カプコンが2025年5月23日に発売する
「鬼武者2」 (
PC /
Nintendo Switch /
PS4 /
Xbox One )は,2002年にリリースされた同名作品を現代向けにリマスターしたタイトルだ。今回,発売に先駆けて本作を遊ぶ機会を得たので
プレイレポート をお届けする。23年ぶりに復活した本作を遊ぶことで,キャラクターの魅力やアクションゲームとしての面白さを再認識できた。
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戦国サバイバルアクション「鬼武者2」 が23年ぶりにリマスターされ復活する。発売を5月23日に控えた本作について,プロデューサーである田中浩介氏 と,ディレクターである江城元秀氏 を対象とした合同インタビューが行われた。思い入れも深い2人によるリマスター,その舞台裏では何が起こっていたのだろうか?
[2025/04/23 07:06]
“愛と哀しみのバッサリ感”は時を越えて輝く
2002年に発売されたオリジナル版の「鬼武者2」は,主人公の柳生十兵衛役に故・
松田優作さん ,キャラクターデザインに
雨宮慶太氏 ,シナリオに
杉村 升氏 ,音楽に
岩代太郎氏 といった各界で一線級のクリエイターを起用して話題を呼んだ。
この豪華な布陣をそのままに,グラフィックスをHD化し,さまざまな改良を加え,遊びやすくしたのが今回のHDリマスター版だ。記憶の中の「鬼武者2」が美しくなって,現代に蘇った形となる。
本作の舞台は,前作「鬼武者」で明智左馬介が織田信長を倒した13年後だ。十兵衛の故郷である柳生の里が信長率いる「幻魔」に襲われ,住民は皆殺しにされてしまった。怒りに燃える十兵衛は,信長を倒すために必要な五つの玉を集めるべく旅に出るのだった。
グラフィックスについては,ありきたりな感想にはなるが
「当時の良さをそのままに,より美しくなって蘇った」 といったところだろうか。十兵衛役の松田さんの存在感がさらに強く際立ち,大森達也(ハードボイルド工藤)さんのボイスとあわせ,いい意味で
“俳優・松田優作さんが主演する時代劇アクション” という印象を受ける。優れた剣術を持つが,おごり高ぶることなく,強大な敵である信長にもひるむことなく復讐を誓うさまはハードボイルドであり,ただただカッコいい。
松田優作さんをモデルにした十兵衛が,ヒロインであるお邑とともに,雨宮圭太氏がデザインした球体から変形するからくりの馬に乗る。本作のビジュアル的な魅力が詰め込まれたシーンだ
十兵衛やゴーガンダンテスといった主要キャラクターの服装や装備のディテールは,HD化されたことでより分かりやすくなっている。ギャラリーには,雨宮慶太氏のデザイン画が高解像度で収録されており,雨宮氏のファンにはたまらない。画面表示も現代風の16:9とオリジナル版の4:3を切り替えられるため,後者にして当時の思い出に浸るのも楽しいのではないだろうか。
『鬼武者2』リマスター ゴーガンダンテス
VIDEO
ギャラリーモードに収録される雨宮慶太氏のデザイン画
HD化されたことで,デザインのディテールまで確認できる
16:9と4:3の画面はいつでも切り替えられる
本作には
「小谷のお邑」「風魔小太郎」「雑賀孫市」「安国寺恵瓊」 といった魅力的なサブキャラクターたちが登場し,アイテムを渡すことで「友情度」を上げられる。友情度の高いサブキャラクターは特定のシーンで助けに来てくれるうえ,ストーリーが分岐することも。
そして,見どころとなるのが彼らの織りなす人間ドラマだろう。もちろんネタバレになるので伏せるが,さまざまな過去と事情を抱えた4人の生きざまにぜひ注目してほしい。
小谷のお邑は,十兵衛が求める五つの球の一つを持つ
風魔小太郎は風魔忍軍の頭領だ
雑賀孫市は銃の名手で,信長に思うところがあるようだ
安国寺恵瓊は僧侶だが,酒と女に目がない
本作にはさまざまなアイテムが登場し,仲間に贈ることができる。アイテムの数も多いし,それぞれに好き嫌いがあるのが面白いところ。同じアイテムでも渡す時期によって友情度の上がり方が違うこともある
信長への復讐を誓う十兵衛に,孫市はその虚しさを説く
恵瓊の願いは一国一城の主になることで,そのためなら非道を繰り返す信長の家来にもなるとうそぶく。もちろんそれには重い理由がある。号泣する理由は自分の目で確かめてほしい
幻魔界最高の剣士・ゴーガンダンテス。決めポーズこそ大げさだが,序盤の十兵衛を軽くあしらう実力を持つ。味のあるキャラクターが揃う本作でも屈指の人気キャラクターで,HDリマスター版の発表時は日本のXで「ゴーガンダンテス」の名がトレンド入りした
こちらも幻魔の一人,ギンガムファッツ。敵方ではあるが憎めないところがある
操作面も現代風にリファインされている。オリジナル版ではキャラクターの向いている方向が「前方」となるいわゆる「ラジコン操作」が採用されていたが,本作では「鬼武者」リマスター版と同様にアナログスティックが使えるようになり,
見た目のままにスティックを動かす直感的な操作が可能に なった。
