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「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた
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印刷2017/12/09 00:00

インタビュー

「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた

重視するのはユーザーの“もしも”を実現する「IF体験」


4Gamer:
 デジモンは今年で20周年を迎えるIPですが,長く続くシリーズだからこそ人によって「デジモン観」みたいなものが違うと思います。例えば,どのデジモンがどう進化すると納得がいくかは,ファン同士でも意見が分かれるところですが,開発現場ではそういった「デジモン観」の違いを調整するのに苦労されているのでしょうか。

画像集 No.014のサムネイル画像 / 「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた
羽生氏:
 そこは作り手なので,遊んでくれる人がどう思うかを優先するようにしています。やはり,今のユーザーが何を求めているのかが大切ですから。確かに「子供のころにデジモンに触れてました」という人が開発現場に入るようになり,「このデジモンだったら,こいつに進化すると面白いんじゃないか?」とファン視点に近い意見をもらえる環境になっていますし,彼らにデジモンの知識があるからこそ,良いチョイスができた部分も大いにあります。
 サイバースルゥースをファンの皆さんが評価してくれたのも,進化の王道を押さえながら,ユーザーが求める進化の分岐や,意外な進化を準備し,「パートナーデジモンを好きなデジモンへ進化させながら一緒に冒険する!」というゲームならではの「IF体験」を用意できた部分にあると思っています。

4Gamer:
 「IF体験」ですか。

羽生氏:
 ゲームで重視すべきものは,やっぱりそこじゃないですか。特にデジモンのようなキャラクターコンテンツの場合,「アニメではこうだったけど,俺ならこうしたい!」という欲求をファンは持っていると思います。
 この“もしも”の部分が,ゲームで一番面白いところだし,それをしっかりと遊べるコンテンツを用意することが,僕らの仕事じゃないかなと考えています。それを担保するために,デジモンの進化分岐だったり,登場デジモンの選出には気をつけています。

4Gamer:
 登場デジモンといいますと,前作と本作における最初のパートナーデジモンは,アニメの主人公格をそのまま持ってきたという感じではないですよね。このあたりも先ほどあった「IF体験」に絡んでくるのでしょうか。

羽生氏:
 そうですね。主人公や,登場人物のパートナーの選出も,「このデジモンたちが主役になったらどうなるの?」とか「このデジモンが敵として登場したら,どういう展開になるだろう」といった想像をかきたてるようなデジモンにしています。

4Gamer:
 前作のパートナーだったパルモンとテリアモンは,過去にアニメでもパートナーとして登場していましたが,ハグルモンが選ばれていたのは驚きました。

羽生氏:
 前作のパートナーに関しては正直なところ,賭けだった部分もありましたよ(笑)。普通ならアグモン,ガブモンを……となるところですけどね。

4Gamer:
 私は「ハグルモンがゲームのキービジュアル飾ってるよ!」って興奮しながら最初のパートナーに選びましたけど(笑)。

羽生氏:
 あとアグモンとガブモンがパートナーではなかった点に関しては,物語の中で活躍させるというコンセプトだったことも理由として挙げられます。主人公のパートナーデジモンは,自分好みに進化させたり,入れ替えたりもできるので,プレイヤーによって変わっていきます。
 そこがデジモンストーリーシリーズの面白さではあるのですが,それだとパートナーデジモンとの関係が構築されていくドラマがなかなか描きづらかったんです。サイバースルゥースのときに,アグモンとガブモンが白峰ノキアのパートナーだったのはそういう裏事情もあります。

画像集 No.016のサムネイル画像 / 「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた

4Gamer:
 今作のパートナーデジモンのチョイスはどうでしょう。テントモン,ゴツモンときたので「デジモンペンデュラム Ver.1かな?」と思ったら,オタマモンではなくてベタモンという。

羽生氏:
 実は,今回の3体の中で一番最初にパートナーとして選んだのがベタモンでした。ベタモンは,今でこそあまり目立たなくなっていますが,デジモンの元祖といえる液晶ゲーム「デジタルモンスター Ver.1」では,アグモンの対になる立ち位置で登場していたんですよね。

