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[インタビュー]「STRANGER THAN HEAVEN」はなぜ“よそ者”の50年を描くのか。横山昌義氏が語る,RGGスタジオ完全新作への挑戦
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印刷2026/06/23 12:00

インタビュー

[インタビュー]「STRANGER THAN HEAVEN」はなぜ“よそ者”の50年を描くのか。横山昌義氏が語る,RGGスタジオ完全新作への挑戦

 2027年1月15日の発売を予定するRGGスタジオの新作「STRANGER THAN HEAVEN」(ストレンジャー ザン ヘヴン)(PC / PlayStation 5 / XBOX Series X|S)。Summer Game Festでの発表から間もない6月某日,セガ大崎本社にて日本のメディア向け試遊会と合同インタビューが実施された。

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 本稿では,本作でエグゼクティブディレクターを務める横山昌義氏へのインタビューを中心にお届けする。1915年の小倉から1965年の新宿まで,複数の時代と都市をまたぎながら描かれる主人公・大東 真の人生は,どのように生まれたのか。タイトルに込めた意味や物語作り,そして“殴る重み”すら感じさせるコンバットについて話をうかがった。

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※以下,記事内の画像はデモ版のプレイムービーおよび公開されているトレイラーをキャプチャしたものです
※本稿には暴力や流血表現を含む画像および記述があります。閲覧の際はご注意ください


やらなければやられる――時代性と“殴る重み”を感じるコンバットシステム


 横山氏へのインタビューに入る前に,あらためて本作のコンバットから受けた印象を簡単に振り返っておきたい。
 なお詳細についてはSummer Game Festの現地イベント「Play Days」で試遊したデモ版のプレイレポートとプレイムービーで紹介しているので,操作や戦いの流れはそちらも参照してほしい。


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 Summer Game Fest: Play Daysで,RGGスタジオの完全新作「STRANGER THAN HEAVEN」のバトルを体験した。左右の手足を個別に操るコンバットは,操作の独自性だけでなく,本作が描く暴力と“あったかもしれない日本”の歴史の重みを手元に残すものだった。

[2026/06/11 23:00]

 本作で特徴的なのが,コントローラのLRボタン(あるいはトリガー,バンパー)を用いた,左右の腕や足といった「四肢」の動きを意識させる操作系だ。

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 たとえばLボタンで左ジャブを上下に打ち分け,Rボタンで右ストレートへつなぐ。あらかじめ決められたコンボを出すというより,自分自身の手でコンビネーションを打ち込むように攻撃を組み立てていく手触りがある。ボタンを長押しすれば,チャージ攻撃のような重たい一撃を放つことも可能だ。

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 また,こちらと敵がともに刃物を手にしている場合,互いの刃がぶつかって勢いを打ち消すような動きも見られた。単に攻撃力が上がるだけでなく,相手の一撃を受け止める手段としても,武器を手にしておく意味は大きそうだ。

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 一方で,防御の基本は分かりやすい。防御ボタンを長押しすることでガード状態となり,攻撃が迫ってからの入力でも十分に間に合う。相手の攻撃に合わせてこの操作さえできれば,ひとまず身を守れる。
 ガード中に敵の攻撃がヒットする瞬間,攻撃が来る左右に合わせてLまたはRボタンをタイミングよく入力すると,「パリィ」が成立する。ここから追撃につなげれば,大きなチャンスを作り出せる。

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 回避も,ガードと同様にジャストタイミングで成功させれば,パリィに近い形で大きな反撃のチャンスを作り出せる。ガードと回避どちらもジャストで決められなくても反撃の起点にはなるため,単に攻め続けるのではなく,守りとカウンターを意識して戦うことが重要になりそうだ。

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 ガードを固めることは基本だが,それだけではしのぎ切れない。防御を崩されたり,防御不能の「投げ」のような大技を食らったりすれば,一気に追い込まれる。敵によっては一撃で体力を大きく削る攻撃もあり,文字どおり一太刀で斬り捨てられるように倒されることもあった。

 こちらにいつでも「やれる」チャンスがあるように,敵にもまた,一瞬で形勢をひっくり返すチャンスがある。そこには,かつてない「真剣勝負」の手応えがあった。

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横山昌義氏に聞く,スタジオ完全新作への思いや考え,SGF出演の“裏話”


──まず,本作の「STRANGER THAN HEAVEN」というタイトルには,どのような意味や思いが込められているのでしょうか。

横山昌義氏(以下,横山氏):
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 タイトルに関しては本当にたくさん候補を考えていて,実は最後の最後までなかなか決まらなかったんですよ。もっと分かりやすい名前にするべきか,どうしようかって。

 というのも,「STRANGER THAN HEAVEN」って,ものすごくゲームっぽくない名前じゃないですか。映画の世界だとジム・ジャームッシュ監督の「Stranger Than Paradise」みたいな,ちょっと詩的というか,あえてカッチリと言い表さないタイトルがけっこうありますけど,ゲームではあまり見かけないタイプだと思うんですよ。

──確かに,RGGスタジオ作品を想像できるようなタイトル名ではないですね。

横山氏:
 ではなんでこのタイトル名かというと,もちろん「天国よりも奇妙な場所」というニュアンスはありますが,それだけではなくいくつもの意味を重ねているんですよ。

 何よりストレンジャー(よそ者,流れ者)という言葉とそれが持つ意味を,どうしてもタイトルに入れたかった。日米のミックスとして生まれ,どちらの社会でも完全に仲間として受け入れられることなく,よそ者として扱われてきた大東 真の人生を描くにあたってもこの言葉を入れたいと。

 とはいえ,思いついたはいいものの,英語としておかしくないのか最初は自分でも自信がなかったですね。僕はTOEIC200点台という驚異の英語力で生きてきた人間ですから(笑)。
 それで海外のスタッフやコーディネーターに「このタイトル,どう思う?」と片っ端から意見を聞いて回ったんですよ。そうしたらみんなが「いろんな候補のなかで,これが一番好きだ」と言ってくれて。

