| 伊藤賢治氏 1968年生まれ。作曲家,ピアニスト。4歳より始めたピアノにて音楽に親しみ,1990年に当時のスクウェアに入社。「サガ」「聖剣伝説」といった人気シリーズの楽曲を手がけ,メロディアスなその楽曲は氏の愛称にならって“イトケン節”と呼ばれる。2005年に同社を退職しフリーランスとなった後も積極的にゲーム音楽を手がけ,近年では「パズル&ドラゴンズ」のヒットが記憶に新しい。最新作は,ヒャダインこと前山田健一氏と共作した「乖離性ミリオンアーサー」の音楽 「伊藤賢治公式サイト gentle echo」 | 田中公平氏 1954年生まれ。作曲家,編曲家,歌手。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。アニメでは「勇者王ガオガイガー」「ワンピース」,ゲームでは「天外魔境」シリーズや「サクラ大戦」シリーズ,「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」といった,著名タイトルの音楽制作を多数担当している。4月上旬にはパリでの演奏会を成功させるなど,近年は世界中での公演活動も積極的に行っている。伊藤氏と楽曲を共同で制作した「パズドラ バトルトーナメント」が近日稼働予定 「田中公平のブログ My Quest for Beauty」 |

アニメやゲーム音楽のコンサートというと,オーケストラやバンド形式のものがほとんどだが,このコンサートでは国内トップクラスの吹奏団である,東京佼成ウインドオーケストラが演奏を担当。
ブラスバンド用にアレンジされた両氏の代表曲の数々が堪能できるだけでなく,中川翔子さん,きただにひろし氏,富永TOMMY弘明氏ら多彩なゲストが出演。
さらには,川村竜バンドと田中氏,伊藤氏による“オマケの3部”まである豪華な内容となっている。
そこで,コンサートの主役である田中氏,伊藤氏のお二人に,コンサートを企画した意図や,意気込みを聞いてみることにした。コンサートについてだけでなく,多くの人が学生時代に触れるブラスバンドについて,そこにアニメやゲーム音楽を“刷り込む”手段について,そしてお互いの仕事術といった具合に話は広がり,なかなかボリュームのある記事になっているが,ぜひ最後までお楽しみいただきたい。
BRASS UP!Z〜!!
《ブラスサウンドで知る田中公平と伊藤賢治の正体》
〜おまけライブ付きだよ〜
[会場]東京芸術劇場 コンサートホール
[時間]開演16:00/開場15:00
[演奏]東京佼成ウインドオーケストラ
[指揮]渡邊一正
[演奏曲目]
◆1部,2部
・ガンバスター交響詩(「トップをねらえ!1,2」より)
・ジョジョ〜その血の運命〜(「ジョジョの奇妙な冒険」より)
・交響組曲「ONE PEACE」(「ワンピース」より)
・オーバーチュア〜オープニングタイトル〈メドレー〉
(「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」より)
・四魔貴族バトル〈メドレー〉(「ロマンシング・サガ3」より)
・バトル #4(「サガ フロンティア」より)
・プロローグ(「カルドセプト セカンド」より)
・パズドラメドレー(「パズル&ドラゴンズ」/「パズドラZ」より)
ほか
◆3部:曲目未定
[3部演奏]
田中公平/伊藤賢治/川村竜バンド
[ゲスト]
中川翔子 きただにひろし 富永TOMMY弘明
[主催]
株式会社文化放送 株式会社イマジン 伊藤賢治 江原大介
[協賛]
株式会社さくらソフト
[協力]
株式会社ワタナベエンターテインメント 有限会社レイネット
アニメやゲームコンサートとしては
珍しいブラスサウンド
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
そもそも田中さんと伊藤さんは,何をきっかけに交流するようになったんでしょうか?
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「DEMONS’ SCORE」(iOS / Android)からやね。
伊藤賢治氏(以下,伊藤氏):
そうですね。時田(貴司)さんがプロデュースしたスマホ用音楽ゲームの。
田中氏:
時田さんがいろんな作曲家に集合をかけたんですよ。ヒャダインこと前山田健一君を含めてね。
そこで「あ,イトケン君も入ってるんだ」と知って,ちゃんとお会いしたいなと時田さんに取り持ってもらって。その場には下村さんもいたね?
