壊す手触りの気持ちよさだけで,数十時間のアクションゲームは成立するのだろうか。それとも,破壊を遊びとして持続させるための別の仕掛けが仕込まれているのだろうか。
CEDEC 2026で行われたセッション「『ドンキーコング バナンザ』破壊の連鎖でつながるゲームサイクル」は,壊す行為が次に壊す理由を生むというその循環を,ゲームデザインとプログラムの両面から解きほぐす内容だった。
登壇したのは,任天堂 企画制作部の高橋和也氏と田中 航氏の2名である。
高橋氏は2020年にキャリア採用で入社し,本作ではディレクター兼プランニングディレクターとして,ゲーム全体の仕様のディレクションやステージのレベルデザイン,イベントシーンやテキストを担当した。
田中氏は2007年に新卒入社し,「スーパーマリオギャラクシー2」「スーパーマリオ 3Dワールド」「スーパーマリオ オデッセイ」などにプログラマとして携わったのち,本作でディレクター兼プログラムディレクターを務めている。本作の開発チームは「スーパーマリオ オデッセイ」のチームをベースに構成されており,3Dマリオの開発経験を持つプログラマの視点をゲームデザインへ持ち込んだ点が,本セッションの軸になっていた。
「破壊」をコンセプトに決めるまで――「オデッセイ」後のボクセル試作から
本作のテーマは,ドンキーコングとボクセル技術の2つだと高橋氏は説明する。ドンキーコングの特徴である大きな両腕,その力強さと新しいアクションを前面に押し出しつつ,ボクセル技術によって地形や目に見えるすべてのものにインタラクションできる遊びを目指した,というのが出発点だ。
ボクセルとは,簡単にいえばピクセルの3次元版である。3次元空間にデータの入った箱が並んでいるイメージで,オブジェクト単位よりも細かいボクセル単位でのインタラクションが可能になる。
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この技術自体は,本作で突然採用されたわけではない。「スーパーマリオ オデッセイ」でも,マリオが触れると壊れていく雪や,ハンマーで破壊できる岩といった部分的な用途にボクセル技術は使われていた。ただし,そこにはまだ掘り下げる余地があった。そこで「オデッセイ」の完成後,ボクセル技術を使った試作が行われることになる。
試作では,地形を殴って自由に壊したり,地形から破片を剥ぎ取ってそれを武器にしたり,剥ぎ取った破片を壁に投げてくっつけたりといったことが試された。地形のどこでも壊せることに新しいインタラクションとしての手応えを感じた,というのがこの試作から得られた結論である。
こうしてドンキーコングとボクセル技術という2つのテーマから,本作のコンセプトは「破壊」に定まった。すべてを破壊できる3Dアクションゲームというわけだ。
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ここからが本題である。
開発チームはまず,破壊そのものと,破壊の連鎖に着目した。開発初期に行われた,ボクセルでできた敵の検証動画が示される。左側の動画では,敵のボディがボクセル単位で壊れていく。インタラクションはそれなりに強化されているものの,破壊のゲームとしては物足りない。
そこで右側の動画では,ドンキーコングの力強さを生かして,殴られた敵が吹き飛ぶようにした。すると吹き飛んだ敵によって,今度はボクセルの地形も破壊される。
この破壊の連鎖こそが本作の遊びのコアになると,開発チームは考えた。
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この連鎖は製品版でどう結実したのか。高橋氏は複数の実例を挙げた。敵を破壊すると,吹き飛んだ敵が奥にある金塊にぶつかり,さらなる破壊が起きる。金塊が壊れれば,報酬として大量のゴールドが手に入る。破壊から報酬への連鎖である。
報酬はゴールドやアイテムだけではない。ドンキーコングの行く手がコンクリートの壁で阻まれている場面が示される。この壁は通常のパワーでは壊せない。手前には敵がいる。ところが敵を破壊すると,吹き飛んだ敵が壁を壊し,新しい場所へ行けるようになる。破壊によって新しい場所に行けることも,立派な報酬なのだ。