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──作品に込めた思いに加えて,英語圏のスタッフにもタイトルとして自然に受け取られたことが,最後に踏み切る後押しになったわけですね。

横山氏:
 ただ,最後の最後で社長(内海州史氏)には「お前っぽくない」って反対されましたけどね(笑)。
 社長は英語が分かる人だからこそ,「商品というより“作品”っぽい名前かな?」と心配してくれたんだと思います。「もっとこう,ストレートにドーンとくる名前はない?」と。僕っぽさ……でも,さすがにこのゲームに「ドラゴンパンチ」とかでは合わないわけですよ(笑)。

 最初から世界共通の名前にしたかったので,日本語版だけ別のタイトルを付けるつもりもなかったですしね。この作品の中身を一番表している言葉はこれだ,という思いも強かった。
 スタジオのみんなが「これがいいですよ,絶対大丈夫です!」と強く推してくれたので,最後は腹をくくって決めました。

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──ひとりの人生を軸に,長い時間をかけた時代の移り変わりも描いていくという発想は,企画の当初からあったのでしょうか。

横山氏:
 むしろ,そういう描き方をしたいからこそ立ち上げたストーリーです。
 これまでのインタビューでも少し触れたかもしれませんが,僕は「龍が如く」シリーズを長年作ってきたなかで,ずっと自分のなかで解消できないある疑問を抱えていました。
 それは,「彼らはどうして,こういう生き方を選んだんだろう?」ということです。

 現代劇としてシリーズを描く場合,すでに組織が当たり前のように存在していて,そこに身を置く人間や,その世界に足を踏み入れざるを得なかった人間を描くことになります。
 でも,そもそもの“最初の人たち”は,いったいどんな理由で集まり,何を求めて組織の形を作っていったんだろう。最初から今のようなことをするための集まりだったのか,それとも別の思いや事情から始まったのか。それはどこかで姿を変えていったのだろうか。そうした根源的な部分を,ずっと考えていたんですよ。

──組織の中のドラマではなく,その黎明期そのものを描きたかったと。

横山氏:
 そうですね。これまで僕らのスタジオが作ってきたシリーズを通じて考えてきた,「人の集まりって,おそらくこうやって出来上がっていったんだろうな」というプロセスを,一度ちゃんと描いてみたい。それがこのプロットの出発点です。
 そして,それは「龍が如く」シリーズの起源を直接描くという話ではなく,あくまで独立した新しいゲームとして作ろうと。

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──それを5つの時代で描くというのはかなり壮大な構想ですね。

横山氏:
 実は一番最初の企画段階では,これを「三部作」として考えていたんですよ。

──三部作ですか!

横山氏:
 50年間という流れは,1作で描くには長すぎるし,今の時代,あまりに大ボリュームなゲームはユーザーにとってもハードルが高くて,ナンセンスかなと思ったんです。だから前編・中編・後編のように,もう少しライトに分けて出そうかと。

 だけど,いざ作り始めてみると……やっぱり全部を一気に遊んでほしいとなったわけです(笑)。
 前・中・後編に分けたとして,次の作品が出るまでに1年ほど期間が空いちゃったら,プレイヤー側も途中で嫌になっちゃうじゃないですか。それは,作っている僕らだって同じなんですね。
 だったら「1本のゲームに50年全部入れちゃえ!」ということで,今の形に落ち着きました。これが正直なところです。

──主人公・大東 真の50年をたどるなかで,ゲーム全体のボリューム感や,各時代の街並みの作り込みはどのようなものになっているのでしょうか。

横山氏:
 全体のボリュームについては,まだ正確な規模をお伝えできる段階ではありませんが,相当なものになっています。
 特にメインストーリーは長いですね。これは狙って長くしたというより,描くべきものを込めていったら,自然と長くなってしまったという感じです。

 マップのサイズに関しては,あえて「龍が如く」と比較するなら,それぞれの街の面積はこれまでと同じくらいだと思います。ただ,無理に揃えることもしていないので,5つの時代と都市によってスケール感はまちまちですね。

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──マップの作り込みの密度はいかがですか。

横山氏:
 中に入れる建物の数で言えば,従来のシリーズよりかなり増えていると思います。
 ただ,当時の建物は今と違って階数が低いですからね。何階建てのビルをずっと登っていくような,縦に広がる構造はあまりありません。そういう意味では,探索の密度はニアリーイコールなのかなと。

 それと今回は,サブストーリーやミニミッション,メニュー画面に至るまで,これまでのシリーズのお約束を一度すべてリセットしているんですよ。そのあたりからも,本作が「龍が如く」のスピンオフや外伝作品ではない“完全新作”だということは,今回試遊していただいたバトルの操作感も含めて,感じてもらえると思います。

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──舞台となる都市や年代は,どのような理由で選ばれたのでしょうか。

横山氏:
 年代に関しては,主人公の人生から逆算して考えているだけなので,「狙ってこの年代にした」というのはほとんどないんです。
 「大東が若い頃に密航船で小倉に到着する」という始まりと,「最終的に神室町(新宿)にたどり着く」という終わりの2点をまず決めて,その点と線をつないだ結果,間にある時代がこういう形になりました。

 大東は,スヌープ・ドッグ演じるオルフェウスの密航船に乗って小倉にたどり着き,そこで大塚明夫さん演じる八島の親分のもとで世話になりながら,日本での生き方を学んでいく。そして「歌(音楽)」の才能を見出されたあと,1929年に広島の呉へと向かうことになります。

 これはトレイラーにもヒントがあるんですが,彼はそこでヤクザの組織に足を踏み入れることになるわけです。呉といえば,映画「仁義なき戦い」の舞台としても有名な港町ですから,自然と「この時代に,組織をめぐるドラマを描くなら呉だろう」というふうに,エピソードと舞台が数珠つなぎで決まっていきましたね。

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──当時の街並みを描くうえで,工夫された部分はどこでしょうか。