4Gamer:
 当時の成長期はアグモンかベタモンの2択でした。

羽生氏:
 そういうデジモンの歴史を考えると,ベタモンって,もしかしたらアグモンの代わりにヒーローになったかもしれない存在なわけですよ。

4Gamer:
 ああ,納得しました! ここにも先ほどのお話にあった“もしも”の要素が盛り込まれているんですね。

羽生氏:
 その通りです。今回のストーリーって,ヒーローではない人たちが紡ぐ物語なので,そのテーマに合う3体として今回テントモン,ゴツモン,ベタモンを選ばせていただいてます。

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた

4Gamer:
 お話を聞いていると,羽生さんは「今まで光がしっかりと当たっていなかったデジモンたちを活躍させよう」という気持ちが強いように思います。「デジモンワールド リ:デジタイズ デコード」でもティラノモンの究極体としてラストティラノモンを,オーガモンの究極体としてタイタモンを出されていましたよね。

羽生氏:
 そうですね。ラストティラノモンはまさにそういう思いで作ったデジモンです。タイタモンもオーガモンをもっと活躍させたいという気持ちで出しました。
 僕は新しいデジモンを出すからには,ちゃんと活躍の場を持たせたいと思っています。「IF体験」の話に戻りますが,例えば,アニメの途中で死んでしまったデジモンが好きだった人は,そのデジモンが生き残って活躍する姿を見たいでしょうし,自分のパートナーとしてそういう子を活躍させられたら楽しいですよね。

4Gamer:
 デジモンゲームコミュのインタビューでは,既存デジモンの進化の穴埋めも今後はしていきたいと発言されています。

羽生氏:
 今のデジモンって,成長期から究極体の過程で中間が抜けているモンスターがいるんです。もちろん,デジモンの進化にはいろいろな分岐がありますが,その中でも納得できるような進化パターンを1つ用意してあげたいなと。

4Gamer:
 進化の分岐には,人によっていろいろな思い入れがあったりするので,新しいルートを考えるのには苦労されていると思います。アニメのエンジェウーモンは昔ホーリードラモンに進化していましたが,今はオファニモンになったりするので意見が分かれたりしますし。

羽生氏:
 もちろん,人によって考える進化ルートはさまざまですし,いろいろな可能性があるべきだと思います。ホーリードラモンとオファニモンに関しても,その時はそういう進化をしたんだよという風にとらえていただければと。特にアニメは,子供たちの心の成長度合いによって進化が変わる描写もありますし。

4Gamer:
 ファンが思い描く進化の可能性も補完しつつ,納得感のある進化を用意すると。

羽生氏:
 はい。成長期の姿から成熟期,成熟期の姿から完全体を想像したりする遊びもデジモンの“燃えポイント”だと思っています。あとは,初期の液晶ゲームに登場しているのにコンシューマ機向けゲームに登場していないデジモンたちがまだまだいるので,そのあたりを登場させていきたいですね。今後やるべきことは,そこかなと。

4Gamer:
 クロスウォーズのデジモンについてはいかがでしょう。デジモンゲームコミュのインタビューでは,デジクロスシステムを実装したうえで登場させたいとのことでしたが。

羽生氏:
 デジクロスの複数合体システムは,いずれ実装したいとは考えていますが,その前にまだまだ登場させたいデジモンは多くいます。今回のハッカーズメモリーに登場するシャウトモンは,通常の進化しかできないんですが,クロスウォーズのデジクロスは,複数体のデジモンが合体することが特徴なので,ほかのデジモンを出していく時はきちんと複数合体のシステムを入れたいと思っています。また,登場させる時は物語の中での必然性も欲しいと考えています。