さらに,すべてを破壊できるという本作ならではの特徴が効いてくる。同じ場面でも,敵が壁に当たらなかった場合には,地形から剥ぎ取った破片で壁を壊せる。壁そのものを壊せなくても,壁の下を掘ってくぐり抜ければ先へ進める。敵も壁も無視して地面を掘り続け,まったく別のエリアにたどり着くこともある。これは破壊から発見という報酬への連鎖だ。いずれも,どこでも壊せる,利用できるからこそ生まれる遊びである。
こうして本作ならではのサイクルが姿を現す。どこでも壊せる,利用できるから,さらなる破壊につながる。それが探索と報酬につながる。報酬があるから,またいろいろな場所を壊したくなる。これが「破壊の連鎖」サイクルだ。
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アクションゲームの5要素すべてに「次の破壊につながる仕組み」を用意する
ではこのサイクルを,どうやって実際に回るものにしたのか。ここからは田中氏にバトンが渡り,プログラマの視点から語られた。
破壊が連鎖するということは,破壊が単発で終わらず,次の破壊につながる破壊を起こすということである。つまり,破壊と破壊の間をつなぐ矢印の部分に,何らかの仕組みが要る。倒した敵が吹き飛んでぶつかった先を破壊するのは,その仕組みの1つだ。だが敵を使って直接的に破壊へつなげるものだけでなく,さまざまな形で次の破壊につながる仕組みを用意するべきだと考えた,と田中氏は語る。
そこでプログラマが取り組んだのが,アクションゲームのあらゆる要素に,次の破壊につながる仕組みを作るという方針だった。ここで言う要素とは,プレイヤーキャラクターであるドンキーコング,カメラ,オブジェクト・敵・NPCといった配置物,コレクションアイテム,そして変身の5つである。これらすべてを,単発で終わらない破壊へつなげていく。
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まずはドンキーコングから。コントローラ操作で動くドンキーコングは,いわばプレイヤーの身体感覚の分身である。破壊のアクションが直感的な操作に結びつけば,プレイヤーは自由自在にドンキーコングを破壊へ導いてくれるはずだ。そう考えて,開発は破壊を直感的な操作に落とし込むところから始まった。
ドンキーコングはパンチで破壊する。太い両腕で地形や敵を壊し,下方向へのパンチで足元を破壊すれば,危険を回避したり地下空洞を見つけたりできる。上パンチは主に壁登りと組み合わせて使い,自由に壁を登れることでいつでも地上へ戻れる。この3方向のパンチを,Joy-ConのY・B・Xという配置にそのまま当てはめた。正面・下・上というパンチの方向とボタンの位置関係を一致させることで,基本の破壊アクションを直感的に覚えられるようにしたわけだ。
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ただし,パンチだけではどこでも破壊できるようになったにすぎず,まだ単発の破壊でしかない。破壊を次の破壊へつなげるには,破壊を利用できるアクションが必要になる。その糸口は,試作段階でボクセル地形を引き剥がして投げていた点にあった。地形を剥ぎ取るという行為は,ドンキーコングがあらゆる場所で行える破壊のアクションである。そこで,剥ぎ取った破片をどう利用させるかが検討された。
製品版では,どこにでもある地形をつかんで投げられる。通常のドンキーコングにはできなかった遠距離攻撃が可能になっているわけだ。破片の使い道はそれだけではなく,振り回せば近距離攻撃が強化され,足場にすれば2段ジャンプができ,移動速度の強化にも使える。アクションゲームで重要な性能である近距離攻撃・遠距離攻撃・ジャンプ力・移動速度を,どこにでもある地形から手に入る破片で強化できるようにしたのである。
ボクセル破片による強化は,それ自体が小さなサイクルを作る。破片によってドンキーコングは強化され,使い終わればまた元に戻る。このゲームでもっとも基本的なアクションが,そのままドンキーコングを強化し,次の破壊へつながる構造になった。
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次はカメラである。一見すると破壊とは関係が薄そうだが,ドンキーコングがプレイヤーの身体感覚の分身であるならば,カメラはプレイヤーの目にあたる。カメラから見える情報はプレイヤーの好奇心の対象であり,カメラを回すことは好奇心が引き起こす重要なアクションだ,と田中氏は位置付ける。