アナログスティックを使えば,見た目どおりに操作すればいいので分かりやすい
本作は十字キーを使えばオリジナルと同じラジコン操作で遊べるが,本作からシリーズに入門する人や久々に遊ぶ人はアナログスティックでの操作をお勧めしたい。もちろん,当時の操作感のまま遊びたい人はぜひオリジナルの操作で楽しんでほしい。
さらに細かい部分では,
十兵衛の武器もメニューを開くことなく即座に変更が可能に なった。戦闘をスムーズにこなせるようになっており,さまざまな部分でプレイアビリティが向上している。
メニューを開かなくても即座に武器が変更できるようになった
そして何よりうれしいのが
「一閃」 の感覚が当時そのままであることだろう。一閃とは,十兵衛が敵から攻撃を受ける直前にボタンを押すことで発動する
「一撃必殺の攻撃」 だ。狙って出すには練度が必要だが,それだけに強力無比な一撃となる。暴れまわる敵が一閃の光とともに倒れ伏し,血しぶきならぬ大量の「魂」が飛び出すさまが実に痛快である。
アクションゲーム好きの人なら「いかに安定して一閃を出すか」「どれだけ多くの攻撃に一閃を決めるか」を目指して練習を重ねていたはず。筆者もリマスター版を始めた直後,金山の中腹にある坂道で「今度はこの赤い雑魚に一閃をお見舞いする!」などと言いつつ,失敗を繰り返し,なます斬りにされていたが,23年前も同じことをしていたのに気付かされた。優れたシステムは時代を超えて人を引きつける力を持っているということだろう。
一閃のタイミングは敵や技の種類によって異なっており,新しい敵が出てくるたびに修行と上達の面白さを味わえる。この感覚も当時のままであり,先へ進むのが楽しみに感じられる要素となっていた。
「相手の攻撃を受ける直前に入力する」というフィーチャーは,現在で言うところの「パリィ」や「ジャストガード」のはしりである。そして,一瞬の見切り,集中力,緊張感といったキーワードは時代劇における殺陣とも共通している。殺陣をゲームシステムとして表現したのが一閃であると言っていいのではないだろうか。
新しい敵が出るごとに,一閃の練習をしたくなる。HDリマスターではオートセーブが追加されているので,セーブポイントの合間に新しい敵が出ても練習しやすくなっている
ボス戦で一閃を狙う緊張感は格別のものがある。上手くなったはずが叩き潰されることも少なくない
本作には攻撃を食らう直前に出す一閃のほか,ギリギリで攻撃を防いだ状態から反撃する
「弾き一閃」 というテクニックも存在する。本作からプレイする人は弾き一閃から入門するといいだろう。防いだ際に黄色い光が輝くのが成功の目印なので,ここで攻撃を仕掛ければいい。
そして,ぜひとも無防備状態からの一閃はもちろん,一閃のあとにタイミングよくボタンを押すことで周囲の敵にも一閃を決める
「連鎖一閃」 も練習してみてほしい。緊張感と爽快感が心地よく,23年前にここまで尖ったシステムが存在していたことに驚かされるはずだ。
ギリギリで攻撃を防ぐと黄色い光が広がる。ここで即座に攻撃ボタンを押すと弾き一閃が発動する
リマスター版ではサブキャラクターとともに幻魔と戦うアクション主体の
「鬼組」 や,松田さんがシャッポとサングラス姿でフィルムを探す
「黒いスーツの男」 ,パズルを楽しめる
「パズル幻夢空間」 ,難度が下がった
「易しい」 モードを最初からプレイできる。
鬼組は,体力が減り続けるなか,仲間と交代しつつ戦う高難度コンテンツだ。使用できるのはオリジナル同様十兵衛+本編で交代した仲間だけなので,「鬼組クリアを目指して仲間の友情度を上げる」という遊びはそのままだ
黒いスーツの男では,松田さんが持つ「スポンジ棒」は幻魔をダウンさせられるがダメージは与えられない
鬼組,黒いスーツの男,パズル幻夢空間は,オリジナル版だとゲームをクリアしたり,特定アイテムを集めたりと特殊な条件が必要だったため,当時プレイできなかった人にとってもうれしい要素と言えるだろう。
パズル幻夢空間をプレイするには,「美人画」を集めてクリアする必要があった
また,
オートセーブ も用意されており,いざというときの巻き戻しに役立つ。個人的には,ボス戦の前にチェックポイントを入れてほしいと感じられたが,現状でもかなりプレイしやすくなっている。
より手応えを求める人には,オリジナル版にも存在した,敵を一閃でしか倒せない「一閃」に加えて,新モードとなる一撃食らうだけで十兵衛が倒れる
「修羅」 といったやり込みが用意されている。
新登場の難度「修羅」は,攻撃を一回食らうだけでゲームオーバーになる
高難度ゲームに挑戦する楽しさや練習と上達の面白さがクローズアップされている現代だけに,今回のリマスター版は「鬼武者」シリーズを知らない人にこそプレイしてほしいと感じられた。乱戦をはじめとしたギリギリの状態で一閃を狙い,これが上手くいったときの爽快さは現代でも十二分に通用するものがある。
本作をプレイし直し,あらためて2026年の
「鬼武者 Way of The Sword」 が楽しみに感じられたのだ。
十兵衛の前に謎の女が現れる。果たして何者なのだろうか?