横山氏:
 すごく簡単に言うと,「どうやって嘘をつくか」が勝負でした。
 よく「龍が如くスタジオのゲームは街がリアルに再現されていて楽しい」と言っていただけるんですけど,僕らとしてはそのつもりはなくて,あれは再現ではなくあくまで“表現”なんです。僕らは,リアルな再現をしているわけではまったくないんですよ。

 今の時代,純粋な再現だけを目指すなら,マップの3Dデータを持ってきて,そのままテクスチャを貼り付けたほうがよっぽどリアルになりますから。
 僕らがやっているのは,あくまでオリジナルの空間としてフィクションを詰め込む作業なんです。だから,もし現実に当時の小倉へタイムスリップできたとしても,ゲーム内の小倉とは絶対に一致しません。

──歴史的な正確さよりも,ゲームの舞台としての楽しさやエンターテインメントとしての面白さを優先しているわけですね。

横山氏:
 そうそう。もちろんモデルとなった場所はしっかりと調べるけど,今の僕らがゲームとして遊んだときに「楽しい1915年の小倉」になっていないと意味がないですからね。そのためにどんな嘘をつくか,どう派手に見せるかという部分が一番大変でした。

 当時のことを調べてみて,びっくりしたこともたくさんあって。実はどの時代にも「路面電車」が走っているんですよ。1965年の神室町(東新宿)でも,今の靖国通りのあたりから花園神社に向けて路面電車が走っていたなんて,調べるまで知らなかった。
 そういう「ちょうどいいし,面白いからゲームに入れよう!」という発見は,たくさんありましたね。

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──現地へのロケハンなども行われたのですか。

横山氏:
 もちろん小倉や呉にも行きました。でも,そこまで参考にはならなくて。だって,何十年も前の戦前の話ですよ? 当時の面影なんて残っていないですから(笑)。
 昔あったお店も,今ではコンビニに変わっちゃったりしているし,そもそも資料自体がそう残ってないから「あの一帯がこういう風になったのか」っていうのはそうはないんですよ。

──当時の地方都市や街の様子をたどれる資料は,東京のようにそうは残ってなさそうではありますね。写真や新聞の記事などが手がかりになりそうです。

横山氏:
 そうですね。当時の写真や新聞,映像といったわずかな手がかりをベースにしながらも,ゲームとして楽しくなるように架空の街を構築していきました。

 実際には,あんなに建物は多くなかったはずだけど,でもゲームのステージとして密集してないと面白くならない。ストーリー面に関しても同じで,これは「史実に基づいた話」ではまったくないんですよ。
 大東 真の身の回りで起こることだけを描いていて,その時代に世界で起きていた大きな事件であっても,彼が直接関わっていないものは一切描いていない。そこは明確に,ゲームオリジナルの架空世界を描いていると言い切っておきます。

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──トレイラーには熱海の「ホテルニューアカオ」を彷彿とさせる場所も映り込んでいましたね。

横山氏:
 気がつきました?
 今回,実際にホテルニューアカオさんにご協力いただいて,作中にそのまま登場させています。ただ,厳密には1951年の時点では「ニューアカオはまだ建っていないんじゃ?」というズレはあるんです。
 でも,そこに関しては本当に「エンタメとしての嘘として許してください!」というところですね(笑)。

 でもここは,「龍が如く 維新! 極」で幕末の京都に「ドン・キホーテ」や「和食さと」が出てきたようなギャグ的な意味ではなくて。あくまでその時代を表現するうえで近しいイメージのもの,最高に雰囲気のある架空の空間を表現するための“ポジティブなフィクション”として取り入れています。

 厳密な再現ではないからこそできる,映画的なロマンを楽しんでもらえればと思います。

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──本作では,岩木源造役として名優・菅原文太さんを起用したことも大きな反響を呼んでいます。岩木は,大東とともに時代をまたいでいくキャラクターなのでしょうか。

横山氏:
 ええ,時代をまたいでガッツリ出てきますよ。今回,東映さんから文太さんが出演されている過去のさまざまな作品の資料を,膨大にご提供いただきまして。
 特定の「あの作品の文太さん」を再現するのではなく,さまざまな時代の文太さんのエッセンスを見つめ直しながら,独自の“岩木源造”を形作っていきました。まさに「仁義」が一本通ったキャラクターになっていますので,そこは期待していてください。

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──これまでのスタジオ作品といえば,本筋のシリアスさと,サブストーリーにおける笑いのギャップも印象的でした。本作でもそうしたトリッキーな味付けは健在ですか。

横山氏:
 そこに関しては,今作では明確に線引きを変えています。どちらかと言われればシリアスな作品として向き合って作っています。
 では,笑えることがないかと言ったらそうじゃないと思うんですよ。ここは描く時代性も関係していて。

 現代劇であれば,どこまでがシリアスで,どこからがコメディなのか,ユーザーも自然と境界線が分かりますよね?
 例えば,「おむつを穿いた極道の組長」のようなキャラクターが出てきたら,誰もが「そんなわけねぇだろ!」って処理できる。でも,今作のような歴史的な時代背景で同じトーンのコメディをやってしまうと,当時のことをよく知らない人からすれば「えっ,1900年代の日本では本当にそういう人がいたのかな? そういう風習があったのかな?」と思うかもしれない。
 さすがにこの例は極端ですが(笑),そう誤解させてしまう危険性があるんです。

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──それは少し困りますね。

横山氏:
 あと,現代人の目や海外の方の目から見れば,何十年とか100年とか前の人間たちが「なぜこんなことでここまで激怒しているのか」「なぜこんなことで命をかけようとしているのか」ということ自体が,すでに十分すぎるほどトリッキーで衝撃的な世界なんですよ。
 だから,あえてゲーム側でわざわざ笑いを狙ったものを用意しなくても,当時の倫理観や常識に触れること自体が,最高にビックリできる体験になる。