本作では,地形の中にたくさんの空洞が隠されている。破壊の報酬として新しい空間を見つけることは重要な要素だが,壊した壁や床のすぐ先に空洞があるとは限らない。ときには空洞を探して地形の中を掘り進む必要がある。ところが,これはカメラにとって課題の多いアクションだった。対策前のカメラで地形を掘ると,視界はすべて岩に埋まり,何も見えない。その先に空洞があっても,プレイヤーには知る方法がないのである。
そこで用意されたのが地中カメラだ。地表から地中へ掘っていくとカメラが地形に入り込み,画面が暗くなる。この状態になると自由にカメラを回してあたりを見渡せるようになり,地下に埋まった空洞やアイテムがぼんやりと見える。このぼんやりと見えるという情報量が重要だ,というのが田中氏の指摘である。
地中表現を抜いた画像で地形の中を単純に表示すると,オブジェクトが空中に浮いたような見た目になってしまう。はるか先の空洞やアイテムまで視認できるものの,立体感がつかめず,位置関係や距離が分からない。そこで地中カメラではフォグ表現を用い,一定距離を超えたものは見えないようにした。地下空洞のシルエットが強調されることで情報量が整理され,向かうべき場所が明確になる。
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地中カメラにはもう1つ工夫がある。ドンキーコングとカメラの間に自分が掘った道が重なると,道がドンキーコングを隠してしまい視認性が落ちる。これに対して,カメラの手前を遮っている地形を透過させ,ドンキーコングが常に見えるようにした。手前の地形が透けることで,キャラクターと移動経路の両方が分かりやすくなっている。
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この地中カメラが掘り進むアクションを支えることで,ステージのほとんどが地中に埋まっており,ひたすら地下へ向かって掘り進んでいくようなステージも成立するようになった。カメラを回してぼんやり見えた空洞を頼りに地中を破壊し,新しい空洞にたどり着く。空洞から空洞へと,次の破壊につながる破壊ができるようになったわけだ。
3つめの要素は配置物である。ドンキーコングの性能と地中カメラによって地形の中身まで破壊できるようになったが,壊せるものが地形だけでは,破壊をコンセプトとするゲームとしては物足りない。オブジェクトも敵もNPCも壊せるようにする必要がある。
ただし,配置物の遊びがただ壊して進むだけでは連鎖にはつながらない。敵を吹き飛ばしてさらなる破壊が起きるという形以外に,破壊へつながる遊びのバリエーションをどう作るかが課題になった。
これを解決したのが,ボクセルの素材である。配置物もボクセルで作ることで地形と同じように破壊できるようになり,その素材が破壊に変化を与えてくれる。砂のように柔らかい敵なら攻撃を終える前に倒せるが,岩のように硬い敵は倒しきれずダメージを受けてしまう。硬い敵を倒すには,敵が持っていた武器の破片を利用したり,柔らかい敵から連鎖させて破壊したりといった工夫が要る。素材による硬さの違いが,敵の難度や倒し方にバリエーションを与えているのだ。
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素材の使い道はほかにもある。体が氷でできているNPCは,体が再生するため氷の無限の供給源になり,溶岩を冷やすのに使える。逆に供給源が有限であることが遊びになる例として,塩でできた動く床が挙げられた。
塩をぶつければ相手を溶かせるのだが,塩を使うたびに足場が不安定になっていく。足場を取るか破壊を取るかというリソース管理の遊びである。
敵の攻撃手段にボクセルが使われることもあり,酸を吐く敵の攻撃はドンキーコングでは壊せない鉄を溶かしてくれる。敵の攻撃を利用して新しい場所へたどり着けるというわけだ。
すべてをボクセルで作ることで,敵を倒す,破片を手に入れる,足場を守りながら進む,敵の攻撃を利用するといった,さまざまな理由で破壊が起こるようになった。配置物は破壊を起こすきっかけを作る存在として位置づけられている。
4つめはコレクションアイテムだ。本作にはゴールド,化石,バナモンドといったコレクションアイテムがある。ゴールドは消費アイテムを購入する通貨で,化石やバナモンドはドンキーコングを強化できる重要なアイテムだ。これらを破壊につなげるには,地形を破壊した先にアイテムを配置すればよさそうに思える。だが,ポスターが貼られた壁の先に化石があることに,プレイヤーは果たして気づいてくれるだろうか。隠されたアイテムを見つけてもらうヒントが必要になる。
