すでに4Gamerは,クランシー氏の基調講演の模様を掲載しているが,ラウンドテーブルでもクランシー氏を中心に,現在のTwitchにまつわるさまざまな話を聞くことができた。
「話の途中でもガンガン質問してくれ」という豪快な進行スタイルであったので,国内媒体からもさまざまな質問が飛び出した。
「Twitch」がもたらすのは“経験の共有”という魔法。CEOのダン・クランシー氏が語るコミュニティ,そして変わらない人間の欲求とは[TGS2026]
東京ゲームショウ2026初日となる2026年9月17日,「Twitch」CEOのダン・クランシー氏が,同プラットフォームに関する基調講演を行った。講演では「Twitch」のプラットフォームとしての立ち位置やゲーム業界での役割,テクノロジーが進化するなかでも変わらない人間の求めるものなどが語られた。
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ルイス・ミッチェル氏(以後,ミッチェル氏):
ルイス・ミッチェルです。昨年のTGS2025でお会いした方もおられますが,改めて自己紹介をさせていただくと,TwitchでAPACコンテンツディレクターを務めています。主にクリエイターの皆さんを支援し,関係をサポートしていくことが私とチームの役割です。
ダン・クランシー氏(以後,クランシー氏):
本日はお越しいただきありがとうございます。今日は主にルイスが進行し,私が回答していく形式となりますが,話の途中でも自由に質問してください。
ミッチェル氏:
臨機応変に対応していくのは,とてもTwitch的ですね。
では早速,質問に入っていきましょう。現在のTwitchを,Twitchたらしめるものはなんでしょうか。
クランシー氏:
今の世界におけるTwitchの独自性としては,クリエイターを中心とし,その周囲にコミュニティが形成されているのがひとつの特徴だと思います。
昨今のソーシャルメディアは,ソーシャルメディアという名こそあれど,交流は積極的に行われていないと感じています。どこかに座り,ただ画面をスワイプしていくだけでは,人と人とのつながりは発生しないのです。当然ですが,自分の居場所……帰属感とでもいえるでしょうか。それも得られないと思います。
一方,Twitchは,居場所という概念を念頭に置いて設計されています。まるで椅子を引いてゆっくり腰掛けるように,視聴側と配信側が流れる時間を共有する。そこからつながりが生まれてくるのです。
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――視聴側と配信側というお話がありましたが,これらの関係において日本特有のものを感じることはありますか。
クランシー氏:
国や言語によって差があるのかという質問はよく聞かれます。ただ,私自身が世界中を回って感じたのは,類似性のほうが相違性よりも多く見受けられるということです。
つながり,居場所といったものは,地域や言語に関係なく必要なものであり,ユニバーサルなニーズなのです。世界中にさまざまなコミュニティが存在しますが,ときに驚くほどの類似性を感じることもあります。
国別で見ると,もちろんストリーミングを行っている国の視聴者の割合は大きいですが,同時にTwitchは非常にグローバルなサイトでもあります。私自身も配信を行っていますが,その内訳を見ると,45%の視聴者はアメリカ国外からアクセスしてくれています。日本のストリーマーの皆さんも,内訳を見れば,海外からの視聴者が意外と多いことに気づくはずです。
――YouTubeやTikTokといったプラットフォームでもコミュニティを作っている方々がいます。Twitchがほかのプラットフォームと異なる点はどこでしょうか。
クランシー氏:
まずはTikTokを例にしましょう。何かを見ていてつまらないと感じた際には,スワイプすれば次の動画が出てきますよね。もちろんこれは意図的に設計されているからです。
YouTubeの場合,ライブ配信を見ていれば,画面の隅に「関連する動画」が出てくるはずです。目の前のライブ配信以外の情報が出てくるわけなので,どうしても視聴者の関心が固定されにくくなります。
Twitchの場合,ユーザーが今視聴しているコンテンツからほかのコンテンツへの離脱を促すような仕組みはありません。ですので,一緒に配信を見ている誰かの存在も認識できるようになるわけです。配信者,ほかの視聴者たちと時間を過ごすことによって,つながりができていくのです。
ミッチェル氏:
Twitchという事業を長く継続してきましたが,サービスのコアになるものはライブストリーミングですし,我々自身もそちらにフォーカスしてきました。なぜ,ライブストリーミングはTwitchにとって不可欠なものなのでしょうか。
クランシー氏:
ショートコンテンツが業界の大半を占めているからでしょうか。今でも勢いは増していますが,その一方,オーセンティックなつながりが求められているのも事実です。
多くのコンテンツがAIによって生産され,フィードがそれらに支配されていく。自身が目にしたものが本物なのか偽物なのかという疑問も多く浮かんでくる昨今だからこそ,誰かの人生に伴うような本物のつながりが求められているのです。
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――ストリーミングにAIが入ってくるということは,現状ではまだ起きていないんでしょうか。
クランシー氏:
AIを活用しているクリエイターもいます。ただそれも,AIという存在をどのように活用できるのかを探究した結果といえるでしょう。ひとつ例を挙げるならNeuro-samaと呼ばれるチャンネルですが,これは例外的な存在といえます。
TwitchのクリエイターにとってのAIは,クリエイティビティの可能性を拡大させるために用いられていることが多いです。
彼らのコンテンツ制作の多くは,彼ら自身のコミュニティと関わることに重点を置いているため,コンテンツ制作そのものがAIによって支配されていくことにはならないでしょう。
すべてをAIに丸投げするのではなく,コミュニティに対して自分自身がエンゲージメントすることを大事にすると思います。