 今作に関しては笑いを取りにいくというよりは,その時代が持つ「生々しさ」でユーザーを驚かせたいと思っています。もちろん,クスッと笑える仕掛けがまったくないわけではないですけどね(笑)。

──これまで「龍が如く」シリーズにあったような「プレイスポット」のような要素も,時代背景に合わせて変化しているのでしょうか。

横山氏:
 いわゆるプレイスポットはあえて少なくしています。ある程度は時代的な嘘をつきつつ,当時の時代に即したものを厳選して入れています。

 あの時代は現代ほど娯楽が多くないですし,だからこそ大東のショービズが成り立つわけですよ。そこに無理やりゲーム的な遊びを入れると「この時代にも娯楽がある」って見え方がするし,現代的な遊びを入れてもしょうがないですからね。

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大東 真として「拳を振るう」感覚を味わうために


──今回プレイしたバージョンでは,敵の歯ごたえがかなりありました。左右の手足をそれぞれ意識して操るコンバットもかなり独特ですね。

横山氏:
 歯ごたえ,あったでしょ(笑)。事前に阪本(プロデューサーの阪本寛之氏)から説明があった通り,現段階のデモでは,あえて敵を強めに調整しているんですよ。
 ザコ敵がすぐにバタバタ倒れちゃうと,左右独立操作の感覚や,「こうやって防御するんだ」「ここでカウンターを合わせるんだ」という使い分けを覚える前に,バトルが終わっちゃいますからね。

 製品版では,ザコ戦はもう少しテンポよく倒せる形にチューニングしていきます。メインストーリーの流れやレベル感に合わせて,これからまさに調整を進めていくところです。
 もし全編あの硬さのままだったら,クリアまで300時間とか400時間とかかかっちゃいますからね(笑)。

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──「龍が如く」シリーズのバトルといえば,ボタン連打でも派手なアクションを繰り出せる爽快感が魅力でした。今回は,そうした手軽さとは異なる方向を意識しているのでしょうか。

横山氏:
 難しくしたというより,新しいものにしたというのが正確ですね。
 今の僕らが「龍が如く」とは違う完全新作を一から作るにあたって,大東 真という主人公と20世紀前半の世界に最も合う,面白い入力スタイルは何だろう,というところから考えました。

 ちなみに,この「左右の操作を分ける」というシステムは,僕が何年も前からずっと温めていた企画なんですよ。

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──長年温めてきた構想が,ここで形になったのですか。

横山氏:
 そうですね。昔から「究極のボクシングゲーム」と「究極のダンスゲーム」を作りたいという夢があって(笑)。ダンスゲームって,どうしても既存のものは音ゲー(リズムゲーム)の枠に収まってしまうじゃないですか。

 自分の体を動かして操作するデバイスを使ったゲームがありますけど,それもあくまで用意された振り付けに手足を合わせにいく感覚に近いですよね。そうじゃなくて,コントローラの入力だけで,自分の意思のままにウィンドミルやムーンウォークを自由に出せるダンスゲームは作れないかと,ずっと考えていたんです。
 ……まあ,それは複雑なコマンド入力になってしまうし,技術的に難しいんですけど,その夢の一端をアクションに落とし込んだのが,実は「龍が如く0」の真島の「ダンサースタイル」だったんですね。

 話は逸れましたけど,もうひとつの夢であるボクシングゲームのアイデアが,「左右の拳,あるいは身体の操作を完全に分ける」という仕組みでした。
 直感的に納得感のある入力システムですし,「STRANGER THAN HEAVEN」の世界観や,大東の戦い方にも合うなと思い,今回持ってきたわけです。

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──なるほど。実際にそれを取り入れた本作の操作性についてはどう考えていますか。

横山氏:
 アクセシビリティの調整は今も続けていますし,操作に慣れている人とそうでない人で,反応が大きく変わるシステムだとは思います。ただ,「誰でも何も考えずにボタンを押せばクリアできます」というゲームにする気は,最初からなかったんです。

 これは,世界中でストーリー主導型のゲームを作っている人たちがみんな悩んでいることだと思うんですけど,「ゲームでしか味わえないストーリー体験って何だろう?」という命題は常にありますよね。
 ゲームのキャラクターを自分の手で動かして,一心同体になって苦労を乗り越えていくからこそ,エンディングで心の底から感動できる。これが,ゲームというメディアの最大の強みです。

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 RPGなら,コツコツとレベルを上げて強い敵を倒すことで感情移入するし,アクションゲームなら,自分のプレイスキルが上達していく過程そのものがカタルシスになる。このゲームでは,文字どおり自分の手足のように操れるようになった瞬間,大東 真として「過酷な時代を生き抜いていく」感覚をリアルに味わえるはずです。
 そのシンクロ感を大事にしたいからこそ,この操作感とシステムにしています。

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──操作感だけでなく,一撃の重さやテンポ感もかなりどっしりとしていますよね。来たら返すような,見極めが重要な印象を受けました。

横山氏:
 そこはまさに開発中にも賛否があったところで,僕は「とにかくスピードを遅くしてくれ」とずっと要求していたんです。

 実は,バトルチームが最初に作ってきたものは,これまでのシリーズと同じくらいのスピード感でパンチや蹴りを繰り出していたんです。でも,それだとただの連打ゲームになってしまって,左右を使い分ける意味がなくなってしまう。
 使い分けを成立させるためには,自分のモーションも敵のモーションも,まずは人間が本当に動ける速さまで一度落とす必要がありました。「井上尚弥のパンチは速すぎるから,ゲームの基準としてはダメ」みたいな(笑)。
 といっても,本当の人間の動きに合わせるとさすがに遅すぎる。それをゲームとして“相手の攻撃が左右のどちらから来るのかをしっかり見分けられて,かつ,こちらも狙って打てる”かのギリギリのバランスを目指して,今のテンポ感に落ち着きました。