そこで利用されたのが,周囲のゴールドを回収するハンドスラップというアクションだ。ハンドスラップにはソナー効果があり,地形の中に隠れた化石がソナーに映る。ソナーに映った化石を取るために,プレイヤーは自発的に地形を破壊する。アイテム自身が報酬への誘導となってプレイヤーを導き,破壊を促す構造である。
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最後の要素が変身だ。ゴールドにはもう1つ,バナンザ変身のエネルギーという役割がある。ゴールドを取るとゲージがたまり,その状態でドラミングを行うと変身できる。たとえばコングバナンザに変身すると破壊力が上がり,通常のパンチでは壊せないものも破壊できるようになる。変身には制限時間があるが,破壊を進めて破壊を進めてゴールドをためておけば,すぐにまた変身できる。
制限時間付きの強化は破壊を促す良い仕組みのはずだった。ところが,それだけでは不十分だったという。変身を生かせる場所が続かないのだ。変身状態で壊したいものはすぐになくなり,時間を持て余す。制限時間があるためもっと壊したいプレイヤーは,やみくもな破壊に走ってしまった。壊してもらえること自体は悪くないが,できれば次につながる破壊にしたい。
そこで追加されたのが,バナンザ変身の間はソナーが常時発生する,オートソナーの機能である。地中に隠されたアイテムが見えることで寄り道のきっかけが生まれ,地形を破壊する理由ができる。やみくもな破壊が目的を持った破壊に変わり,破壊が報酬へとつながるようになった。
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5つの要素それぞれに,次の破壊につながる仕組みを組み込めた。ドンキーコングは破片による強化と地中カメラのサポートによって,どこでも壊せて利用できるようになる。配置物は素材の遊びで破壊のきっかけを作り,さらなる破壊につながる。コレクションアイテムは自らが報酬への誘導となり,変身は制限時間とソナーによって探索と報酬へつながる。
これらを最初のサイクル図に当てはめたものが,破壊が連鎖する仕組みの正体だ,と田中氏はまとめた。
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報酬を隠し,寄り道を許す――「破壊」のためのレベルデザイン
仕組みが揃っても,それが実際に働く場所がなければ意味がない。セッションの後半は,破壊の連鎖が起きるレベルデザインをどう作ったかに移る。
本作のレベルデザインの大きな特徴は,破壊によって地形の中からさまざまなものが見つかるという,破壊と報酬のサイクルにある。同じ場所の地表部分と中身の部分を並べた画像が示された。一般的な3Dモデリングツールでは,このような中身のある地形を,しかもボクセルで作るのは簡単ではない。地表だけでなく中身まである地形をどうレベルデザインするかが課題だった。
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解決策として選ばれたのは,レベルエディタ上で直接ボクセルの地形を組み立てる方法である。エディタ上でさまざまな形状のボクセルを合成したり,くりぬいたりすることで地形を作っていく。
合成の例として示されたのは,砂の素材を設定した球が土台に埋まるように配置されたケースだ。重なった部分は砂で上書きされ,ゲーム画面では球と土台が合成されて1つの地形になる。掘ってみると,土台を上書きして中身まで砂が詰まっている。
一方のくりぬきでは,球を消しゴムというモードで配置することで,土台と重なった部分のボクセルを削除できる。任意の形状でボクセルをくりぬけるわけだ。この消しゴムを外壁として使い,球の中心に中身の配置を作ることで,地形の中身が組み立てられていく。
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製品規模のステージでは,全体がレイヤー構造のように複数の配置ファイルを重ねて作られている。とくに大きな地下空洞を持つ地形では,地下の巨大空洞を含む部分を別の配置ファイルに分離させることで,地表と地下を分けて作業できるようにしていた。
なお,製品地形を作るワークフローの詳細はエンジニアリングのセッションで,アーティスト視点での解説はビジュアルアーツのセッションでそれぞれ補足されている。