――ショートコンテンツの流行は,ライブ配信を中心とするTwitchにとって,けっして無視できないものだとも感じます。
クランシー氏:
ショートコンテンツを否定しているのではありません。どちらも良い存在ですし,ショートコンテンツは新たな存在の発見,探索に最適です。時間は限られていますからね。
実際,我々にもクリップという機能がありますし,これに対して投資もしています。ストリーミングのなかで面白い瞬間があり,それらがクリップとして記録され,シェアされて広まっていくことも多くあります。
だからこそ,我々はこれらが相互に補完する姿を目指しています。ストリーミングが行われていない時間にショートコンテンツを活用できますし,コミュニティのメンバーも関わりを持てますから。
――もちろん,ストリーミングの品質向上に対してAIを活用するという考えは理解できます。しかし,収益だけを目的に,AIにすべてを丸投げしてストリーミングを行う……というような存在が,将来的に出現する可能性についてはどのように認識していますか。
クランシー氏:
例自体はあるかもしれませんが,Twitchにおいて,そうしたストリーミングが大規模に行われているのは見たことがありません。Twitch上のコンテンツの多くでは,クリエイターとコミュニティのつながりが重要視されるので,共に過ごす時間が鍵になると思っています。ここはほかのプラットフォームと差別化するポイントのひとつでもありますね。
ミッチェル氏:
ゲームから始まったTwitchですが,現在はその領域にとどまることなく拡大を続けています。CEOとしてコンテンツの広がりをどのように捉えていますか。
クランシー氏:
Justin.tvが始まった際には,そのビジョンは生活をそのままストリーミングし続けるライフキャストとも呼ぶべきものでした。その後,ゲーム分野の成長から現在のTwitchに至るわけですが,視聴者からコミュニティが作られてくると,ゲームだけにとどまらない分野が拡大していきます。
自分自身のやりたいことをストリーミングするという流れは,きわめて自然なものであり,さまざまな表現につながっているのだと思います。
――現在,日本のアニメやマンガといったコンテンツは世界中で人気で,キャラクターをデザインする際に日本のアニメチックな表現を取り入れるタイトルも数多くあります。このようなコンテンツの人気の高まりは感じているのでしょうか。
クランシー氏:
もちろんです。ほかの文化と同様に,アニメはTwitch内で大きな立ち位置を占めているでしょう。VTubing(VTuber)は日本から世界に発信されたコンテンツでもありますね。アニメやマンガの存在感が大きくなりつつあるのを感じています。
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ミッチェル氏:
なぜ,Twitchにとって日本市場は重要な存在なのでしょうか。
クランシー氏:
日本の文化が日本語話者や日本人クリエイターの枠を越えて,はるかに拡大し続けているからです。日本市場は大きく活気のある重要な市場のひとつであり,さまざまな側面から世界に対してインパクトを与え続けている存在なのです。
――日本のeスポーツ定着率はどう見ていますか。また,さらなる普及のためにTwitchが行えることはありますか。
クランシー氏:
eスポーツはTwitch内でも大きな要素であり文化です。長年にわたって大きく変化してきましたし,日本によって形作られてきた側面もあると考えています。
過去にはeスポーツに投資して独占権を獲得しようという人がたくさんいましたが,マーケットも変わり,資金を注ぎ込まなくてもよい,健全なマーケットになってきました。
eスポーツが多くの方にとって身近になり,裾野が広がってきたこともあって,ミラー配信(コストリーミング)の重要性も大きくなりました。ストリーマーがイベントを共有することで,視聴者にとってよりアクセスしやすい存在になったと思います。
パブリッシャにとって,eスポーツはマーケティングとしての側面を強く持っています。視聴から始まれば,いずれはゲームをプレイしたくなるものです。これがパブリッシャにとって最高のメリットですからね。
――日本のTwitchコミュニティの一部では,トップ層のストリーマーが人気を集めていて,ナンバー1のストリーマーが配信を終えると,ナンバー2のストリーマーの視聴者が極端に増えるような状況にあります。そのため,「今からTwitchで配信を始めても人気にはなれない」という認識がありますが,どう思われますか。
クランシー氏:
まず,我々はユーザーがTwitch内でどのような方向に行くのかに干渉しません。これらはアルゴリズムによって選定されるのではなく,多くの場合,自身が見たいストリーミングのページへ直接移動しているのです。ですので,場合によっては,あなたが説明してくれた状況そのものになることもあるでしょう。
しかし,長年の経験からいえば,今日のトップストリーマーの多くは最初から人気を誇っていたわけではありません。クリエイターはコミュニティを築くことができますし,異なる方法に適応し,ストリーミングし,また新たなコミュニティを構築していきます。常に変化しているのです。今のランキングが数年後にどうなっているかは,また異なる姿になっているのではないかと予想しています。
ミッチェル氏:
では,最後の質問です。日本を取り巻く市場が大変活気のあるものだという点はここまで話してきましたが,パブリッシャやブランドにとって,これはどのような意味を持つのでしょうか。
クランシー氏:
パブリッシャ,ブランド,それぞれ特性が異なります。パブリッシャの方々は,Twitchで何をすべきか,Twitchをどのように活用すべきかを非常によく知っています。一方,ブランドの方々は,コミュニティ内への浸透などを学んでいる段階という印象を受けています。
いずれにせよ,Twitchを活用することによって,より多くのユニークな層に働きかける方法を我々は知っています。そして,今日はラウンドテーブルにお越しいただきありがとうございます。とても感謝しています。
――ありがとうございました。
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