──殴ったときの手応えや,生々しい打撃音の痛々しさも際立ちますね。ゲームをプレイしていて,“命の取り合い”を感じました。

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横山氏:
 音に関しても,従来のような「パン!」という派手な破裂音はナシにしました。派手な音のほうが,当たったという記号としてユーザーに伝わりやすいんですけど,それじゃビンタの音だから,もっと骨と骨がぶつかる「ゴツッ」という鈍い音にしてほしいと。

 あと,ハンマーのような重い武器を振り下ろしたときも,今まではそのまま勢いよく振り抜けて,敵が吹っ飛んでいたのを,今回は相手の体に当たった瞬間に一度止まるようにしています。刀などの刃物も同じで,ガーンと斬りつけたら,鎖骨のところで一回刃が止まるんですよ。「骨があるからここで止まる。そこからさらに引き斬る」という表現に変えている。

 これまでのやり方を見直して,人と殴り合うこと,命に手をかけることの重みを,指先の手触りとして徹底的にこだわりました。あの時代は,本気でやられたら基本的にはもう「助からない」ですから。やられる前にやるという恐怖感を,引き出したかったんです。

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──恐怖感といえば,上級ステージの大阪では一撃必殺級の大ダメージを叩き込んでくる“その筋”の敵が待っていたのですが……あの緊迫感は凄まじかったです。

横山氏:
 味わっていただけましたか(笑)。少し裏話をすると,あの強敵は本当は大阪にはいないんですよ。本来は,呉の夜の場面に出現する敵なんです。
 さすがに本当に全体力を削るほどの一撃ではないんですが,まともに食らうと一瞬でほとんどの体力が消し飛ばされるような調整になっています。。

 ああいう「一瞬でやられるかもしれない」という怖さは,ボスや中ボスにはあえて意識的に入れています。
 あとは,街自体の危険な雰囲気ですね。本作はとにかく,夜の街のライティングを意図的にものすごく暗く作っています。現代と違って,100年前の夜は本当に真っ暗ですから。ゲームとしての視認性をギリギリのラインで保ちつつも,当時の「暗闇そのものが持っていた本能的な怖さ」を,路地裏に残しているんです。

──当時は今のように街灯もないですしね。

横山氏:
 そうそう。そもそも夜は真っ暗で危ないから出歩かないんですよ(笑)。
 そういう街の雰囲気もだし,パッと斬りつけられた瞬間にプレイヤーが本能的に「ヤバい!」と命の危険を感じられるようにしたい。大東 真になってそういう時代を生きる人間の感覚をゲーム全体で味わってもらいたいと思っています。

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プレイヤーによって「映る画が変わる」ドラマ


──本作では50年という長い時間を描きますが,成長だけでなく,年齢を重ねることによる「円熟」や「老い」を,プレイヤーに感じてもらうための仕掛けもあるのでしょうか。

横山氏:
 実は,いろいろと仕込んであります。ただ,これに関してはまだ今は話せません(笑)。続報を楽しみにしておいてください。

──時代をまたぐ際,アイテムや能力の持ち越しはどうなりますか。

横山氏:
 時代を越えて持ち越せるものは,物によりけりですね。綺麗にリセットされるものもあります。そして,過去の時代に戻って何かを取り直すような要素は「ない」です。

 本作は,小倉から呉,大阪,熱海,新宿へと,すべての時間が一本道で進んでいきます。クリア後のモードでどうなるかは明言できませんが,少なくとも最初のメインストーリーを遊んでいる間に,「小倉に戻って取り逃したサブストーリーを回収しよう」といったことはできません。だからこそ,メインストーリーを進めるだけでも,プレイヤーごとに相当違うゲームプレイになっていくと思います。

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──取り返しのつかない「人生」といった感じですね。使える武器についてはどうでしょうか。

横山氏:
 これも物によって使った感覚は違いますね。明確な性能の上下があるわけではなく,素早い攻撃はできるけど一撃は弱いとか,リーチが長い代わりに両手が埋まって動作が遅くなるとか。それぞれ特徴や使用したときのテンポ感がまったく違いますから,人によって好きなスタイルが綺麗に分かれると思います。

 今回は,YouTubeの実況プレイなどでも,配信者ごとに「ゲームの中に映る画が全然違うものになるようにしたい」という明確なコンセプトがあったんです。従来のゲームって,実況を見ていても,実況者の喋りや解説は違うけど,画面に映る戦闘の絵面はみんな同じになりがちじゃないですか。
 イベントシーンや物語の大筋は変わらないけど,バトル中の動きだったり,アドベンチャー中に街の人へ話しかけるときのカメラワークだったり,UIの作りも含めて,プレイヤーごとにまったく異なる「画」が生まれるゲームデザインです。

──本作のもう一つの大きな柱であるショービジネスシステムについてうかがいます。街のあらゆる「音」を収集してオリジナル楽曲を作り,興行をプロデュースしていく要素ですが,ストーリー展開やバトルとも連動していくのでしょうか。

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横山氏:
 バトルと直接システムとして連動しているかというと,そこに掛け算はありません。ただ,シナリオの根底において,このショービジネスは彼らにとっての「シノギ」,つまり収入を得る手段そのものなんです。

 大東は,日本とアメリカにルーツを持つ若者としてアメリカから日本へ渡ってきます。
 当時の日本は今よりもはるかに閉鎖的な島国ですから,周囲からは「スパイじゃないか」と色眼鏡で見られたりする。天国(HEAVEN)だと思ってやってきた流れ者(Stranger)にとって,超過酷な場所だったわけです。

 そんな,どこにも居場所のない彼が,国籍や見た目,言葉の壁をすべて超えて,唯一対等に生きられる道がエンターテインメントビジネスだったと。

──実力で認めさせるしかなかった。

横山氏:
 そうです。音楽や歌というものは世界共通ですから,どんな偏見を持った人間でも,本当に素晴らしいパフォーマンスの前では素直に「良い」と言うしかない。それを体現するために,このショービジネスシステムがゲームの中心に据えられています。

