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  • devCAT Studio
  • 発売日:未定
  • 価格:基本プレイ無料+アイテム課金
    ※2025年3月27日:韓国サービス開始
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「スキップしても,物語は続いている」――「マビノギモバイル」が挑む“読ませず,体験させる”メインクエスト制作術[NDC26]
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印刷2026/06/17 17:09

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「スキップしても,物語は続いている」――「マビノギモバイル」が挑む“読ませず,体験させる”メインクエスト制作術[NDC26]

 NEXON Koreaのカンファレンスイベント「Nexon Developers Conference 26(NDC26)」では,「マビノギモバイル」iOS / Android / PC)を手がけるdevCATのナラティブ制作チームのキム・ヘジン氏と,ストーリーチームのチョ・ソルビン氏による講演「Oops, I Slipped and Skipped It(わたし手が滑って,飛ばしてしまった)」が行われた。
 ストーリーチームが世界観と物語を設計し,ナラティブ制作チームがその意図を生かしてプレイへと落とし込む。物語がプレイとして成立するよう両チームが緊密に協力してきたため,発表も2人で行うことになったという。

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※「マビノギモバイル」メインクエストの展開や主要シーンに関するネタバレが含まれるので,プレイ前にストーリーに関する知識を入れたくない人は注意してほしい

 まずチョ氏が,変化した時代背景を整理した。発表で示されたデータによると,韓国国内のショートフォーム利用率は2024年時点で70.7%,YouTubeショートは利用者の81.7%(10人中8人)に達する。
 一方で,画面に集中していられる平均時間は47秒と,この20年で3分の1以下にまで短くなったという。コンテンツがより速く,より短時間で消費される以上,物語の伝え方も変えなければならない。

devCATストーリーチームチョ・ソルビン氏
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 その舞台となるモバイルは,「アクセスのしやすさ」が最大の利点だ。携帯さえあればどこでも気軽に遊べる。だが物語を届ける側にとっては,この長所がそのまま短所にもなる。
 プレイ環境は人によってさまざまで,同じ端末の中にはショートフォームもSNSも他のゲームもあり,離脱しやすい。アクセスしやすい一方で継続性が低く,物語は流し見されがちなのだ。

 そうした瞬間にも物語を届けるには,どうすればよいのか。両氏が出した答えが「物語を“体験”してもらう」だった。簡単に読めて内容は濃く,その内容自体をプレイとして成立させる。
 誰かに読まれるのを待つ物語ではなく,体験の中に自然に溶け込む物語こそ,ショートフォーム時代のモバイルMMORPGナラティブが進むべき方向だとした。

 では,どんな物語を届けるのか。執筆にあたっての最初の目標は「マビノギの世界観という大枠は維持しつつ,モバイルならではの新しい物語を見せる」ことだった。
 すでに知られた世界,すなわちIPの力は,経験として蓄積されたデータのようなもの。なじみのある要素に触れれば,長い説明なしに素早く没入できる。とはいえすべてが同じでは新しさがなく,興味も薄れてしまう。

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 そこでチョ氏らは「新しさ」を,登場人物の新たな役割と関係性に求めた。
 たとえばタルラークは,原作では身体的な限界から受け身のサポート役だったが,モバイルでは「マビノギ英雄伝」由来の人物の助けでその限界を克服し,自ら積極的に動くようになる。そしてその変化から,新たな関係や出来事が生まれていく。
 加えて「マビノギデュアル」「ハスキーエクスプレス」「マビノギ英雄伝」「マビノギ」といったシリーズ作品のシーンや設定,アイテムを再解釈して溶け込ませることで,懐かしさと新しさが同居する楽しさを狙ったという。

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 届け方で最も重要だったのは「何を足すかではなく,何を削るか」
 まずテキスト量に着手した。NPCの頭上に出る吹き出しは2行を超えないよう平均18文字とし,短く書くこと自体ではなく,短くても内容が伝わることを重視した。
 吹き出し1つの中で1つのテーマと目的が完結するよう構成し,途中で中断・再開しても会話の流れを見失わないようにした。

 さらに,画面下部の「ボタンテキスト」を活用した。既知の内容は省いて素早く次へ進めるようにしつつ,没入が必要な場面では選択行為そのものを物語への参加に変えた。
 長い説明の代わりに画像1枚で状況を理解させ,下部の短いメッセージで状況説明や目標を補うことで,会話が間延びしないよう調整したという。