ここで再び高橋氏に交代し,具体的なレベルデザインの手法が語られた。自然地形で構成された箱庭型のステージを例に,レベルエディタ上でボクセルのパーツを配置し,組み合わせてステージのおおまかな形を作っていく工程が示される。ボクセルの自由変形機能や消しゴム機能のおかげで自然な起伏が作りやすく,素材に草や岩などを指定しながら規模を広げ,スタート地点とゴール地点をつなぐメインルートを中心に作り込んでいく。
問題はここからの遊びの配置だ。3Dマリオ開発のノウハウをそのまま使うのではなく,本作にふさわしいレベルデザインを行った,と高橋氏は言う。意識すべきは破壊の連鎖サイクルである。
「スーパーマリオ オデッセイ」と本作の配置コンセプトを比較した図が示された。どちらもスタートからゴールへ向かって一本のメインルートがあり,その沿線で報酬が手に入るという構成は共通している。違いは,その報酬がプレイヤーから見えるものが多いか,見えないものが多いかにある。
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「オデッセイ」の例として挙げられたのは,失われた国のロス島というステージだ。カメラを回していくと,ハテナブロックのほかに紫色のローカルコイン,黄色のパワームーンといった報酬がさまざまな場所に配置されているのが目に入る。一部には見えない報酬もあるが,基本的には見えている報酬をどう取るかがマリオのアクションの課題になる。
対して本作では,メインルートに対して見えている大きな報酬は化石が1つだけで,そのほかに大量の見えない報酬が配置されている。報酬が隠れているため,取るためには地形を破壊する必要がある。これが本作の大きな特徴だ。
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隠れた報酬を見つけてもらうために必要になるのが,田中氏のパートで語られた破壊のきっかけである。本作のレベルデザインでは,このきっかけを適切に配置することがポイントになった。
敵というきっかけがどう作用するのか,実例が並べられた。もっともスタンダードなのは,敵を吹き飛ばすことで報酬を見つけるパターンで,これはレベルデザイナーにとっての想定ルートであり,プレイヤーがもっとも体験しやすい流れだという。
だが想定ルートだけが正解ではない。敵が壁に当たらなくても,散らばったアイテムを取るためにハンドスラップをしてソナーで見つけることもある。敵を倒す前にバナンザ変身をしていれば,オートソナーで見つかることもある。敵の近くに埋めてある金塊は剥ぎ取ると爆弾と同じように使えるので,その爆発で見つかることもある。地形に関するパターンとしては,偶然に報酬へつながる壁を壊してしまうこともあるだろう。この壁は通常のボクセル地形と違い,穴が開くと全体が壊れる仕様になっているため,報酬が見つかりやすい。
こうした発見もレベルデザイナーは歓迎している,と高橋氏は語った。
ドンキーコングと報酬の間に敵というきっかけが入ることで,敵をどう倒すかという選択肢が生まれ,そこから多様な連鎖が報酬へつながっていく。レベルデザイナーが想定した流れはあるが,プレイヤーが必ずしもそれに沿う必要はない。破壊のきっかけによって連鎖の選択肢が増えることが重要なのだ。
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本作のレベルデザインは,破壊のきっかけから報酬へ連鎖するだけでなく,報酬から報酬へ連鎖する構成にもなっている。ミニゲームは,ドンキーコングの肩に乗る少女ポリーンの歌の力で封印を解除する必要があるのだが,この歌には周囲にあるアイテムの場所が見える機能がある。封印の解除がそのまま別の報酬へつながっているわけだ。
ミニゲームを遊んだ後の帰り道でも,倒した敵が復活していて再度バトルをしているうちに壁の奥の報酬に気づき,壁を壊していくとレアな化石にたどり着く。さらに地中カメラの機能によって,下のフロアへの入り口を塞ぐペグが見えてくる。目の前の木箱の中身を拾いつつ地面を掘ってペグの前に到達し,ペグを壊して下のフロアへ行く。このように報酬から報酬へと次々に連鎖していく。
興味深いのは,このペグの発見方法がプレイヤーの遊びかたによって変わることだ。報酬から報酬への連鎖でたどり着くルートのほかに,島を横断する地下通路を進んで通路の先で発見する本来の想定ルートがあり,さらに島の側面から崖を降りていって木箱を見つけた先で発見するルートもある。レベルデザイナーが想定したルートもその他のルートも多数用意されており,それらがすべて報酬につながっている。