伊藤氏:
そうでした,下村陽子さんもいらっしゃいました。
田中氏:
そこで「今度,何かやる?」みないなノリで(今回のコンサートが)決まりまったんです。
伊藤氏:
けっこう軽いノリで決まりましたよね(笑)。
田中氏:
もっとも,その時点では何をするか具体的じゃなかったんですけどね。
今回のコンサートは,企画者である江原大介君という編曲家が積極的に動いてくれたんですよ。彼は元々,私が作曲している「かいけつゾロリ」なんかの編曲を手伝ってくれていて。その彼はブラスの編曲が得意なんだけど,実はイトケン君にあこがれて音楽業界に入ったという逸話の持ち主で。だから私とイトケン君のコラボコンサートをやりたいと。
東京佼成ウインドオーケストラと話をつけたのも彼だし。一番すごいのは東京芸術劇場を取りよったもんね!
伊藤氏:
2000人規模の会場を本気で抑えましたからね。
田中氏:
しかも日曜日にね。それが1年位前の話で,会場を抑えたからには,そりゃやらないけない。
伊藤氏:
気付いたら逃げられない状態になってましたよね(笑)。
4Gamer:
今回はブラス(※)コンサートですが,ゲームやアニメ系だと非常に珍しいですよね。
※ブラス:木管楽器と金管楽器を主体とした編成。打楽器はもちろん,弦楽器のコントラバスが加わることも多い
伊藤氏:
オーケストラコンサートとしては「PRESS START」(※)があるんでね。それとは違うことをやろうという意図は最初からありました。
※竹本泰蔵氏(指揮者),植松伸夫氏(作曲家),桜井政博氏(ゲームデザイナー)、野島一成氏(シナリオライター),酒井省吾氏(作曲家)が企画者として2006年から毎年公演をつづけているオーケストラコンサート
田中氏:
それにブラスのコンサート自体で,ゲーム音楽やアニメ音楽を扱うことが少ないんですよ。これはいつも言ってることなんですけど,今アニメ好きな人が増えているにも関わらず,ブラスで演奏されるアニメの曲はずっと同じ。高校野球を見ていると分かりますけど,「宇宙戦艦ヤマト」だったり「ルパン三世」だったり。せいぜい新しくて「新世紀エヴァンゲリオン」の「残酷な天使のテーゼ」。なぜかといったら,ちゃんとした楽譜が出版されていなからなんです。
4Gamer:
主題歌だけでも出版されるかされないかぐらいですよね。
田中氏:
ええ。なので私は,自分の楽曲の楽譜出版を3年くらい前から少しづつ進めているんです。今度の5月14日には,私の代表曲を航空自衛隊航空中央音楽隊に演奏してもらった「田中公平 オン・ブラス!」というCDを発売するんですが,これと時期を合わせて譜面も出します。そうすることで,演奏してくれる機会が増えるだろうと。
4Gamer:
なるほど。
田中氏:
それでね,アニメですらそんな状況なんだから,ゲームの音楽がブラスで演奏されることなんて,まったくと言っていいほどないんです。
伊藤氏:
そうなんですよ。
4Gamer:
吹奏楽用に出版されている現代曲の譜面もあるにはありますが,編曲がワンパターンというか……。
田中氏:
ね。でも私のは,ちゃんと編曲を監修しているのでキチンとしたものになっていますよ。CD収録で航空自衛隊航空中央音楽隊が演奏する「ガンバスター交響曲」を聴きに行ったけど,すごく格好良かった!