 情報量の調整では,ターゲット層に注目した。「マビノギモバイル」は老若男女が気軽に楽しめることを目標としており,ゲームやファンタジーに不慣れな人も負担なく没入できる必要がある。そこで事前知識が要る固有名詞や複雑な設定を減らし,直感的に理解できる表現へ置き換えた。
 象徴的なのが,ケルト神話由来の「フォモール」を「魔族」と言い換えた例だ。「魔族」と言えば,長い説明なしに"対立する勢力"だと推測できる。
 同様に「リアパル」は「古代の叡智」,「アダマンティウム」は「壊れない鉱石」へと置き換えられた。情報の難度を下げることで説明が減り,進行の冗長さや学習疲労を抑えられるという。

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 次にチョ氏は,方針を実際の物語へ落とし込んだ例として「女神降臨」第3章「パラディン」編を挙げた。
 この章は残すべき核心イベントがどれも大きく,騎士団入団の理由から騎士団生活,離脱の理由,精霊との出会い,試練,祝福,主要人物との対立まで,語るべきことが膨大だった。モバイルで全てを細かく説明するのは不可能だ。

 そこで,まず章ごとにプレイヤーにとっての中核体験をまず定義した。
 第3章のテーマは「なぜパラディンにならねばならないのか,その存在とは何か,どうすればなれるのか」。よって“パラディンへ覚醒していく体験”を中心に物語を膨らませ,そこから外れる要素は削った。
 政治勢力と騎士団の癒着・陰謀は内容を圧縮してクエスト各所に短く散りばめ,露出頻度を上げる形にした。

 そしてメインの筋から外れる精霊と人間の恋愛パートは省き,それに紐づく「理想の相手探し」やパラディンの鎧の作り方といった要素もまとめてカットした。
 代わりに,プレイヤーが自ら悩み選択し「光の騎士とは何か」の答えを探る流れに集中。道中で出会う騎士団の仲間は単なる情報伝達役ではなく,旅を支え励ます存在とし,終章での覚醒に大きな達成感が伴うよう設計した。

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 もっとも,何かを足せば必ず別の何かを削らねばならない。
 事件中心の展開はテンポを上げる一方で補足説明が減り,感情理解や没入感が弱まる。逆に人物の説得力や感情の流れを強めればテンポが落ち,プレイヤーが脇役のように感じてしまう。
 モバイルのストーリー作りは,没入感とテンポの間で絶えずバランスを取る作業だったという。

 そこで両氏は,キャラクターが直接セリフを話さなくても物語を伝える方法を模索した。
 1つめは,任意で読める書籍・手紙・アイテムカードだ。「光の騎士ルラバダ」の説明をNPCにすべてしゃべらせると7回タップが必要になるが,本にまとめれば1つの吹き出しで済む。ただし物語理解に読書が必須となる構造は避け,あくまで世界観を豊かにする補助に留めた。
 2つめは背景の活用。小道具やインタラクションポイントを調べるプレイで空間の物語を間接的に伝え,探索の楽しさも生む。これらも必須進行要素ではないため,見たくない人は離れてよい。
 3つめは,サウンドやアニメーション,カットシーンといった視聴覚要素だ。表情・動作・音声で感情を豊かに伝え,BGMで雰囲気を演出した。

 肝心なのは,全情報を必ず読ませることではなく,選んで読めるよう設計することだ。もっと知りたい人には細かな設定を,そうでない人にも大まかな流れを。それぞれのやり方で物語を体験できるようにする,という思想である。

 後半はキム氏が,文章で書かれた物語をプレイシーケンスへ落とし込む工程を語った。テキストだけでは見えない“補うべき点”を,さまざまなプレイ要素で埋めていく。
 短時間で没入できるプレイを作るための答えは,大きく3つの軸に整理されたという。

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 1つめは「ナラティブ演出」。展開の隙間を埋め,短い出会いでもキャラクターを印象づける。
 例として挙げられたのが,第3章のパラディン・アドベンチャー班だ。実装してみると,メンバーと心を通わせる時間が短く情が湧く前に別れてしまう点と,他人に化ける「ドッペルゲンガー」の脅威がプレイヤーに伝わっていない点が見えてきた。
 そこで,合流前に短く顔を合わせるシーン,互いの決意を確かめ合う「誓約の杯」シーン(離脱シーンにも同じ構図を用い感情を接続),そしてドッペルゲンガーを直接追跡するミッションを追加。いずれも“長く説明せず,短くてもプレイヤーに直接体験させる”という共通の方向性を持つ。

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 2つめは「プレイテンポ」。モバイルではシーケンスを短く区切ることが多く,同じプレイが繰り返されるとパターンを覚えられ,物語への期待感も薄れる。
 そこで「プレイの変奏」を導入した。同じ“選択肢を選ぶ”形式でも,手がかりから状況を推理する場面と,文様を見て線を引く方向を直感で当てる場面とでは体感が異なる。
 変奏シーケンスの設計原則は,既存と異なる体験を提供する/観覧ではな直接参加させる/失敗の負担を最小化する,の3点だ。
 これに基づき,集中度の高まる「受動操作型」,世界観や生活感を伝え失敗概念のない「ミニゲーム形式」,予想を裏切る「変わった演出」の3タイプを定義し,反復区間に適切に挿入してテンポをリフレッシュした。

