イベント初日には,“開発者アップデート”と題された謎の講演に,Blizzard Entertainmentの新社長ジョハンナ・フェリーズ(Johanna Faries)氏がモデレータとして登壇。壇上のパネルセッションで,まだまだ謎多き新作の内容が開発者たちにより公表されたので,現在分かり得る事実を紹介しておこう。
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登壇者は,本作のエグゼクティブプロデューサーを務めるマット・ジッターマン(Matt Zitterman)氏をはじめ,シニアプロダクションディレクターのティファニー・ワット(Tiffany Wat)氏,シニアゲームディレクターのジョー・シェリー(Joe Shely)氏,ナラティブディレクターのジェニファー・ブランディス・ヘプラー(Jennifer Brandes Hepler)氏,そしてシニアアートディレクターのジョン・ミューラー(John Mueller)氏らだ。
顔ぶれの多くは,前作の黎明期から深くシリーズに関わってきた主要開発陣で,「ディアブロ V」にかける並々ならぬ情熱が語られた。
なお,本パネルセッションの様子は公式YouTubeチャンネルで公開されているほか,ブログにもまとめられている。
その内容は,4Gamerで即日掲載したニュース記事とかなり重複しているが,本稿では開発者たちのパネルでの発言から,筆者の想像を加えて,あらためて「ディアブロ V」の情報をまとめていく。
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ついに勝利を収めた大魔王ディアブロと,崩壊したサンクチュアリ
1996年から始まった「Diablo生誕30周年」の歴史において,プレイヤーは常にサンクチュアリの破滅を食い止めるべく戦ってきた。しかし「ディアブロ V」で開発チームが突きつけるのは,「英雄たちが敗北し,大魔王ディアブロが勝利を収めたあと」という衝撃的な世界観だ。
前作「ディアブロ IV」の拡張コンテンツ「憎悪の魔王」におけるメフィスト打倒から約100年続いた黄金期もつかの間,ディアブロがサンクチュアリを征服した。そこから7年が経過したウェストマーチ地域を中心としたエリアが,本作の舞台となる。
かつて栄華を極めた都市や人々の集落,そして安全な休息の場であった「街」はすべて焼け落ち,公開されたトレイラーでも大天使が地に伏し,屈強なはずのパラディンたちが無数に磔にされている。
このアポカリプスを生き延びたサンクチュアリの人々の多くは,恐怖の前に屈してカルト教団員と化すか,魂を囚われる「ソウルケージ」へと送られているという。
過酷極まるこの世界において,名もなきプレイヤーキャラクターの呼び名は,ジッターマン氏によると「ウェストマーチの後継者」(Heir of Westmarch)だ。
これは,ウェストマーチにかつて存在した王国で,パラディンの祖である初代王“ラキス”の血を引く継承者という意味なのか。それとも天使と悪魔の両方の血統を持つ“ネファラム”と,その後継者である“イディラム”の子孫であるのか。このあたりの疑問は,新章の物語に大きく関わってくるものであろうと想像する。
Access Accepted第345回:ついに発売された「Diablo III」。シリーズの物語を覗いてみよう
北米時間の2012年5月15日,ついにリリースされた「Diablo III」。2000年に発売された「Diablo II」以来,実に12年ぶりとなる最新作だが,それだけに前作をプレイしたことがないという人も多そうだ。今回は,そんな人のためにDiabloの世界観をざっくり紹介しよう。そもそもDiabloってどんな存在なの? という人はぜひどうぞ。
- キーワード:
- PC
- ライター:奥谷海人
- 奥谷海人のAccess Accepted
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なぜ拡張コンテンツではなく「ナンバリング続編」なのか
発表内でとくに印象的だったのは,長年「ディアブロ IV」の運用を続けてきたチームが,なぜ新たなナンバリング作品へ舵を切ったのかという理由だ。