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報酬から報酬への連鎖はほかにもある。探索の途中で見つかる音叉は,叩くとチェックポイントとして登録され,ミス時の復帰場所やマップからのワープ先になるためプレイヤーにとって報酬である。その音叉を叩くと大きめのソナーが発生し,バナモンドが見つかる。地形を破壊してから作られる別荘というチェックポイントも同様で,別荘を通り抜けて曲がったところで化石が見つかるといった具合だ。
もう1つ大事な手法として挙げられたのが,連鎖の隙間を埋めるレベルデザインである。本作にはプレイヤーが破壊を存分に楽しめるよう広大な地形が用意されており,メインルート沿い以外にも地表と地中を含めて広い空間があり,その先にも報酬がある。破壊の連鎖を地表と地中の隅々までつなぐ必要があった。
ここで活用されたのが動的配置の仕組みだ。一定のルールに基づいて自動配置される方法のことで,地形を壊すと自動でゴールドが出現し,さらに宝箱も出現する。
宝箱から出た地図によって化石の在りかが分かるが,この化石は宝箱と違ってレベルデザイナーが意図して配置したものだ。化石を取りに行くことで,何もない砂漠からレベルデザインされたエリアへとつながっていく。そして化石の近くには敵がいる。この敵という破壊のきっかけが,また別の破壊の連鎖へとつながっていくのである。
同じ目的で,破壊できる装飾物の配置も行われている。装飾物が吹き飛んだ先で破壊が起き,気になって掘り進めると地下空洞にたどり着く,といった具合だ。
最後に紹介されたのが,安心して寄り道できるレベルデザインである。各ステージにはメインルートがあるが,破壊の連鎖があるためについ別方向へ寄り道したくなる。寄り道した結果,まったく知らないところへ迷い込んでしまうことも少なくない。そこで本作では,来た道をわざわざ引き返す必要がなく,そのまま遊び続けても大丈夫という構成が採られている。
スタート地点が浮島になっているステージを例に説明が行われた。島の中を進んでいくが,メインルートから逸れて寄り道しても,タル大砲でメインルートに合流できる。この島から次の島へ行くにはトロッコに乗る必要があり,1本のトロッコレールで必ずメインルートに合流する構成だ。次の島でも同様に探索の自由があり,またトロッコレールで合流する。つまり浮島どうしの間でメインルートに合流する仕掛けになっている。
そして本作はゲーム全体を通して下へ下へと向かう構成で,フロアが縦に連なっている。縦に長いトンネルを通って下のフロアへ移動し,そのフロアを自由に探索したらまたトンネルで移動する。フロア内をどれだけ自由に探索していても,縦のトンネルを通ればメインルートに合流できる。安心して寄り道できることが,心理的にも破壊の連鎖につながっているのだ。
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レベルデザインの手法は4つにまとめられた。メインルートを設定して破壊のきっかけから報酬へ連鎖する構成を作ること。その報酬から別の報酬へ連鎖する構成を作ること。宝箱の動的配置や装飾物の活用によって地表と地中の隅々まで破壊の連鎖をつなぐこと。そして安心して寄り道できる構成にすること。以上が破壊をコンセプトとした本作のレベルデザインである。
セッションの締めくくりとして,両氏は本作の開発ではゲームデザインと技術の両面からアプローチすることが重要だったと振り返った。プランナーとプログラマがこうして並んで登壇していること自体がその証左であり,ゲーム内の連鎖だけでなく,開発チーム内のさまざまなセクション間でも協働によるアイデアの連鎖が起きたのだという。
それぞれの領域から破壊の連鎖の遊びを追求することで,本作のゲームサイクルは完成した。ボクセル技術によって目に見えるすべてを破壊でき,あらゆる形で連鎖してあらゆる報酬につながっていく。破壊が楽しいから,もっと破壊して遊びたくなる。それが「ドンキーコング バナンザ」の破壊の連鎖でつながるゲームサイクルなのだ,というのが両氏の結論だった。





















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