氏:
 ちょうど「GUILTY GEAR X」を作っていた頃,「エイジ オブ エンパイア」シリーズ「ウォークラフト」シリーズにめちゃくちゃハマッていたんですよ。こんなに面白いゲームがはやらないわけがない! と思っていたぐらいで(笑)。

4Gamer:
 なるほど,生粋のPCゲーマーだったんですね。

石渡氏:
 ええ。それで,純粋なRTSを作ろうと思ったんですが,せっかくなら新しいジャンルのものを提供しようと考えて。それでできたのがGG2ですね。

4Gamer:
 最近は国内でもMOBAがはやりつつあるので,もしかしたら今ならチャンスがあるのでは?

石渡氏:
 うーん,GG2のシステムのままだと,やっぱりまだハードルは高いでしょうね。マウスやタッチパネルで遊ぶのなら,すでに人気作がたくさんあるわけで……でも,もし作るのであれば,また独自なデザインのゲームを考えてみたいですね。

4Gamer:
 分かりました。それでは最後に,4Gamerの読者に向けたメッセージをお願いします。

石渡氏:
 GGXrdはギルティギアシリーズの最新作ではありますが,同時にアークシステムワークスが贈る,新たな格闘ゲームの最初の一本だと思っています。間口はできる限り広くしたつもりなので,どんなきっかけでも構いません,ぜひゲームセンターまで足を運んで,プレイしていただだけると幸いです。
 そしてなにより,これから皆さんと一緒に育てていくシリーズにしたいと思いますので,ぜひ応援をよろしくお願いします。

パチ氏:
 最近は1プレイ専用のシングル台が増えているとも聞きますし,対戦をせずとも構いませんので,とにかく一度100円を入れて遊んでみてほしいです。そして,対戦を楽しんでくれている人達には,皆さんが活躍できるステージを必ず用意します。今はまだ言えないことも多いですが……ご期待ください。あ,それとALL.Net P-ras MULTIのセレクト台を見かけたら,とりあえずGGXrdをセレクトしておいてください(笑)。

石渡氏:
 あっ,JAEPO2014の座談会で「みんなで仲良くやっていきましょう」って言ったばかりなのに(関連記事)。

(一同笑)

4Gamer:
 ここから始まる,新しいギルティギアの展開に期待させていただきます。本日はありがとうございました!



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 ギルティギアシリーズのクリエイターとして,格闘ゲームファンならばその名を知らぬものはいない石渡太輔氏。にもかかわらず,その氏が語る言葉は,常に現場の開発者のものであり,筆者としてはその姿勢が印象に残るインタビューとなった。「アーケード格闘ゲームという文化を後世に残していきたい」と熱っぽく語り,ゼネラルディレクターという肩書きを持ちながら,いち開発者であろうとするその姿は,格闘ゲームプレイヤーにとって,なによりも心強い存在といえるのではないだろうか。

 その一方で,「それはさすがにダメだろ!」「……おい,ふざけんなよ!」などと口ではいいながらも,常に現役プレイヤーの目線を忘れないパチ氏の存在もまた,我々にとっては貴重なものといえる。そんな両氏のやり取りの中で生まれてきた本作であればこそ,やり込むだけの価値があるタイトルだろうことは,想像に難くない。
 ……ついでにいえば,開発の現場でどんなやり取りが繰り広げられているかが垣間見えるという意味でも,筆者としては興味深い時間だった。

 稼働から約1か月あまりが経過し,ラムレザルのプレイアブル化に第1回公式大会,ゴールデンウィークに行われる全国大会の前哨戦「PRE ARC REVOLUTION CUP」,さらには6月14日から始まる全国大会「ARC REVOLUTION CUP」と,さまざまな展開を見せつつある「GUILTY GEAR Xrd -SIGN-」。コンシューマ版を始め,今後のさらなる展開にも期待を寄せつつ,まずはゲームセンターに足を運んでみるところからはじめてみてはいかがだろうか。

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