ジッターマン氏は,これまでのプレイヤー層が何を求めているのかを深く分析した結果,「既存タイトルの枠組みのうえで,マイナーチェンジを重ねるだけでは,我々が描こうとしている“次の時代のDiablo”のスケール感を実現できないという結論に至った」と明かす。
「ディアブロ V」を開発するには,数年間にわたる運用と拡張で積み上げられた前作のゲームの基礎構造そのものを解体し,ゼロから再構築して独立させることが必要不可欠だったという。
ちなみに,筆者を含む多くのゲーマーは「次の時代」に熱を上げているはずだが,「ディアブロ V」と現行の「ディアブロ IV」が,共存するライブサービスとして並行的に運営されていくことは,すでに掲載したインタビューセッションの際に念を押されている。そのため“今の時代”もプレイを続けられるのは間違いなさそうだ。
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英雄の全滅,天界の無関心,そして絶望的な「サバイバル」の物語
世界観の構築において,チームが最重視したのは「悪の象徴」としてのディアブロの描き方だ。
ワット氏は「ディアブロ IVなどでは,グレーゾーンを持つ複雑な悪役を描いてきたが,チームで立ち返ったのは“ディアブロは恐怖の王(Lord of Terror)そのものである”という点だった。彼は改心することもなければ,誤解されているわけでもない」と語り,いっさいの妥協なく,圧倒的な悪としてディアブロを描き切る覚悟を示したという。
本作の物語は,過去30年間にわたり,プレイヤーが必死に阻止しようとしてきた「最悪のシナリオ」が完成した世界から始まる。
ヘプラー氏によれば,サンクチュアリを守るために立ち上がったかつてのヒーローたちは,ことごとく敗北して全滅。防衛線は決壊し,ディアブロが完全勝利を収めたあとの荒廃した世界が舞台となる。
さらに絶望を深めるのは,サンクチュアリへの地獄の侵略に対して,天界の天使たちがだんまりを決め込んでいる点だ。もはや,大天使ティラエル(Tyrael)のように,自らの命や立場を危うくしてまで,人類に手を貸そうという天使はいない。
ミューラー氏が「燃え盛るウェストマーチの尖塔の前で磔にされた天使たちのビジュアルが,この世界のトーンを物語っている」と述べたとおり,かつて人類を救うはずだった存在はことごとく打ち倒され,このアポカリプスを生き延びたわずかな人間たちは救いの手立てを持たない。
シェリー氏は「かつてのシリーズのように王国を再建したり,英雄として輝かしい勝利を目指したりするような戦いではない。日々をいかに生き延びるかという,血生臭い“サバイバル”そのものが本作の核心になる」と説明する。プレイヤーは,それぞれに過酷な人生を歩むことになったであろう,もはや逃げ場などない生存者たちを率いて,何らかの理由で地獄,もしくはウェストマーチの中心部である「恐怖の領域」(Terror Realm)へと移動を続けながら,決死の抵抗を試みることになる。
「街が存在しない世界」が生んだ,移動拠点「キャラバン」
地獄の勢力により,既存の文明が完全に踏みにじられた結果,本作のサンクチュアリには,プレイヤーが安全に羽を休められる「固定の街」が一つも存在しない。もはや安全地帯などないのだ。
シェリー氏は,この過酷極まるサバイバル設定をゲームシステムへと昇華させた中核要素が,移動型拠点「キャラバン」であると説明する。
プレイヤーは自らこの旅団を率い,荒廃した世界を常に移動しながら探索を進めることになる。鍛冶屋や薬草師といった重要なサービスを提供するNPCは,最初から拠点にそろっているわけではない。崩壊した世界を旅するなかで救出したり,協力を取り付けたりすることで,段階的にキャラバンへ加わり,拠点機能が拡張されていく仕組みのようだ。
のなかには,従来のシリーズで「ただ倒して宝を奪い返す存在」であったトレジャーゴブリンの「Zerg」(名称変更の可能性はあるとのこと)のように,ユニークな味方NPCとして旅に同行するキャラクターも含まれている。それぞれに能力を持った“地獄で生きながらえるべく寄り集まった集団”が,コンパニオンとしても活動するのである。
ヘプラー氏によれば,「安全な街で平然と依頼を待つNPC」が存在しない世界観だからこそ,すべてのサイドクエストは,キャラバンに集まった仲間たちの過去や個人的なドラマに直結するという。誰をキャラバンに引き入れ,過酷な世界のなかで誰を生き残らせるのか。プレイヤーの選択が,単なる拠点機能の拡充にとどまらず,物語の展開や仲間の運命そのものを大きく左右する重厚なサバイバル体験を生み出す。
