Summer Game Fest 2026のメディア向けデモで,Klang Gamesが見せた永続オンライン惑星「SEED」は,正気とは思えない野心作だった。本稿では,開発者によるハンズオフデモの内容を紹介する。
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「SEED」がどういうゲームなのかを一言で説明するのは難しい。Klang Gamesの面々も,最終的には3つの既存タイトル名を借りて説明していた。
「ザ・シムズ」のように住人の生活をのぞき込み,「RimWorld」のように社会を運営し,「EVE Online」のように1つの世界をすべてのプレイヤーが共有する。この3つを足して1つにしたものだという。
ここで重要なのが,単一シャード※という仕組みだ。一般的なオンラインゲームは,同じ世界のコピーを複数のサーバーに分けて立て,プレイヤーをそこに振り分ける。だが「SEED」にはコピーが存在しない。Avestaという名の惑星はこの世にただ1つで,世界中のプレイヤー全員が文字どおり同じ地面の上で暮らす。
誰かがある場所に建てた家は,地球の裏側のプレイヤーから見ても同じ場所に建っている。だからこそ,冒頭の「パン買い占め事件」のような騒動が,世界全体を巻き込む形で起こりうるわけだ。
※単一シャード……世界を複数のサーバーに分割(シャーディング)せず,ただ1つの世界に全プレイヤーを収容する設計。「EVE Online」がこの方式で知られる。技術的な難度は跳ね上がるが,「全員が同じ歴史を共有する」という体験はこの方式でしか生まれない
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そしてこの惑星には,プレイヤーではない住人が暮らしている。シードリングと呼ばれる自律AIたちだ。彼らはプレイヤーがログインしているかどうかとは無関係に,24時間365日,サーバー上で勝手に生活している。仕事に行き,腹を空かせ,恋をし,ときにいさかいを起こす。プレイヤーが眠っているあいだも,惑星の時間は止まらない。
ではプレイヤーは何なのか。Klang Gamesは,プレイヤーをcultivator(栽培者)と呼ぶ。神でも王でもなく,栽培者だ。シードリングを直接操作するのではなく,環境を整え,導き,育てる立場である。植物に水をやるように住人の世話をする,というニュアンスらしい。住人が主役で,プレイヤーはその生活を後ろから支える――この距離感が「SEED」の肝だと感じた。
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Avestaという惑星には,最初から都市が建っているわけではない。建築物も,土地の区画も,採掘される資源も,それらを加工する複雑なクラフトツリーも,すべてプレイヤーの手によって生み出される。デモで見せられた街並みも,運営が用意した書き割りではなく,プレイヤーたちが少しずつ積み上げてきたものだという。
その上に社会が乗る。プレイヤーは「ソサエティ(社会)」を設立できる。求人を出し,給料を払い,ビジネスを興す。政府を作ることもでき,その形態は民主制から独裁制まで幅がある。
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マーケットは需要と供給で価格が動き,社会と社会のあいだでは交易が成立する。冒頭の事件で「政府が税率を100%にして富豪を破産させた」というのは,こうした政治・経済システムが実際に機能していることの証左だ。誰かが市場を独占すれば,それに対抗する政治的な動きが生まれ,その政治がやりすぎになれば今度は市民が反旗を翻す。人間社会で起きることが,そのままゲーム内で起きる。
なお,シードリングとのやりとりは,自然言語で行える。プレイヤーが文章で話しかけると,シードリングは文字で返事をする。デモで印象的だったのは,彼らが必ずしも言うことを聞かない点だ。
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開発者がモバイルアプリ※から1人のシードリングに「調子どう?」と話しかけると,「図書館にいる。トイレに行きたい」と返事があった。そこで「トイレ行きなよ」と促したのだが,そのシードリングは一向にトイレへ向かおうとしない。彼らには彼らの都合や気分があり,プレイヤーの指示は絶対ではないのだ。
※モバイルアプリ……「SEED」は専用のスマートフォンアプリを備え,PCの前にいなくても外出先から惑星の様子を確認したりシードリングとやりとりしたりできる。アプリ内にはSparkと呼ばれるゲーム内SNSも実装されており,惑星上の出来事が流れてくるという
もう1つ紹介された場面では,開発者があるシードリングに「Asanteのところへ行って,今俺たちが見られていると伝えて」と指示した。するとそのシードリングは自律的に動き出し,伝言が伝わった結果,シードリングたちのあいだに妙な噂が広がり,関係性が悪化していった。プレイヤーの何気ない一言が,AIどうしの社会関係に波紋を起こす。シナリオの分岐ではなく,住人たちの判断の積み重ねがそのまま物語になっていく感覚だった。
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シードリングの作り込みは生活の表層だけにとどまらない。彼らには健康システムがあり,骨格から臓器のレベルまで状態が管理されているという。そして寿命がある。現実時間でおよそ3か月をかけて,シードリングは120歳まで年を取り,老いていく。
その一生のあいだに,恋愛があり,ライバル関係があり,子が生まれ,そして死ねば相続が発生する。世代をまたいで社会が続いていくわけだ。3か月で一生が終わるということは,プレイヤーが世話をしてきた住人を看取る日が必ず来るということでもある。永続する世界の中で,個々の住人だけは有限の時間を生きる。この非対称性が,本作に独特の手触りを与えそうだ。
「SEED」の早期アクセスは,2026年7月21日に開始される。当初は独自ランチャーでの配信となり,その後2026年秋にSteamでの配信が予定されている。価格は29.99ドルの買い切りで,対応プラットフォームはPC。
日本語ローカライズは,将来的に計画はあるとのことだったが,時期は未定だ。現時点では,まずは英語環境でこの惑星に降り立つことになる。
開発元のKlang Gamesは,ベルリンとマドリードに拠点を置く90名規模のスタジオだ。CEOはアイスランド出身のMundi Vondi氏。共同創業者2名も同じくアイスランドにゆかりのあるメンバーで,いずれも「EVE Online」を手がけたCCP Gamesの出身だ。単一シャードの永続世界という発想の根に「EVE Online」があるのは,こうした創業メンバーの経歴を知れば腑に落ちる。
デモで筆者が見たのは,3つの巨大なシステム――生活シミュレーション,社会経済,そして永続オンライン――を1つの惑星の上に同居させようとする試みだった。シードリングという自律AIが24時間365日生き続け,プレイヤーは栽培者としてそれを導く。パンの買い占めが政変を呼び,トイレを促されたAIがそれを無視する。脚本ではなく,住人たちの判断の積み重ねから物語が立ち上がる仕組みが,少なくともデモで語られた範囲では確かに動いているように見えた。
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とりわけ印象に残ったのは,プレイヤーがこの世界の「神」ではないという設計思想だ。栽培者という言葉が示すとおり,プレイヤーにできるのは環境を整え,導き,待つことであって,住人を意のままに操ることではない。指示を無視されるという,普通のゲームならストレス要因にしかならない要素を,本作はあえて中心に据えている。
思いどおりにならない他者がそこにいるという感覚こそが,「SEED」が売ろうとしている体験の核心なのだろう。
パンの買い占めで首相が失脚したという,ばかげたエピソードが,脚本ではなくシステムから生まれる。それが本当に毎日のように起こる世界なら,Avestaへ降りる価値は十分にありそうだ。











