だからね,ゲームの曲をブラスで聴ける今回のコンサートは画期的なんですよ。「パズル&ドラゴンズ」(iOS / Android)なんかタイムリーなんで,いいんじゃないかと。だからね,イトケン君も楽譜の出版を考えておいてくれると嬉しいですよ。
伊藤氏:
そうですね。ガンホーさんに相談してみます。
田中氏:
オッケーって言ってくれればね,あとはこちらでやるので。
4Gamer:
田中さんの楽曲はトランペットが印象的に使われていることが多いので,何となくイメージできるんですけど,伊藤さんの楽曲にどんな編曲が施されているのか,うまく想像できないのですが……。
田中氏:
確かにイトケン君の曲だと,パズドラはまだしも「ロマンシング サ・ガ」なんか,ラッパのイメージあんまりないですね。
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ええ。ストリングス(※)とブラスの部分が五分五分ですね。ですから,ストリングスをブラスに置き換えてどういう“鳴り”になるかは,江原君の腕の見せどころですね。
※ヴァイオリンなどの弦楽器
4Gamer:
今回の演奏予定曲の中には,原曲がギターの入ったロック寄りのものもありますが,それがブラスでどう演奏されるのか,興味があります。
伊藤氏:
そこはもう,お楽しみに! という感じで。
田中氏:
まさに現在も編曲の真っ最中なんです。私の場合は,オーケストラアレンジのものをブラスに手直ししてもらって,それを監修しています。
伊藤氏:
僕も同様に,編曲してもらった自分の楽曲を監修しています。あとは……オマケの第3部ですね。さっき田中先生から聞かされたんですけど,オルガンをソロで演奏するパートがあるんですよね(笑)。
田中氏:
アドリブでやればええんよ,アドリブで(笑)。
伊藤氏:
(困った表情で)もうどうしようかと思って。今から打ち込みを用意しておこうかなって(苦笑)。
田中氏:
ドンカマ(※)使わないからずれるよ(笑)。
私はね,生演奏にはあまり打ち込みを使いたくないんですよ。打ち込みを使えばクオリティは高くなるんですけど,テンポが揺れたりするのが生演奏の一番面白い部分じゃないですか。
※バンド演奏でテンポをあわせるためのクリック音
4Gamer:
確かに! では,田中さんから見て,伊藤さんのプレイヤーとしての腕前はいかがですか?
田中氏:
彼のコンサートで一回しか見たことがないんだけど,「ちゃんと弾くやん!」って。あれだけ弾けるなら大丈夫ですよ。
伊藤氏:
頑張ってるつもりです(苦笑)。
4Gamer:
伊藤さんの笑顔がひきつっているようですが(笑)。
伊藤氏:
(鍵盤を弾く仕草をしながら)先生が「こうやってこうやれば簡単だよ!」っておっしゃるんですけど,「全部16分音符ですか!?」みたいな。いよいよ追い詰められたら,マイクを掴んでラップをするしかないかなって(笑)。
田中氏:
そのほうが難しいよ(笑)。
伊藤氏:
あとは(お客さんにマイクを向けるポーズをしながら),こうね!
(一同爆笑)
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田中氏:
あはは。話を戻すとね,元々ブラスで二部構成にする予定が,打ち合わせをしているうちに盛り上がって,もっと何かしようよってね。最初はお客さんが帰ったあとにちょっとオマケで……みたいなことだったのが,「それは見せなきゃもったいない」となってどんどん膨らんでいって。いい迷惑ですよ(笑)。
4Gamer:
演奏予定が1部60分,2部60分,3部60分と均等で,思わず「3回興行ができるんじゃ」と思ってしまいました(笑)。
伊藤氏:
確かに,そういうボリュームですよね。
田中氏:
発表してないんですけどね,3部にはゲストのミュージシャンが何人か出演しますよ。そこでイトケン君のオルガンソロが聴けるはず。
伊藤氏:
参ったなぁ……(苦笑)。
4Gamer:
この取材中にも,伊藤さんがどんどん追い込まれているような……。
ちょっと話を戻しますが,今回のコンサートの選曲は,どういう基準で行ったんでしょうか?
田中氏:
私のほうは,すでにオーケストラなんかの譜面はあったので,それをベースにしてます。
伊藤氏:
僕のほうは持ち曲をズラッと並べて,そこから取捨選択していった感じですね。ちょうどパズドラがヒットしたタイミングで,田中先生ともアーケード版でご一緒できたという“ご縁”もあって。
田中氏:
パズドラが入って本当に良かったですよ。それがなければナツメロっぽかったのが,曲目が引き締まって“今”になった。
伊藤氏:
先生の「ワンピース」もそうですけど,自分としてはパズドラの楽曲が入っていることで,家族連れや子供達にも来て楽しんでほしいんです。
田中氏:
4Gamerはあまりファミリー層は読まないと思うけどな(笑)。
でも,ゲームやアニメで育った人たちが子育て世代になっているから,そういう人達が来てくれたら嬉しいね。
しょこたんも出るんだけど,ライブでの共演は初めて?
伊藤氏:
そうですね。
田中氏:
イトケン君がしょこたんと仕事をするのを知らずにこの企画を進めていたら,「今度しょこたんと仕事するんです」っていうからビックリして。だったらコンサートに出てくれない? って相談してみたら快諾してくれてね。
4Gamer:
いろんなことがタイミングよくはまっていった感じですね。




