 では,それをどうやって遊びに落とし込もうかと考えたときに生まれたのが,街の「音集め」です。大東には生まれつき,環境音をプロデュースの素材として記憶する異質な才能があって,その才能に気づかせてくれるのが,スヌープ・ドッグさん演じる密航船の師匠・オルフェウスだったりする。

 キャラクターの能力,ストーリーの動機,そしてシステムが数珠つなぎで出来上がっていったので,この作品のど真ん中にあるのは,間違いなくショービジネスですね。
 序盤こそ大東自身がステージで歌う場面もありますけど,基本的にはプロデュース側に回り,興行を打ってお金を稼いでいくことになります。裏を返せば,お金の力と成功による地位しか,身を守る術がない。それがないと,一瞬ですべてを失ってしまう。そんなハラハラするような過酷な環境を,ゲームを通して楽しんでほしいですね。

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──トレイラーからは華やかな印象も受けますが,実際には相当な浮き沈みがありそうですね。

横山氏:
 すごいですよ。今はまだ言えないことばかりですけど,本当に「生きてる方がしんどい」と思うような,波乱万丈な人生が待っています。僕はどうも,しんどい人間しか描けないみたいで(笑)。

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──先ほど街の音についてお話がありましたが,実際に街を歩いていると,ざわめきや下駄のカランコロンという音,扇風機の音など,環境音へのこだわりを強く感じました。

横山氏:
 音にはこだわっています。大東は街で耳にした生活音や環境音を集め,楽曲作りにつなげていくのですが,実はバトル中にも,敵が発する叫び声や奇妙な音を「これだ!」と収集できるんです。トレイラーにも,そのヒントとなるような絵が一瞬だけ入っています。

 アクションの最中にそれをするのは難しそうですよね。でも,メイウェザーが激しい試合中でも「客席の何列目に友達が座っているのが見えた」と言うように,戦い方がうまくなれば,周囲を見る余裕ができてくるんですよ。音を拾う余裕ができたということは,うまく戦えるようになってきている。そんな感覚があるんじゃないかなと。

 そうやって集めた音や環境音を人を介して曲へと変換し,歌手や演奏者を集めて公演をプロデュースする。その一連の流れが,本作におけるショービジネスの基本の部分になります。

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──トレイラーで公開されたテーマソングは,世界中で大きな反響を呼んでいます。「ショービジネス要素」を牽引する楽曲への期待も高まります。

横山氏:
 劇中で展開されるショービジネス部分の音楽は,全編を通して本当に半端じゃないですから,ぜひ期待していてください。

 ただ,このゲームはあくまでアクションアドベンチャーであって,音ゲーではないので(笑)。僕らから過剰に「曲が!」と言いすぎるつもりはないんです。それでも,大きな注目ポイントのひとつになるのは確かでしょう。

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キャスティングは「話題性よりも似合う」が優先


──今回は国内外,そして時代をもまたぐ,非常に豪華で異色のキャスト陣が話題となっています。キャスティングの経緯や狙いについて教えてください。

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横山氏:
 「話題のためだけにキャスティングしてるんじゃないですか?」と言われることはありますけど,まずそうじゃないです。
 そうじゃないですけど,結果としてそう聞かれるほど目立っているなら,戦略的にはうまくいっていることになるんだろうなあと(笑)。

──(笑)。

横山氏:
 キャスティングでまず大事なのは,画面に映ったときに「似合う」ことです。それを大きく学んだのは,「龍が如く0」を作ったときでした。
 堂島組三幹部を演じていただいた小沢仁志さん,竹内 力さん,中野英雄さんは,ドラマや映画が好きな人ならもちろん知っている。でも,ワールドワイドで誰もが知る存在というわけではないし,日本国内でも「JUDGE EYES」木村拓哉さんのような国民的スターとはまた違ったわけです。

 でも,画面に映ったときに,とにかく「似合う」んですよ。これが強かった。そして実際にゲームをプレイした世界中の人たちが,あの3人に熱狂した。このとき,キャスティングでは「似合う」ことの強さを,あらためて思い知りましたね。

──「似合う」と,それだけ説得力が違うと。

横山氏:
 そうなんです。たまには本音で喋りますけど(笑),ゲームクリエイターとしては,キャスティングばかりが騒がれるのはちょっと本意ではないんです。僕らが一番見てほしいのは,必死に作ったゲームシステムやストーリーですから。

 でも,作品全体を何倍にも引き上げてくれる役者さんの演技や存在感,質感はもちろんゲームの大事な要素で,それを「0」で教わりました。それもあってプロデューサーになってからは,話題性よりも「この役に似合うか」を一番の軸にキャスティングしてきました。

 最初からこの人でいきたいと思い,その人に合わせた当て書きに近い形でシナリオを書くこともあります。今回のメインキャスト陣も,物語を極限まで高めてくれる人たちを揃えました。

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──今回のストーリーにおいて,城田 優さん演じる主人公・大東 真のキャラクター像は,どのように構築していったのでしょうか。

横山氏:
 今回のストーリーを考えるなかで,僕らが今まで一度も挑んでこなかったのが,日本以外にもルーツを持つ主人公を描くことでした。大東は,出自や見た目,声も含めて,これまでのスタジオ作品にはなかった主人公です。

 実はこの作品のベースになるストーリー自体は,6〜7年前からずっと温めていたものなんですね。ただ,初期の段階では,主人公の出自についてはそこまで深く考えていませんでした。
 当時の時代を舞台に,虐げられた人間が事件に巻き込まれ,そこから這い上がって親分になっていく……というプロットをいくつか考えていたんですが,途中でどうしても行き詰まってしまって。

──行き詰まり,ですか?