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 3つめは「プレイテーマ」。テキスト説明に頼れないなら,プレイそのものを物語にする。章ごとにコアとなるプレイキーワードを設定し,第3章は「選択」,第4章は「闘争」,第4章外伝は「浄化」とした。
 「選択」では随所に選択の瞬間を盛り込み,立ち止まる一瞬の集中を物語への没入に変えた。「闘争」ではプレイヤーが事件を追跡する主体になるよう設計。
 各章序盤で女神に会っていた場所に,第4章序盤では女神がいない。本来は後半のどんでん返しの一部だったこのシーンを序盤へ再配置し,「え,何だ?」という好奇心から説明なしに追跡を始めさせた。
 「浄化」では主要アイテム「魂の剣」を碑石の復元から最終決断まで一貫して登場させ,説明ではなくプレイの反復を通じて“浄化の道具”という意味を積み上げた。

 3軸の効果も率直に共有された。ナラティブ演出を取り入れた第3章以降は,次の物語への期待や新キャラへの好感を示す反応が大きく増えた。プレイを通じてナラティブが伝わり,それが次への期待につながったということだ。

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 一方でプレイテンポの「変奏」は,すべてが意図どおりではなかった。新しいプレイ体験を楽しむ肯定的な声がある半面,緊張感が高まった瞬間にプレイの種類が切り替わって流れが途切れる,という逆方向のフィードバックも出た。
 「なぜ今このプレイが入るのか」という意図が伝わらないと,気分転換ではなく“文脈の断絶”として受け取られ,没入を損ないかねない。ここから得た教訓は明確で,ナラティブの緊張が高い瞬間は,短い気分転換よりも没入維持を優先すべきだという点だ。
 以降は反復疲労の軽減と流れの維持を同時に考え,より慎重に設計しているという。

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 プレイテーマでは「選択」が最も印象的な効果を生んだ。
 鍵は,“正解のないジレンマ的選択肢”を提示すること。どれを選んでも事実上の正解にならないよう,他の分岐でも報酬を得られるルートを用意した。
 結果,選択をめぐる議論が自発的に生まれ,報酬分岐を自分で見つける反応も見られた。正解のない選択は,その場で消費されて終わらず,没入の最大化や自発的な議論・再プレイへと広がっていったという。

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 視点を広げ,章全体の構成とプレイのしやすさにも触れた。第3章の制作に先立ち前章のフィードバックを確認したところ「短すぎる」という声が多く,第3章ではボリュームを増やした。だが今度は「詰め込みすぎで展開の必然性が薄い」という指摘があった。
 そこで第3章以降は量を少し抑え,流れと物語の必然性に注力。物足りなさの声もあったが,全体としては好意的な反応を得た。

 ここで両チームは発想を転換した。物語の規模から分量を決めるのではなく,まず分量=“器の大きさ”を決め,その中で高密度に設計する
 具体的には,既存の全プレイシーケンスを演出規模,制作難易度,効率,所要時間でランク分けし,章内での各ランクの配置割合を基準化した。そしてこれを企画段階から適用することで,最初に物語規模の上限を決めたうえで密度の高い設計が可能になった。
 結果,章ごとの体験の質のばらつきが減り,開発チーム内に共通基準が生まれ協業効率も向上したという。

 最後の課題が「利便性」だ。
 ライブサービスはアップデートが重なるほどコンテンツ負担が増え,スキップしたくなるのは自然な反応でもある。そこで両氏は逆転の発想で,「スキップしたくならないよう,先にスキップ機能を手厚く用意する」ことを選んだ。いつでもスキップできる選択肢を用意して心理的負担を軽減したのだ。
 ストーリースキップシステムを導入して基本のプレイ利便性を高め,必須の前提クエストを減らして新規ユーザーがメインクエストに入る負担を小さくした。さらにスキップを充実させた分,見逃した内容を後から確認できるよう,重要シーンのリプレイ機能も開発中だという。

 締めくくりは,チョ氏が担った。
 この発表で伝えたかったのは「スキップ物語は続いている」ということ。今の時代,スキップも自然なプレイスタイルの一つだ。
 全てスキップする人も,一部だけの人も,まったくしない人も,それぞれのスタイルで物語を体験できるようにしたい。狙いは,スキップするその瞬間にも物語が届き,ほんの一瞬でも興味が湧き,後から振り返ってもらい,最終的により深く没入してもらうこと。「スキップしようとした手が,ふと止まる瞬間を生み出す」ことだとして,発表を結んだ。

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