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未知への恐怖を取り戻す,フィールドの自動生成化
発表済みの部分だが,「ディアブロ V」のゲームシステムにおける最も挑戦的なイノベーションとして,従来のダンジョン内部だけでなく,地上フィールド(オーバーワールド)全体へのプロシージャル(自動生成)システムの導入も挙げられた。
ワット氏は「一度訪れた場所であっても,次に立ち戻った際には地形や出現する敵の勢力,ランドマークの配置までもが動的に変化する。安全なルートを暗記して効率よく周回する従来のハック&スラッシュのプレイ体験を一新し,常に一歩先が分からない緊張感と,未知の世界を踏破する発見の喜びを提供したかった」と,開発の狙いを明かした。
このフィールド変化の背景には,ディアブロ直属の部下である,強大な地獄の幹部たち「ドレッド・コマンダー」(Dread Commanders)の存在がある。彼らが地域を通過した足跡は,土地そのものをリアルタイムに侵食・変容させていくため,プレイヤーがかつて通った道でも,幹部の進撃によってまったく異なる禍々しい環境へと変貌を遂げるわけだ。
ひょっとすると,見た目や能力が異なるであろうドレッド・コマンダーたちは,それぞれの目的やAIにより,各エリアで自動的かつ能動的に移動を続ける不気味な存在ということだろうか?
彼らの通過による影響は,単にマップの形状を変えるだけでなく,侵食の度合いに応じて出現する悪魔の強さ,得られるドロップアイテムの性質まで変化させるとのことである。そのため,プレイヤーはドレッド・コマンダーの脅威を感じながら,毎回異なる状況への適応と探索のリスク管理を迫られることになるのだろう。
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コミュニティと共に創り上げる,2029年への道
世界観や拠点システムの刷新と同時に,ハック&スラッシュとしてのプレイの奥深さや,アイテム収集の醍醐味も徹底的に再構築されていると彼らは強調する。
ローンチ時には,シリーズ最多となる初期クラス数が用意される。跳躍と遠距離攻撃で戦場を翻弄する「デーモンハンター」や,聖なる光で近接打撃を繰り出す「モンク」といった人気クラスの復帰に加え,病と疫病の力を身にまとって戦う完全新規クラス「プレイグナイト」(Plague Knight)の登場も明かされた。
シェリー氏によれば,ハクスラ特有の「初心者でも直感的に爽快感を味わえる扱いやすさ」を維持しつつ,ビルド構築やスキルのマスターにおいて,より深い試行錯誤が楽しめるクラス設計を目指しているそうだ。
さらにハクスラファンにとって要となる,アイテム構成(Itemization)の面も,クラシックな要素と新たなアプローチの融合が進められている。インベントリ画面のアートワークも公開され,アイテムごとに占有マス数が異なるグリッド式管理の復活が見て取れる。さらにステータス要求値の設定や,装備そのものにひも付くセット効果(Gear-based Sets)の再導入も判明した。セット効果が特定のビルドを強制して選択肢を狭めてしまう過去作の課題を踏まえ,ビルドの幅をむしろ押し広げるようなバランス調整を行う方針だ。
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セッションの締めくくりとして,ジッターマン氏はコミュニティとの対話の重要性を強調した。2029年春のリリースを目指す長期プロジェクトだからこそ,2027年からは開発の早い段階から,プレイヤーが参加できるテストプログラムや定期的な開発進捗ブログ(ブルーポストや開発ビデオブログなど)を本格始動させるという。
「開発側が思い描く仕様を押し付けるのではなく,コミュニティが何を望み,どんな体験を求めているのかに耳を傾け続ける」と語ったジッターマン氏の言葉通り,ファンと共に試行錯誤を重ねながら「ディアブロ V」という新たな時代が形作られていくことになりそうだ。
