横山氏:
 なんというか,「これ,普通のヤクザじゃん」って思っちゃったんですよ(笑)。
 大事な人を失った,親友を殺されたといった動機から始まる復讐劇は,過去の作品でやり尽くしている。その物語ではたして新しい感動や,大東がこの生き方を選ぶことへの強い説得力を持たせられるのかな,と悩んでいました。

 そうやって物語や主人公のイメージを考えていた4年ほど前,「もしかしたら主人公はミックスなのかもしれない」というアイデアがふと浮かんできたんです。
 日本以外にもルーツを持ち,見た目も周囲と異なる人間は,当時の閉鎖的な社会のなかで,どう見られ,どう扱われていたのか。それは主人公の人生を考えるうえで切り離せない背景になると思いました。
 ストレンジャーとして受ける苦しみは大きいし,それを乗り越えた先にあるドラマも絶対に深くなる。そこが見えたことで,大東という人物の輪郭が一気に固まっていきました。そう閃いてからは早かったですね。一気にキャラクター像が固まっていきました。

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──そこに,城田優さんの存在がはまったわけですね。

横山氏:
 大東 真という役は,求められる条件がめちゃくちゃ難しいんですよ。英語を自然に話せて,日本語もできて,プロデュースの核となる歌をしっかり歌える。さらに,50年にわたる人生の変化,年齢を重ねていく「老い」のグラデーションを,声と演技で表現できる力も必要です。そんな役者,日本中を探しても,本当に城田さんくらいしか思い浮かばなかった。
 それでオファーしたんですが,城田さんからは「横山さん,俺の経歴を知っててこの話を書いてますか?」と驚かれて(笑)。

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 オファーをする前にたまたま城田さんと話す機会があったんですけど,彼自身もスペインにルーツを持っていて,若いころには大東と通じる葛藤を抱えながら生きてきたという話を聞いたんですね。もちろん,大東ほど過酷な人生を送ってきたという話ではないですけど(笑)。
 だから,役を通じて重なる部分があったんでしょうね。「おお,バッチリじゃん!」ということで,そこから自然とパズルがはまるようにキャスティングが固まっていきました。

──海外からはスヌープ・ドッグさんの出演も発表され,ひっくり返るほど驚きました。

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横山氏:
 大東の才能を見出すオルフェウスには,海外にルーツを持ち,音楽やヒップホップのカルチャーを体現できる存在が必要でした。スヌープ・ドッグさん以上の適任なんて,この世にいないじゃないですか(笑)。
 たまたま別件で接点ができたので,「僕の作品にこういう役があるんですけど,興味ありますか?」とぶつけてみたら,興味を持ってくれて。僕は飛行機に乗れないので,阪本にアメリカへ飛んでもらい,やり取りを重ねて実現しました。

 これは真城 優役のディーン・フジオカさんに聞いた話なんですけど,企画書を最初にお見せしたとき,スヌープ・ドッグの名前があることでディーンさんサイドは「これは詐欺じゃないか」って疑ったらしいんですよ(笑)。

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──スヌープ・ドッグが出るなんて怪しい。セガの名を騙るニセの企画ではないかと(笑)。

横山氏:
 そうそう。映像の世界とかだとよくあるらしいですよね。まだ何も決まっていないのに「こういうキャストでやるつもりです」って,怪しいプロデューサーが嘘の書類を持ってくるっていう。
 それくらい,参加してくれた役者陣にとっても衝撃的なキャスティングだったみたいです。

──同じくらい驚いたのが,Summer Game Festで発表されたTupacの出演です。どの段階で決まったのでしょうか。

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横山氏:
 順番としてはまず主人公の城田さんとオルフェウスのスヌープが最初に決まって,そこからスヌープサイドと深くコミュニケーションを取っていったんです。
 そのやりとりのなかで「こういう役割のキャラクターがいる」ことを伝えたら,「それならTupacがいいんじゃないか」という話が出てきて。

 Summer Game Festのステージでもスヌープ本人が話していましたが,息子のコーデルさん(コーデル・ブローダス氏)が現在もTupacさん側と強い繋がりを持っていて,紹介してくれました。
 もちろん,一筋縄ではいきません。Tupacさんの権利を持つご遺族や複数の関係者から厳密な監修を受け,誰か一人の了承だけではなく,全員と丁寧に確認を重ねながら進めました。
 彼がどういう形で登場するのかは,ストーリーの核心に触れるのでまだ言えません。ただ,中盤以降の物語に,凄まじい説得力を与えてくれています。

──私自身もそうだったのですが,1990年代のヒップホップ・シーンや東西抗争を含む当時の出来事を知る人は,スヌープ・ドッグと“2Pac”の名が並ぶこと自体がまさに「嘘のような奇跡の共演」で驚きだったと思います。よく実現したなと。

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横山氏:
 そうなんですよ。Summer Game Fest現地の熱狂というかざわめきはすごくて,発表後しばらくは会場もざわざわとみんななにか話していましたね。

 うちの社長からも「このヒップホップカルチャーにおける歴史的衝撃を,日本のユーザーにもっと伝えてくれ!」ってすごく言われているんですけど……これがめちゃくちゃ難しいんですよ(笑)。
 ヒップホップのカルチャーやその背景にある歴史への理解は,日本とアメリカではやはりぜんぜん違うと思うんです。たとえばアメリカの人に,「尊王攘夷とは何か」「当時の日本で何が起きていたのか」を完全に伝えるくらい難しい。
 それでも,スヌープとTupacがこの形で並ぶことのすごさは,どうにか伝えたいんです。興味を持ってくれた人には,ぜひその背景も調べてもらえたらと思います。

──私の周りでも,ゲーム好き以上に音楽好きの知り合いから大きな反応がありました。

横山氏:
 そうそう。僕も姉から連絡があって。それで「今でも超聴いてるんだけど! なんで2PACじゃなくてTupacなの? クレジット間違えるなよ」って怒りのLINEがきて(笑)。
 なじみがあるのは数字の2Pacだけど,俳優活動のときは本名のTupac名義なんですよね。ビートたけしさんが映画監督や役者をやるときは北野 武名義にするような,っていう説明が分かりやすいかもしれない。

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「飛行機には絶対に乗らない」横山氏が,Summer Game Festのステージへ?