画像集 No.020のサムネイル画像 / 「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた


デジモンストーリーの次回作もすでに開発中? 新しいデジモンゲームへの取り組みも


4Gamer:
 さて,先ほどハッカーズメモリーに続く新しいタイトルが制作中という話も出ましたが,今後の展望を聞かせてください。

羽生氏:
 先ほども話したように,まずはファンの人たちの熱量を冷まさないように継続してデジモンゲームのタイトルを提供していきたいと思います。
 また,デジモンゲーム自体のファンを作っていきたいので,今まで触れたことのない人が興味を持ってくれるようなタイトルを生み出していきたいと考えています。ゲームが面白いと思っていただけることで,デジモンに興味を持ってもらい,それによってファンを増やしていくことができればと思っています。

4Gamer:
 そのためにも,今はストーリーシリーズを軸に展開するという考えなのでしょうか。

羽生氏:
 そうですね。誰でも遊びやすいゲーム性を目指していますので、デジモンストーリーを軸に置きつつ,新しいデジモンゲームのチャレンジにも取り組んでいきたいと思っています。

4Gamer:
 新しいチャレンジですか。

画像集 No.017のサムネイル画像 / 「デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー」の羽生プロデューサーにインタビュー。本作の見どころや今後の展望を聞いた
羽生氏:
 はい。例えば,アニメのように固定のパートナーとのドラマを描くタイトルを作れないかなと思っています。先ほども少し話しましたが,ストーリーシリーズって,パートナーをどんどんチェンジしながら冒険をしていくので,そういう描写はなかなか難しいんですよね。

4Gamer:
 進化ルートやパートナーも,人によって違いますしね。

羽生氏:
 進化の過程に関しても,ストーリーシリーズのような単にレベルアップなどで開放されるようなシステムとは別のものをやってみたいですね。アニメのパートナーって子供たちの心の成長と共に進化していきますが,ゲームでもそういった,冒険の中での行動や,仲間やデジモンに対する接し方の選択によって,進化の分岐や関係性が変わるようなシステムを作ってみたいと思っています。

4Gamer:
 それは実現したら面白そうですね。

羽生氏:
 例えば,デジモンアドベンチャーの中盤でグレイモンがスカルグレイモンに暗黒進化する場面がありますが,さらに暗黒進化を突き進んでいたらどうなっただろうとか僕は考えるんですよね。そういう人の感情とデジモンの進化をテーマにした題材もゲームならではの「IF体験」の1つとして面白いのかなと。

4Gamer:
 今後さらにデジモンを増やしたり,パートナー感を出すためにいろいろなモーションを追加したりすると,リソース管理がより大切になってきそうですね。

羽生氏:
 そうですね。タイトル間でのリソース共有は,デジモンの登場数を担保するために絶対必要なことなので,僕の目の届く範囲では徹底しています。

4Gamer:
 「デジモンリンクス」iOS/Android)との共有も行われているんでしょうか。新たに3Dモデルが作られているデジモンもいますが。

羽生氏:
 はい。「デジモンリンクス」の3Dモデルについては,しっかりリソースを共有できるように制作ラインを管理して開発を進めています。残念ながらハッカーズメモリーでは,まだ実装できていないデジモンもいますが,ゆくゆくはコンシューマ機向けゲームのほうにも登場させたいと思っています。

4Gamer:
 タイトルごとにモデルを作り直すのって喜ばれる一方で,工数としては膨大になってしまいますよね。

羽生氏:
 ただ,あまり同じモデルを使うと“使いまわし感”が出てきてしまいます。ファンの方には,毎回お金を出してゲームを購入していただいているので,予算の許す範囲でどれだけグラフィックスを作り直していくかが,これからの課題ですね。特に今後PS4基準での開発となった際には今までのモデルをそのまま使用し続けるわけにはいかないかと考えています。
 新しいチャレンジなどでは,デジモンの数を絞ることにはなるかもしれませんが,デジモンならではの新しい遊びや,ビジュアルを模索しつつ,デジモンストーリーシリーズでは色々なデジモンを集める面白さが遊びを大切にし,モデルのリソースを管理しながら,なるべく多くのデジモンを出せるように動いていますので,今後のデジモンゲームにもどうぞご期待ください。

4Gamer:
 ハッカーズメモリーを含め,今後のデジモンゲームに期待しています。本日はありがとうございました!

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    デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー

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