──Summer Game Festのステージに登壇し,オーディエンスの反応を肌で感じた感想を聞かせてください。

横山氏:
 ステージの上にいると,会場の歓声がすごすぎて,耳がガーッとやられるというか,壇上の音が何も聞こえなくなるんですよ(笑)。
 2Pacの姿が画面に映し出された瞬間から,地鳴りのようなざわめきがずーっと鳴り止まなくて。あまりの反応の強さに,僕はステージの上で思わず笑っちゃいました。
 MCのジェフ・キーリーも,次のセリフをしゃべり出せないくらい,会場全体の声にかき消されていましたね。

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──スヌープ・ドッグさんが登壇し,横山さんに深々とお辞儀をしてハグを交わしたシーンは,日本のファンにとっても印象深かったと思います。

横山氏:
 Summer Game Festって出展タイトルに関する情報を徹底的に規制しているから,リハーサルも全員バラバラ,楽屋も完全に別々なんですよ。
 前日のリハでドルビーシアターの廊下を歩いていたとき,カプコンの平林(良章)さんから「横山,お前アメリカ来てんの!?」って連絡がきたくらいで(笑)。お互いに,誰が出るのか本当に何も知らないんです。

 だから,スヌープが本当に会場に来ているのかどうか,実はすごくドキドキしていました。だって,「プリーズ・ウェルカム,スヌープ・ドッグ!」って呼び込んで,万が一にも現れなかったら大惨事じゃないですか(笑)。

──まさかそんなスリリングな気持ちを抱いていたなんて。意外すぎます(笑)。

横山氏:
 ステージが終わった後は,彼の楽屋に行って30分〜40分くらいめちゃくちゃいろいろな話をしましたね。
 あのとき僕がステージで着ていた衣装って,主人公の大東 真の刺青(タトゥー)柄が全面に入った,ヨウジヤマモトの「WILDSIDE」に作ってもらった衣装だったんです。
 それと同じものをスヌープへのお土産として持って行っていたんですよ。そしたら彼,めちゃくちゃ喜んで,その場で速攻で着替えてくれました(笑)。「先にくれたら,お揃いの服を着て2人で壇上に出られたのに!」って凄く悔しがってましたね。

 その後もずっとその刺青柄の衣装を着たまま,みんなでガッチリ肩を組んでホールまで見送ってくれて。それで盛り上がってたら,これから本番を控えて緊張している他社さんから「うるせえから向こう行ってくれ!」ってマジギレされましたけど(笑)。本当に最高の縁が結べたなと思っています。


※横山昌義氏のX(@yokoyama_masa)より

──普段は「飛行機には絶対に乗らない」と公言されている横山さんが,今回20年ぶりに渡米されたという事実自体が大きなニュースでもあると思います。

横山氏:
 いや,本当に命懸けでしたよ(笑)。飛行機はもちろんだけど,僕は英語が一切ダメだから。現地の滞在中はもちろん,空港での手続きやフライト中も,優秀なアシスタントにそれこそ24時間体制って感じでサポートしてもらいました。まさに「NARUTO」の「砂の我愛羅」状態ですよ(笑)。

 なんで僕がそこまでしてアメリカに行ったのかはいろいろな理由がありますが,僕とスヌープ・ドッグが揃わないと出演ステージそのものが成立しないだろうというのがありました。
 SGF主催からケツを叩かれ,スヌープの陣営からも叩かれ,最後はうちの社長からも叩かれ……ほんと四面楚歌で「もう行くしかない」という(笑)。

 ただ,各所には「一度解禁したからといって,今後も二度三度と海外出張があると思うなよ!」と全力で釘を刺して,文字通り決死の覚悟で飛び立ちました。周囲の多大なる協力を得たおかげで,なんとか実現した運びです。
 ……でも,やっぱり飛行機は二度と嫌なので,もう行きたくないです(笑)。


※横山昌義氏のX(@yokoyama_masa)より


「龍が如く」ファンにこそ,まず先に触れてほしい


──今後,一般のプレイヤーが実際に本作に触れられる試遊の機会などは予定されていますか。

横山氏:
 触れる機会はたくさん作ると思います。今日やSummer Game Festでメディアの皆さんに実際にプレイしてもらったのもそうだけど,実際に動かしてみないと言語化できない面白さが,かなり詰まっているゲームだと思っています。

 ちょっといつもと違うのが,現時点では海外からの反響が大きいことです。もちろん日本のゲームファンにも,もっと興味を持ってもらって,実際に触れてもらう機会をしっかり作っていきたいですね。

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──海外での盛り上がりとともに,日本のゲーマーにも届けていきたいと。

横山氏:
 そうですね。なにより,「龍が如く」シリーズを遊んでくれている人たちに触れてほしい。僕らはRGGスタジオの完全新作として作っていますけど,まず興味を持ってくれるのは,「龍が如く」を愛してくれているファンの方々だと思うんです。
 ただ事前知識なしで遊ぶと,これまでの感覚でコンボを決めようとしてもぜんぜんできない(笑)。だからこそ,自分で手に取る前に触れられる機会を少しでも多く設けて,「こういう格好よさで,こういう新しい楽しさなんだ」としっかりと丁寧に伝えたい。納得したうえで,この世界に入り込んでほしいと思っています。

 まだすべては言えませんが,それに合わせて,いろいろなイベントや国内向けの施策もたくさん計画しています。
 国内の大きな某ゲームイベントには出ます。……って,まだ言っちゃダメなはずですけど,でも去年のステージの最後に「また来年,ライブステージでお会いしましょう」ってはっきり伝えているし(笑)。その通りのことが起こるんじゃないかと思っていただいていいかなと。

──どのイベントかは読者の想像にお任せする形で,最後に発売を待つ日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

横山氏:
 今作の魅力やバトルの全貌がものすごくよく分かって,最高に楽しんでいただけるような,とんでもない計画をチームで練り上げている最中です。日本のファンの皆さんをアッと言わせる準備をしていますので,ぜひ今後の続報にご期待ください。

──本日はありがとうございました。

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